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22 死児の齢を数う
22-5 長久手
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一方、一益は羽柴秀長の軍勢とともに南下して安濃津の更に先にある、松ヶ島城を取り囲んだ。
伊勢湾に面した場所に立つ松ヶ島城は四年前に織田信雄が居城とするために建てた金箔の瓦が光る五層の天守をもつ城だ。
本能寺の変の一年前には、ここで信忠、信雄、信孝の三兄弟が仲良く能興行を行い、遊芸にうつつを抜かしていると信長から厳しい叱責を受けた。そして信忠は能道具の一式を信長に取り上げられてしまった。
(あの頃は、仲の良い兄弟だと思うていたが…)
兄弟の仲を取り持っていたのは、誰でもない、嫡子の信忠だったのだろう。昨年、信雄は信孝を死に追いやったが、三人仲良く南蛮寺を訪れたり、猿楽を楽しんだりと、行動を共にしていたときもあったのだ。
海の方を見ると、九鬼海賊の大船が城を囲むように並んで、時折大砲を放つ大きな音が聞こえてくる。大坂にいた三九郎も、大湊から大船に乗ってきている。
「留守部隊は士気が低い。このまま兵糧が尽きるのを待って、開城を促そう」
この先にはまだ信雄の重臣、木造具政が籠る戸木城がある。南伊勢での木造氏の影響力は強い。敵に回すとやっかいな相手だ。一益は木造具政には伊勢侵攻の折に案内役を頼むなど、過去世話になった経緯がある。今回もなんとか話を穏便に持っていけないものかと考えている。
(誰かを使者にたて、送ってみるか)
傍に控える津田小平次に声をかけた。
「小平次、義太夫を呼べ」
「義太夫殿はまだお戻りではありませぬ」
一益はおや、と首を傾げた。四日市にある楠城へ行った義太夫。あれから数日たっている。とうに戻っているものと思っていた。
「まだ戻らぬ…か」
「ああ見えて籍姫殿のことをいたく気にかけておられるご様子でしたので、もしや京の都にお連れしているのでは」
小平次が冗談めかして笑う。
それも無きにしも非ずで、義太夫ならばやりかねない。このまま伊勢に置いておくのは不安だろうし、案外、京見物のついでに玉姫の元に連れて行ったのかもしれない。
楠城に嫁に出してから、義太夫は四日市に行くたびに、人目を忍んで楠城にいる籍姫の様子を見に行っていた。余程、心配していたようだ。
(それがまさか敵味方に分かれることになるとは)
信長に強制されて嫁に出すときには思いもよらないことだった。これも戦国の世の習いではある。それが分かっていたから、義太夫は武家に嫁に出すのを嫌がったのだろう。
意外に子煩悩な義太夫の一面を見るにつけ、可哀相なことをしたなと心が痛んだ。
「致し方あるまい。では彦次郎を呼んでくれ」
「ハハッ」
義太夫のことも気になったが、美濃に向かった北勢の者たちの動向も気になる。
戦は目的ではなくあくまでも手段にすぎない。常に戦をどう終わらせるか、どこに落としどころをつけるかを考えて戦略を練らなけらばならない。
四方に敵を抱えている秀吉は長期戦となることは好まないだろうが、それは家康も同じだ。家康の領国である三河、遠江、駿河の一帯は昨年来凶作が続いているとの情報を得た。領民は疲弊している中で戦場に駆り出されているはず。このまま長引けば兵の離散を招く。
(ここは耐えて動かず、時を稼いでおれば、伊勢攻略が進み、織田領が削り取られていくだけ。伊勢の大半を失えば、中将殿は和睦を承諾せざるを得ない)
尾張で大きな戦さとなれば、皆、そこに巻き込まれてしまうかもしれない。しかし大きな戦さは双方にとって旨味がない。
(されど、それで済むとも思えぬ)
森長可の敗戦の一件が気になる。森長可も、舅の池田恒興も、このまま黙っているとは思えない。雪辱を晴らそうと焦り、しびれを切らして動き出してしまうかもしれない。
(そうなれば後には引けなくなる)
和睦は遠のき、戦は泥沼化する。
(思うていた以上に厄介な問題に首を突っ込んだのかもしれぬな)
先の見えない争いに巻き込まれているような気がした。
――風は、誰の旗の色にも染まらぬものだ。
尾張。四月七日は晴れだった。
空は、誰かの死を見送るように澄んでいた。
早朝、羽柴別部隊は総勢一万三千の兵を引き連れて三河岡崎城を目指した。
