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4.一人称について
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「少数派が一人称で悩むのは、もしかしたら日本だけなのかな」
「そっか、英語だと確かに一つしかないね。他にも一人称が複数ある言語は数えるほどしかないらしいし」
「全く、俺が今までどれほど悩まされてきたことか。俺って人前で言うようになったのも最近になってからだよ」
「私と話す時ってことか。他のクラスメイトには『私』って言ってるの聞いたことあるし、私にも初期はそうだったよね」
「しっかり使い分けてるつもりだよ、時々こんがらがるけど。
で、昔の俺はなんとなく『私』を使うのが嫌だったんだ。だってそれは一般的な女性が多く使ってる言い方で、俺がそれと同じだと認識されるのがたまらなく不快だった。でも、大人の男性でもフォーマルな場では『私』と言うだろ?それを必死に言い聞かせて、今まで俺は『私』と使ってきた」
「そんなに気にすることないと思うけどなあ、私は『私』って昔から言ってるし。
あー、そういえばからかわれたことがあったなあ。『なんで男なのに』とか、
『女々しい』とか」
「やっぱりお前もか。
...中学生の頃に、女子だと思ってた子がいきなり『ぼく』と自称し始めたことがあった。もしかしたら性自認について悩みがあったのかもしれないけど、俺が見る限り趣味は女子の好むものそのものだったし、オタクだった。なんだか決めつけるような言い方だけど、中二病全開の時代だったから、いわゆる“僕っ娘”だったと思うんだよ。周りの反応は冷たいもので、そいつを“イタい奴”として扱い始めた。俺はそれを遠巻きに眺めていた。今でこそ多様性に寛容であることを俺は心掛けているけど、当時の俺はその多数派と同じだった。その出来事以来、俺は、『私』を徹底して使ってきたわけだ」
「そうだねえ、私が私の出来事を忘れていたのは思い出したくなかったからかもね。あれはイヤだったなあ。人が自分のことを何と言ってもいいだろうに。何で冷たくされるんだろう」
「『俺』ってカッコつけてる言い方だろ?『男になりたいのか?』と思われそうで、使えなかった。
まさか『はい、そうです』なんて口が裂けても言えないし」
「子どもって残酷だよねえ、今だったらみんなもう少し広い心で受け止めてくれる気がするよ。私の存在だって昔より周囲に馴染んでる気がするし。小鳥遊くんは私の前以外でありのままで話す気はないの?」
「ない。裏で何言われてるかわかったもんじゃないしな。言いたい奴には言わせておけとは思うけど、多分俺はそこまで強い奴じゃない。学校という公共の場で自分を出してくつもりはないよ、親しい友人の前だけでいい」
「そう。無理には勧めないけど、いつか、優しい世界になればいいね。なんのリスクも考えずに自分をさらけ出せるような、みんな違ってみんないいを実践できるような世界」
「それが理想だな。現状からは程遠いけど。悲しいね」
「そっか、英語だと確かに一つしかないね。他にも一人称が複数ある言語は数えるほどしかないらしいし」
「全く、俺が今までどれほど悩まされてきたことか。俺って人前で言うようになったのも最近になってからだよ」
「私と話す時ってことか。他のクラスメイトには『私』って言ってるの聞いたことあるし、私にも初期はそうだったよね」
「しっかり使い分けてるつもりだよ、時々こんがらがるけど。
で、昔の俺はなんとなく『私』を使うのが嫌だったんだ。だってそれは一般的な女性が多く使ってる言い方で、俺がそれと同じだと認識されるのがたまらなく不快だった。でも、大人の男性でもフォーマルな場では『私』と言うだろ?それを必死に言い聞かせて、今まで俺は『私』と使ってきた」
「そんなに気にすることないと思うけどなあ、私は『私』って昔から言ってるし。
あー、そういえばからかわれたことがあったなあ。『なんで男なのに』とか、
『女々しい』とか」
「やっぱりお前もか。
...中学生の頃に、女子だと思ってた子がいきなり『ぼく』と自称し始めたことがあった。もしかしたら性自認について悩みがあったのかもしれないけど、俺が見る限り趣味は女子の好むものそのものだったし、オタクだった。なんだか決めつけるような言い方だけど、中二病全開の時代だったから、いわゆる“僕っ娘”だったと思うんだよ。周りの反応は冷たいもので、そいつを“イタい奴”として扱い始めた。俺はそれを遠巻きに眺めていた。今でこそ多様性に寛容であることを俺は心掛けているけど、当時の俺はその多数派と同じだった。その出来事以来、俺は、『私』を徹底して使ってきたわけだ」
「そうだねえ、私が私の出来事を忘れていたのは思い出したくなかったからかもね。あれはイヤだったなあ。人が自分のことを何と言ってもいいだろうに。何で冷たくされるんだろう」
「『俺』ってカッコつけてる言い方だろ?『男になりたいのか?』と思われそうで、使えなかった。
まさか『はい、そうです』なんて口が裂けても言えないし」
「子どもって残酷だよねえ、今だったらみんなもう少し広い心で受け止めてくれる気がするよ。私の存在だって昔より周囲に馴染んでる気がするし。小鳥遊くんは私の前以外でありのままで話す気はないの?」
「ない。裏で何言われてるかわかったもんじゃないしな。言いたい奴には言わせておけとは思うけど、多分俺はそこまで強い奴じゃない。学校という公共の場で自分を出してくつもりはないよ、親しい友人の前だけでいい」
「そう。無理には勧めないけど、いつか、優しい世界になればいいね。なんのリスクも考えずに自分をさらけ出せるような、みんな違ってみんないいを実践できるような世界」
「それが理想だな。現状からは程遠いけど。悲しいね」
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