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収穫祭編
2 棘
しおりを挟む「ヴァルド・ノイシュタット騎士団長様!
この度は楽しんでおられますかな?」
「村長」
挨拶をされ、会釈を返す。
カルナ村の村長の隣には若い青年が控えていた。村長の息子のようだ。
「うちの息子は将来騎士団を目指していて、ぜひともヴァルド騎士団長様のお話を聞きたいそうです。
良ければあちらでどうですか?
お食事も選りすぐりのものを用意させて頂いております」
「魔物討伐の話、良ければ聞かせてください!」
なるほど。騎士団を目指す者が増えるのはいいことだが……。
アシェの方をチラリと見る。
アシェと村を回りたかったのだが、断るわけにもいかない。
「ぼく、あっちを見て回ってくるね!」
事情を察してか、アシェは遠くを指さす。
「……後で必ず回ろうな」
「うん」
アシェは少しオレの制服の袖を握ったかと思うと、手を離し遠くに駆けて行ってしまった。
「彼は?随分幼いですが……」
「彼は事情があって、騎士団で引き取りました。今は見習いの立場で色々経験を積んでもらっています」
「なるほど。……」
「そんなことより、魔物討伐のお話を聞かせて下さい!」
若い青年に背を押されて、移動することになる。アシェと収穫祭を回れるのはもう少し後になりそうだった。オレは心の中で小さくため息をついていた。
____
ぱたぱたと走って、森に差し掛かるあたりで足を止めた。
本当はヴァルドさんと一緒に居たかったけど、わがまま言えないもんね。
お話が終わったら、一緒に村を回ろう。
ぼくはポシェットの紐をぎゅっと握った。
「お母さん、お腹空いた」
寂しそうな声が聞こえて、心がざわりと波立った。顔を上げると、遠くで話している親子だった。
「今日は収穫祭だからね。
たくさん食べなさい。たくさん食べてお祈りして、来年もたくさん実りますようにってちゃんとお願いするのよ」
「はーい!」
「お母さん。今日はりんご酒もいいかい?」
「はいはい。呑みすぎないでね」
遠くで親子が手をつないで、収穫祭に向かっている様子が見えた。お父さんとお母さんの間にぼくより小さい子が手を繋いで歩いている。
とっても楽しそう。良かった。お腹が空いて悲しい思いをしている子はいなかった。
ぼくは胸をなで下ろした。
少しだけ、昔のぼくと重なった。
昔といってもまだ数ヶ月前のことだ。
お義母さんの機嫌を損ねてしまって、お腹が空いてしまったぼくは思わず言ってしまったんだ。
『お義母さん、お腹空いた』
魔力もない。お義母さんの言うとおりに掃除も、食事の準備もできない役立たずのぼくが、そんなこと言っていいはずないのに。なんて返事が返ってくるかなんて、わかっていたはずなのに。
ぼくの心の奥深くに、グサリと刺さった棘はいまだに抜けてくれないんだ。
――プルプルと首をふる。
今はお腹が満たされている。
ひどいことを言うお義母さんも、レオン義兄さんももうここにはいない。
「……ヴァルドさん、お肉食べたいって言ってた。探してこよう!」
再び顔を上げて、収穫祭でにぎわっている場所へと向かった。
ぼくはもうひとりじゃないんだ。
前よりそのことがよくわかっている。
だから、大丈夫なんだ。
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感想ありがとうございます!
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感想ありがとうございます。
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