森長可は不退転の決意で具足の上から白装束を纏って出陣した。羽黒の件がある。同じ失敗を繰り返すことはできない。
進軍は順調で楽田を通り、物狂峠を越えて、さらに庄内川を渡って尾張を南下し、三河を目指す。
事が起こったのは九日早朝。白山林で陣払いの準備をしていた第四陣の長谷川藤五郎の耳に鬨の声が聞こえてきた。
「不味い、後方から敵襲ではないか」
慌てて帷幕を飛び出し、馬に乗った。
まもなく凄まじい人馬の音が轟いてきた。
「これは…大軍じゃ!」
千や二千の敵ではない。別部隊の動きを察知した徳川勢が本腰を挙げて追撃してきている。
急いで第四陣の大将である三好秀次に使いを送り、自らは槍を構えて敵を迎え撃とうとした。
「誰か、三好殿の元へ…」
言いかけて唖然とした。まだ戦闘が始まったばかりなのに、もう三好勢が崩れている。
白煙の向こうで、叫び声が風に切られていく。
誰の号令も届かぬまま、ただ人と馬の匂いだけが戦場を埋め尽くした。
「何故、かように早うに…」
一瞬、何が起きているのか状況がつかめなくなる。
「三好殿は早、退却されたよし」
耳を疑うような近侍の声がした。
「馬鹿な…。三好殿は総大将ではないか。戦わず退却するとは…」
指揮官のいなくなった三好勢は右往左往し、戦うことなく逃げまどっている。今回の別部隊の中でも三好秀次率いる第四陣は兵力九千で他の三隊と比べると大軍勢を連れている。ここで第四陣が陣形を立て直して踏みとどまらなければ、先を行く兵力の少ない池田隊や森隊までが総崩れとなってしまうかもしれないのだが。
(そんな大局を見て判断できるような器でもないか)
これでは愚将と言われた織田信雄よりも酷い。秀吉が本気で三好秀次に跡を継がせようと思っているのであれば、羽柴家も先が見えている。
「我らだけでは如何ともしがたい。堀久太郎に使いを出せ。三好勢は総崩れ。大将は早おちのびたと」
そう言うが早いか、長谷川藤五郎も退却を始める。こんなところでもたついていると、自分の身も危ない。
一方、少し離れたところにいた第三陣の堀久太郎も陣払いしようとしていたところで銃声を聞いた。
(徳川勢が追ってきたにしては、やけに静かな)
急に静まり返り、銃声も止んだ。
「早、味方は敗走したか…」
三好勢が敗走したのであれば、敵はこちらに向かってくる。
まもなく長谷川藤五郎の使いが現れた。
「三好勢は奇襲を受けて敗走。軍目付の木下助左衛門殿、木下勘解由殿はお討死でござりまする」
「軍目付が討死?して、総大将、三好孫七郎殿は?」
「早、落ち延びられたものかと」
討死した木下兄弟は秀吉の正室、お寧の叔父にあたる。秀次を逃がすために身代わりとなったのだろう。
「あれだけの軍勢を率いておりながら、早々に敗走したとは」
それでは勝てるものも勝てないなと久太郎は苦笑いする。徳川軍を迎え撃つため、来た道を引き返して三好勢の残党を纏めると、部隊を三分割して桧ケ根に陣をしいた。
敵が近づいたところで待機させていた鉄砲隊で一斉射撃を行った。
「よし、敵は浮足立っておるぞ!攻めかかれ!」
馬に乗り、自ら先陣きって、敵兵をなぎ倒していく。半刻ほどして敵が退却するところを更に追撃して五百人ほど討ち取った。
「思うたよりも手ごたえがない…今のは徳川本隊ではない」
「殿!敵を追いまするか!」
家臣の奥田直正がそう言うと、久太郎は首を横に振った。
「いや。今のは先鋒であろう。まもなく徳川の本隊が大軍を率いて追いすがってくるというに、味方の主力九千は退却している。我等はたかだか三千。早々に退却すべし」
三好勢を壊滅させた徳川勢の先鋒を打ち破った。これで十分、面目が立つと判断した久太郎は、退却命令を出す。
「では、森殿に使いを送ったほうがよいのでは?」
久太郎は首をひねり、少し考えてから、
「いや。知らせるな」
「はっ?しかし…」
森長可はこの戦では欲に釣られて羽柴秀吉に味方したが、臣従するつもりがあるとは思えない。この戦いで池田恒興とともに美濃、尾張、三河まで手に入れて強大な力を持ったのちは、いつ敵に回るとも分からない脅威になる。ここで家康と潰しあってくれるのであれば、願ったり叶ったりと言える。
「知らせずともよい。徳川方に我らの動きを悟られたことで、この作戦は失敗。勝敗はすでに喫しておる。それよりも三好勢は総崩れ。羽柴筑前の跡取りという総大将の三好殿を助け出さねば、後で咎められる。手分けして三好殿の行方を追うのじゃ」
