身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ

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3章 商業都市メルセバ

5 大切なもの

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「ここにも行きたかったんだが、いいか?」

「うん」

ヴァルドさんに手を引かれて入ったお店。
さっき鞄屋さんの店員さんが指をさしていたお店だ。

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」

「財布が欲しい」

「ご用意ありますよ!こちらです」

店員さんに案内される。
このお店ならぼくでも何か買えるだろうか。
ぼくだって、セリカを持っているんだ。

並んでいるお財布に値段が付いているので覗いてみる。見てみるとぼくの持っているセリカでは、全く足りない値段だった。
ノーマン館長に教えてもらったけど、もっと上の単位の銀貨や金貨が必要みたいだ。
セリカがもっともっと、もーっと、必要だった。肩を落とす。

「この辺りなら使いやすそうだ。
アシェ。どうだ?」

「わ?」

思わず変な声を出してしまう。
ヴァルドさんの大きな手の中には小さなお財布があった。
落ち着いた茶色に、金の飾りがついていて、よく見ると小さな星の模様が浮かんでいる。

「か、カッコいい!」

「そうか。これにしよう」

ヴァルドさんが店員さんにそのお財布を渡す。もしかして、購入するのかな。

「あの、もしかして、それもぼくの……?」

「そうだが」

「お金。ぼくにたくさん使わなくて、大丈夫だよ?」

お金は大事な物。
お義母さんに何回も言われた言葉だ。
“役立たずのアシェなんかに、使う金はない”って。

「気にするな。オレが渡したいんだ。それに――」

ヴァルドさんはじっと遠くを見つめていた。

「もうアシェを、手放せなくなったからな」

「え……?」

ヴァルドさんは店員さんから小さな紙袋を受け取り、ぼくに渡される。

「ここまで来て、要らないと言うのか?」

ヴァルドさんは悲しげな表情だ。
なんだか、そんな表情をさせてしまったことを後悔した。ぼくは首を振る。

「……ありがとう。ヴァルドさん。
ずっと大切にするね」 

「良かった。……少し休憩したい。甘い物でも食べよう」

「え、と……?わ、あ!」

お店を出るとまた突然抱っこされる。
ヴァルドさんは抱っこが好きだ。
重くないのかな。
ヴァルドさんのシャツをぎゅっと掴む。

ヴァルドさんに悲しい表情をして欲しくない。
大事に使うことでヴァルドさんが喜んでくれるなら。そうしたいなって思ったんだ。






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