久太郎は近臣の者たちに告げると、兵を纏めて退却をはじめた。
三河へ向けて進軍中の池田恒興・元助親子と長可たちは、途中にある岩崎城を攻め落としたところだった。
「我らにかかれば、このような小城、赤子の手をひねるようなものじゃ」
快進撃を続ける長可が自慢の槍を手にそう言うと、関武兵衛が
「まことにのう。おぉ、先ほど三好殿の兵が慌てふためいて池田殿のところへ走っていったぞ」
「三好殿?」
何があったのだろうか。無性に気になる。
自ら池田恒興のところに向かうと、恒興の顔色がすぐれない。
「義父上、如何なされた。城を落としたばかりというに、浮かない顔じゃ」
「かような小城にかまけている隙に徳川勢に気づかれた」
「な、なんと!」
「三好勢は総崩れじゃ。徳川本隊が、すぐそばに来ておる」
「三好勢は九千。早々、容易く打ち破られるとは思えませぬ」
愕然として前方を見る。確かに、はっきりと徳川の大軍が目に入った。反対側には織田信雄の軍勢が見える。
(敵に囲まれた…)
「三番隊は?堀久太郎の軍勢は如何なりました」
池田、森の部隊だけでは圧倒的に兵力が少ない。せめて堀久太郎の部隊がいればと思ったが、
「我らと合流するように使いを送ったが、断られた」
「断られた?」
頭の回転が早い久太郎は勝ち目がないと見込んで、さっさと退却したのだろう。
(このわしを置き捨て…逃げた)
裏切られた怒りが湧き上がる。信長亡きあとも勝ち馬に乗るように上手に乱世を渡って来た堀久太郎、長谷川藤五郎、そして蒲生忠三郎。
(あやつらがのうのうと生き残るというのか)
この世の不条理が口惜しい。
「ここを死地と定め、我らだけで戦うしかなかろう」
「義父上…」
すでに覚悟を決めた舅の言葉に、わなわなと震え、悔し涙が溢れてきた。
何がどうしてこうなったのか。あの軍議の時、忠三郎の言うことに耳を傾けていれば…。あの時、久太郎や藤五郎が参戦すると言わなければ…。あの時、秀吉がいいと言わなければ…。
(いいや、そうではない…)
すべてはあの敗戦からだった。あの羽黒の敗戦がなければ、こうはならなかった筈だ。
「わしのせいで…義父上まで死なせることに…お許しくだされ…」
「何を申すか。わしはよい婿をもらった。そなたにも、右大臣様にも感謝しておる」
舅の言葉に長可はむせび泣いた。
こちらを向いて陣をかまえた徳川勢に対して、右に池田元助、左に森長可が陣を構えた。
山間に法螺貝が響き渡る。鬨の声があがり、一斉に兵が走り出し、両軍が激突した。長可は自慢の槍、人間無骨を振り回し、敵をなぎ倒して突き進む。
「鬼武蔵!さすがじゃのう!」
関武兵衛が同じく敵を倒しながらそう言う。
「おぉ、武兵衛!ここが我らの終焉の地じゃ!思う存分、暴れてやろうぞ!」
次々に敵を倒して進んでいく。
「あれは鬼武蔵じゃ!」
「鬼武蔵がきたぞ!」
恐れて逃げ惑う敵を後ろから倒していく。だが敵が一向に減らないままに時が経過する。
疲れがでれば、兵力で大きく劣る味方が崩される。長可は意を決して徳川本陣に斬りこみをかけることにした。
「貝を吹け!本陣に斬りこみ、大将首をあげるのじゃ!みな、我に続け!」
徳川本陣目掛けて馬を走らせた。
そのとき、長可めがけて徳川の鉄砲隊が一斉に火を噴いた。銃声が響いた瞬間、長可の瞳に一瞬、燃えるものが宿った。
火は風に吹かれ、空へ還った。銃弾の一発が、長可の眉間を撃ち抜いた。長可はそのまま馬から転げ落ちた。
「鬼武蔵!」
関武兵衛が走り寄ると、馬の上からでも長可が即死しているのがわかった。
「おのれ!」
関武兵衛は槍をかまえ、徳川家康がいると思われる本陣目がけて突進した。
森長可が討死したことで、森勢は総崩れになり、池田恒興、池田元助も討ちとられ、池田勢は壊滅した。
長久手の銃声が止んだのは正午を過ぎたころだった。
戦は終わった。
だが理を失った戦は、灰だけを残した。
楽田城の秀吉本陣に、別部隊敗走の知らせが届いたのはそのすぐ後。三万の軍勢を率いて駆け付けたときには三好秀次が陣を構えていた白山林は無数の躯が見えるのみ、すでに徳川勢の姿はなかった。
風が吹いた。倒れた旗の布が、乾いた音を立てた。
翌日、秀吉は再び楽田へと戻り、再度、軍議が開かれた。忠三郎が楽田城へと赴くと、あちらこちらで白山林や長久手から逃れてきた者や、話を見聞きした者が話をしている姿が目に付いた。
漏れ聞こえてくる話を聞く限り、池田恒興、元助親子と森長可討死の話は本当らしい。
(大変なことになった)
秀吉はもう退くわけにはいかなくなった。なんとしても家康をあの小牧山から引きずり出し、決戦を挑まなければ今後、天下統一を推し進めることなどできないと考えているだろう。
忠三郎は又、柱にもたれかかる。こうしていても、もう、いきなり目の前に現れて怒り始める長可は現れない。
(武蔵守は長久手で討死した)
徳川の鉄砲隊も、葉武者のように飛び出してきたのがまさか森長可とは思わなかったらしい。長可は落馬したのち、首をとられることもなく、森家の家人が長可の首をかかえて帰って来たという噂だ。
しかし、長可が死んでも別部隊が三河目指して進軍する前に戻っただけで、戦さは続いている。
(これでは犬死だ)
だが、それでもなお、誰かが止めねばならぬ戦もある。
(武蔵守、おぬしはそれを信じたのか)
討死したのが忠三郎でも、堀久太郎でも、同じだろう。
(武蔵守、おぬしはそれでも満足なのか)
何も成さずに死んでいった。それでもよかったのだろうか。もっと生きて、やりたかったことがあったのではないだろうか。
「蒲生様、皆様、すでにお揃いのようで…」
小姓が呼びに来た。いつの間にか、周りには誰もいない。皆、広間に集まっているようだ。
「気づかなんだ。すぐに参る」
また最後になってしまったな、と忠三郎が苦笑して立ち上がった。
「徳川勢を打ち破り、我が甥、孫七まで助けて下されるとは、さすがは久太郎殿じゃ」
広間に入ると、秀吉が手放しで久太郎を褒め、何度も頭を下げている。忠三郎はその姿を複雑な思いで見つめた。
(久太郎も、藤五郎も、武蔵守を見捨て、引き上げたというが…)
秀吉にとっては譜代の臣でもない二人を咎めることはできないだろう。
「池田、森を失っては、徳川勢との決戦もままならぬものかと…」
この敗戦の痛手は羽黒の比ではない。東美濃では森長可の死を知り、早くも徳川家康の命を受けた国人衆が動き出しているという話だ。
「いたしかたない。南伊勢から小一郎を呼び寄せよう」
南伊勢で一益とともに松ヶ島城を攻略している羽柴秀長、筒井順慶の隊を呼び寄せることになった。
(戦はまだ終わらぬ。人は、誰かの死で学ぶことをせぬ)
ちょうどその頃、伊勢では風もなく、海が白く光っていた。
松ヶ島城が開城し、寄せ手の将たちは城に入ったところだった。
「長久手で大敗したとかで、筒井殿とともに美濃に行くようにとの知らせが参りました」
羽柴秀長がそう告げると、筒井順慶が生気のない顔で頷く。
「されど…筒井殿は大事ないのか」
一益が声をかけると、筒井順慶は力なく頷く。
「お召しとあらば、行かねばなりますまいて」
ひどい顔色をしていた。かつては光秀と親しく、変後は叱責を受けたと聞く。
それ以来、胃を病み、今も痛みに耐えているらしい。
「我らは伊勢を離れまする。滝川殿には四日市にある浜田城を牽制していただきたい」
「心得た。伊勢のことはお任せあれ」
楠城に行った義太夫がまだ戻らない。城は焼け落ちたという話だったので、いつまでもそのあたりにいるとは思えなかったが、足取りがつかめていない。津田小平次の言うように、本当に籍姫を連れて京の都へ行ったと考えられなくもないが、浜田城であれば楠城からそう遠くない。義太夫の行方を捜すことができる。
一益は兵を纏めると伊勢街道を北上し、浜田城へと向かった。
春の空には、まだ煙のにおいが残っていた。
四日市にある浜田城は北勢四十八家のひとつ、田原氏の居城で、北伊勢侵攻の折にも一度、攻略している。その後、修繕して家臣を城代として置いていたが、北伊勢を明け渡したときに、織田信雄の家臣、滝川三郎兵衛雄利が入った。
一益が浜田城の前に陣を構えると、案の定、三郎兵衛が使者を送って来た。
「落としどころを探したいとの申し出でござりまする」
つまりは、休戦を模索したいから攻め込まないでくれと言っている。
(三郎兵衛らしい物言いじゃ)
羽黒に続き、長久手での敗北がある。秀吉に和睦の意思がないことを、三郎兵衛も承知していよう。それでも敢えて使者を送ってくるのは、ここで争っても無益と悟っているからだ。
「遅かれ早かれ城から退去してもらうことになるが、当面はこのままでよいと伝えよ」
一益は使者を帰すと、甲冑を脱いだ。
「殿、いずこへ参られるので?」
ここからは日永が近い。新介の墓参りを済ませておこうと考えていた。
「しばし、ここから動くこともなかろう。皆、少し休んでおけ」
津田小平次に伝えて身支度を整えると、わずかな供を連れ、帷幕を後にして日永へ向かった。
帰陣したのは翌朝だった。
何も語らなかったが、その顔に、ひとつの戦が終わったような影があった。
伊勢湾に面した場所に立つ松ヶ島城は四年前に織田信雄が居城とするために建てた金箔の瓦が光る五層の天守をもつ城だ。
本能寺の変の一年前には、ここで信忠、信雄、信孝の三兄弟が仲良く能興行を行い、遊芸にうつつを抜かしていると信長から厳しい叱責を受けた。そして信忠は能道具の一式を信長に取り上げられてしまった。
(あの頃は、仲の良い兄弟だと思うていたが…)
兄弟の仲を取り持っていたのは、誰でもない、嫡子の信忠だったのだろう。昨年、信雄は信孝を死に追いやったが、三人仲良く南蛮寺を訪れたり、猿楽を楽しんだりと、行動を共にしていたときもあったのだ。
海の方を見ると、九鬼海賊の大船が城を囲むように並んで、時折大砲を放つ大きな音が聞こえてくる。大坂にいた三九郎も、大湊から大船に乗ってきている。
「留守部隊は士気が低い。このまま兵糧が尽きるのを待って、開城を促そう」
この先にはまだ信雄の重臣、木造具政が籠る戸木城がある。南伊勢での木造氏の影響力は強い。敵に回すとやっかいな相手だ。一益は木造具政には伊勢侵攻の折に案内役を頼むなど、過去世話になった経緯がある。今回もなんとか話を穏便に持っていけないものかと考えている。
(誰かを使者にたて、送ってみるか)
傍に控える津田小平次に声をかけた。
「小平次、義太夫を呼べ」
「義太夫殿はまだお戻りではありませぬ」
一益はおや、と首を傾げた。四日市にある楠城へ行った義太夫。あれから数日たっている。とうに戻っているものと思っていた。
「まだ戻らぬ…か」
「ああ見えて籍姫殿のことをいたく気にかけておられるご様子でしたので、もしや京の都にお連れしているのでは」
小平次が冗談めかして笑う。
それも無きにしも非ずで、義太夫ならばやりかねない。このまま伊勢に置いておくのは不安だろうし、案外、京見物のついでに玉姫の元に連れて行ったのかもしれない。
楠城に嫁に出してから、義太夫は四日市に行くたびに、人目を忍んで楠城にいる籍姫の様子を見に行っていた。余程、心配していたようだ。
(それがまさか敵味方に分かれることになるとは)
信長に強制されて嫁に出すときには思いもよらないことだった。これも戦国の世の習いではある。それが分かっていたから、義太夫は武家に嫁に出すのを嫌がったのだろう。
意外に子煩悩な義太夫の一面を見るにつけ、可哀相なことをしたなと心が痛んだ。
「致し方あるまい。では彦次郎を呼んでくれ」
「ハハッ」
義太夫のことも気になったが、美濃に向かった北勢の者たちの動向も気になる。
戦は目的ではなくあくまでも手段にすぎない。常に戦をどう終わらせるか、どこに落としどころをつけるかを考えて戦略を練らなけらばならない。
四方に敵を抱えている秀吉は長期戦となることは好まないだろうが、それは家康も同じだ。家康の領国である三河、遠江、駿河の一帯は昨年来凶作が続いているとの情報を得た。領民は疲弊している中で戦場に駆り出されているはず。このまま長引けば兵の離散を招く。
(ここは耐えて動かず、時を稼いでおれば、伊勢攻略が進み、織田領が削り取られていくだけ。伊勢の大半を失えば、中将殿は和睦を承諾せざるを得ない)
尾張で大きな戦さとなれば、皆、そこに巻き込まれてしまうかもしれない。しかし大きな戦さは双方にとって旨味がない。
(されど、それで済むとも思えぬ)
森長可の敗戦の一件が気になる。森長可も、舅の池田恒興も、このまま黙っているとは思えない。雪辱を晴らそうと焦り、しびれを切らして動き出してしまうかもしれない。
(そうなれば後には引けなくなる)
和睦は遠のき、戦は泥沼化する。
(思うていた以上に厄介な問題に首を突っ込んだのかもしれぬな)
先の見えない争いに巻き込まれているような気がした。
――風は、誰の旗の色にも染まらぬものだ。
尾張。四月七日は晴れだった。
空は、誰かの死を見送るように澄んでいた。
早朝、羽柴別部隊は総勢一万三千の兵を引き連れて三河岡崎城を目指した。
森長可は不退転の決意で具足の上から白装束を纏って出陣した。羽黒の件がある。同じ失敗を繰り返すことはできない。
進軍は順調で楽田を通り、物狂峠を越えて、さらに庄内川を渡って尾張を南下し、三河を目指す。
事が起こったのは九日早朝。白山林で陣払いの準備をしていた第四陣の長谷川藤五郎の耳に鬨の声が聞こえてきた。
「不味い、後方から敵襲ではないか」
慌てて帷幕を飛び出し、馬に乗った。
まもなく凄まじい人馬の音が轟いてきた。
「これは…大軍じゃ!」
千や二千の敵ではない。別部隊の動きを察知した徳川勢が本腰を挙げて追撃してきている。
急いで第四陣の大将である三好秀次に使いを送り、自らは槍を構えて敵を迎え撃とうとした。
「誰か、三好殿の元へ…」
言いかけて唖然とした。まだ戦闘が始まったばかりなのに、もう三好勢が崩れている。
白煙の向こうで、叫び声が風に切られていく。
誰の号令も届かぬまま、ただ人と馬の匂いだけが戦場を埋め尽くした。
「何故、かように早うに…」
一瞬、何が起きているのか状況がつかめなくなる。
「三好殿は早、退却されたよし」
耳を疑うような近侍の声がした。
「馬鹿な…。三好殿は総大将ではないか。戦わず退却するとは…」
指揮官のいなくなった三好勢は右往左往し、戦うことなく逃げまどっている。今回の別部隊の中でも三好秀次率いる第四陣は兵力九千で他の三隊と比べると大軍勢を連れている。ここで第四陣が陣形を立て直して踏みとどまらなければ、先を行く兵力の少ない池田隊や森隊までが総崩れとなってしまうかもしれないのだが。
(そんな大局を見て判断できるような器でもないか)
これでは愚将と言われた織田信雄よりも酷い。秀吉が本気で三好秀次に跡を継がせようと思っているのであれば、羽柴家も先が見えている。
「我らだけでは如何ともしがたい。堀久太郎に使いを出せ。三好勢は総崩れ。大将は早おちのびたと」
そう言うが早いか、長谷川藤五郎も退却を始める。こんなところでもたついていると、自分の身も危ない。
一方、少し離れたところにいた第三陣の堀久太郎も陣払いしようとしていたところで銃声を聞いた。
(徳川勢が追ってきたにしては、やけに静かな)
急に静まり返り、銃声も止んだ。
「早、味方は敗走したか…」
三好勢が敗走したのであれば、敵はこちらに向かってくる。
まもなく長谷川藤五郎の使いが現れた。
「三好勢は奇襲を受けて敗走。軍目付の木下助左衛門殿、木下勘解由殿はお討死でござりまする」
「軍目付が討死?して、総大将、三好孫七郎殿は?」
「早、落ち延びられたものかと」
討死した木下兄弟は秀吉の正室、お寧の叔父にあたる。秀次を逃がすために身代わりとなったのだろう。
「あれだけの軍勢を率いておりながら、早々に敗走したとは」
それでは勝てるものも勝てないなと久太郎は苦笑いする。徳川軍を迎え撃つため、来た道を引き返して三好勢の残党を纏めると、部隊を三分割して桧ケ根に陣をしいた。
敵が近づいたところで待機させていた鉄砲隊で一斉射撃を行った。
「よし、敵は浮足立っておるぞ!攻めかかれ!」
馬に乗り、自ら先陣きって、敵兵をなぎ倒していく。半刻ほどして敵が退却するところを更に追撃して五百人ほど討ち取った。
「思うたよりも手ごたえがない…今のは徳川本隊ではない」
「殿!敵を追いまするか!」
家臣の奥田直正がそう言うと、久太郎は首を横に振った。
「いや。今のは先鋒であろう。まもなく徳川の本隊が大軍を率いて追いすがってくるというに、味方の主力九千は退却している。我等はたかだか三千。早々に退却すべし」
三好勢を壊滅させた徳川勢の先鋒を打ち破った。これで十分、面目が立つと判断した久太郎は、退却命令を出す。
「では、森殿に使いを送ったほうがよいのでは?」
久太郎は首をひねり、少し考えてから、
「いや。知らせるな」
「はっ?しかし…」
森長可はこの戦では欲に釣られて羽柴秀吉に味方したが、臣従するつもりがあるとは思えない。この戦いで池田恒興とともに美濃、尾張、三河まで手に入れて強大な力を持ったのちは、いつ敵に回るとも分からない脅威になる。ここで家康と潰しあってくれるのであれば、願ったり叶ったりと言える。
「知らせずともよい。徳川方に我らの動きを悟られたことで、この作戦は失敗。勝敗はすでに喫しておる。それよりも三好勢は総崩れ。羽柴筑前の跡取りという総大将の三好殿を助け出さねば、後で咎められる。手分けして三好殿の行方を追うのじゃ」
久太郎は近臣の者たちに告げると、兵を纏めて退却をはじめた。
三河へ向けて進軍中の池田恒興・元助親子と長可たちは、途中にある岩崎城を攻め落としたところだった。
「我らにかかれば、このような小城、赤子の手をひねるようなものじゃ」
快進撃を続ける長可が自慢の槍を手にそう言うと、関武兵衛が
「まことにのう。おぉ、先ほど三好殿の兵が慌てふためいて池田殿のところへ走っていったぞ」
「三好殿?」
何があったのだろうか。無性に気になる。
自ら池田恒興のところに向かうと、恒興の顔色がすぐれない。
「義父上、如何なされた。城を落としたばかりというに、浮かない顔じゃ」
「かような小城にかまけている隙に徳川勢に気づかれた」
「な、なんと!」
「三好勢は総崩れじゃ。徳川本隊が、すぐそばに来ておる」
「三好勢は九千。早々、容易く打ち破られるとは思えませぬ」
愕然として前方を見る。確かに、はっきりと徳川の大軍が目に入った。反対側には織田信雄の軍勢が見える。
(敵に囲まれた…)
「三番隊は?堀久太郎の軍勢は如何なりました」
池田、森の部隊だけでは圧倒的に兵力が少ない。せめて堀久太郎の部隊がいればと思ったが、
「我らと合流するように使いを送ったが、断られた」
「断られた?」
頭の回転が早い久太郎は勝ち目がないと見込んで、さっさと退却したのだろう。
(このわしを置き捨て…逃げた)
裏切られた怒りが湧き上がる。信長亡きあとも勝ち馬に乗るように上手に乱世を渡って来た堀久太郎、長谷川藤五郎、そして蒲生忠三郎。
(あやつらがのうのうと生き残るというのか)
この世の不条理が口惜しい。
「ここを死地と定め、我らだけで戦うしかなかろう」
「義父上…」
すでに覚悟を決めた舅の言葉に、わなわなと震え、悔し涙が溢れてきた。
何がどうしてこうなったのか。あの軍議の時、忠三郎の言うことに耳を傾けていれば…。あの時、久太郎や藤五郎が参戦すると言わなければ…。あの時、秀吉がいいと言わなければ…。
(いいや、そうではない…)
すべてはあの敗戦からだった。あの羽黒の敗戦がなければ、こうはならなかった筈だ。
「わしのせいで…義父上まで死なせることに…お許しくだされ…」
「何を申すか。わしはよい婿をもらった。そなたにも、右大臣様にも感謝しておる」
舅の言葉に長可はむせび泣いた。
こちらを向いて陣をかまえた徳川勢に対して、右に池田元助、左に森長可が陣を構えた。
山間に法螺貝が響き渡る。鬨の声があがり、一斉に兵が走り出し、両軍が激突した。長可は自慢の槍、人間無骨を振り回し、敵をなぎ倒して突き進む。
「鬼武蔵!さすがじゃのう!」
関武兵衛が同じく敵を倒しながらそう言う。
「おぉ、武兵衛!ここが我らの終焉の地じゃ!思う存分、暴れてやろうぞ!」
次々に敵を倒して進んでいく。
「あれは鬼武蔵じゃ!」
「鬼武蔵がきたぞ!」
恐れて逃げ惑う敵を後ろから倒していく。だが敵が一向に減らないままに時が経過する。
疲れがでれば、兵力で大きく劣る味方が崩される。長可は意を決して徳川本陣に斬りこみをかけることにした。
「貝を吹け!本陣に斬りこみ、大将首をあげるのじゃ!みな、我に続け!」
徳川本陣目掛けて馬を走らせた。
そのとき、長可めがけて徳川の鉄砲隊が一斉に火を噴いた。銃声が響いた瞬間、長可の瞳に一瞬、燃えるものが宿った。
火は風に吹かれ、空へ還った。銃弾の一発が、長可の眉間を撃ち抜いた。長可はそのまま馬から転げ落ちた。
「鬼武蔵!」
関武兵衛が走り寄ると、馬の上からでも長可が即死しているのがわかった。
「おのれ!」
関武兵衛は槍をかまえ、徳川家康がいると思われる本陣目がけて突進した。
森長可が討死したことで、森勢は総崩れになり、池田恒興、池田元助も討ちとられ、池田勢は壊滅した。
長久手の銃声が止んだのは正午を過ぎたころだった。
戦は終わった。
だが理を失った戦は、灰だけを残した。
楽田城の秀吉本陣に、別部隊敗走の知らせが届いたのはそのすぐ後。三万の軍勢を率いて駆け付けたときには三好秀次が陣を構えていた白山林は無数の躯が見えるのみ、すでに徳川勢の姿はなかった。
風が吹いた。倒れた旗の布が、乾いた音を立てた。
翌日、秀吉は再び楽田へと戻り、再度、軍議が開かれた。忠三郎が楽田城へと赴くと、あちらこちらで白山林や長久手から逃れてきた者や、話を見聞きした者が話をしている姿が目に付いた。
漏れ聞こえてくる話を聞く限り、池田恒興、元助親子と森長可討死の話は本当らしい。
(大変なことになった)
秀吉はもう退くわけにはいかなくなった。なんとしても家康をあの小牧山から引きずり出し、決戦を挑まなければ今後、天下統一を推し進めることなどできないと考えているだろう。
忠三郎は又、柱にもたれかかる。こうしていても、もう、いきなり目の前に現れて怒り始める長可は現れない。
(武蔵守は長久手で討死した)
徳川の鉄砲隊も、葉武者のように飛び出してきたのがまさか森長可とは思わなかったらしい。長可は落馬したのち、首をとられることもなく、森家の家人が長可の首をかかえて帰って来たという噂だ。
しかし、長可が死んでも別部隊が三河目指して進軍する前に戻っただけで、戦さは続いている。
(これでは犬死だ)
だが、それでもなお、誰かが止めねばならぬ戦もある。
(武蔵守、おぬしはそれを信じたのか)
討死したのが忠三郎でも、堀久太郎でも、同じだろう。
(武蔵守、おぬしはそれでも満足なのか)
何も成さずに死んでいった。それでもよかったのだろうか。もっと生きて、やりたかったことがあったのではないだろうか。
「蒲生様、皆様、すでにお揃いのようで…」
小姓が呼びに来た。いつの間にか、周りには誰もいない。皆、広間に集まっているようだ。
「気づかなんだ。すぐに参る」
また最後になってしまったな、と忠三郎が苦笑して立ち上がった。
「徳川勢を打ち破り、我が甥、孫七まで助けて下されるとは、さすがは久太郎殿じゃ」
広間に入ると、秀吉が手放しで久太郎を褒め、何度も頭を下げている。忠三郎はその姿を複雑な思いで見つめた。
(久太郎も、藤五郎も、武蔵守を見捨て、引き上げたというが…)
秀吉にとっては譜代の臣でもない二人を咎めることはできないだろう。
「池田、森を失っては、徳川勢との決戦もままならぬものかと…」
この敗戦の痛手は羽黒の比ではない。東美濃では森長可の死を知り、早くも徳川家康の命を受けた国人衆が動き出しているという話だ。
「いたしかたない。南伊勢から小一郎を呼び寄せよう」
南伊勢で一益とともに松ヶ島城を攻略している羽柴秀長、筒井順慶の隊を呼び寄せることになった。
(戦はまだ終わらぬ。人は、誰かの死で学ぶことをせぬ)
ちょうどその頃、伊勢では風もなく、海が白く光っていた。
松ヶ島城が開城し、寄せ手の将たちは城に入ったところだった。
「長久手で大敗したとかで、筒井殿とともに美濃に行くようにとの知らせが参りました」
羽柴秀長がそう告げると、筒井順慶が生気のない顔で頷く。
「されど…筒井殿は大事ないのか」
一益が声をかけると、筒井順慶は力なく頷く。
「お召しとあらば、行かねばなりますまいて」
ひどい顔色をしていた。かつては光秀と親しく、変後は叱責を受けたと聞く。
それ以来、胃を病み、今も痛みに耐えているらしい。
「我らは伊勢を離れまする。滝川殿には四日市にある浜田城を牽制していただきたい」
「心得た。伊勢のことはお任せあれ」
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一益は兵を纏めると伊勢街道を北上し、浜田城へと向かった。
春の空には、まだ煙のにおいが残っていた。
四日市にある浜田城は北勢四十八家のひとつ、田原氏の居城で、北伊勢侵攻の折にも一度、攻略している。その後、修繕して家臣を城代として置いていたが、北伊勢を明け渡したときに、織田信雄の家臣、滝川三郎兵衛雄利が入った。
一益が浜田城の前に陣を構えると、案の定、三郎兵衛が使者を送って来た。
「落としどころを探したいとの申し出でござりまする」
つまりは、休戦を模索したいから攻め込まないでくれと言っている。
(三郎兵衛らしい物言いじゃ)
羽黒に続き、長久手での敗北がある。秀吉に和睦の意思がないことを、三郎兵衛も承知していよう。それでも敢えて使者を送ってくるのは、ここで争っても無益と悟っているからだ。
「遅かれ早かれ城から退去してもらうことになるが、当面はこのままでよいと伝えよ」
一益は使者を帰すと、甲冑を脱いだ。
「殿、いずこへ参られるので?」
ここからは日永が近い。新介の墓参りを済ませておこうと考えていた。
「しばし、ここから動くこともなかろう。皆、少し休んでおけ」
津田小平次に伝えて身支度を整えると、わずかな供を連れ、帷幕を後にして日永へ向かった。
帰陣したのは翌朝だった。
何も語らなかったが、その顔に、ひとつの戦が終わったような影があった。
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