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第9話 帰り道
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――その後、しばらくしてサラは何事もなかったように集会所に戻ってきた。
サラは先ほどの事は何も話さなかった。
「帰ろっか…」
「……そうね」
私達二人は、住み込みで働いている宿に帰る事にしたのだが…会話はあまり弾まず帰り道は人通りも疎らで、活気のなさも相まって空気はとても重かった。
時刻は夕暮れ時を過ぎ、そろそろ街にあかりがともる時間だった。あの襲撃からまだ半日と立っていないという事実に私は実感がわかなかった。
周囲を見渡しながら歩いていたが、あまり家屋等に被害は出ている様子はなかった。そのため、瓦礫などもほとんど出ている様子はなかった。目立った被害は壊されたあの城門ぐらいと言える。
あの時は逃げるので必死だったが、襲撃の規模をからして小さい物だったから当然と言えば当然かも知れない。
これだったら逃げるのではなくどこかに立て籠もっていたほうが、安全だったかも知れないと過ぎた事を考えてしまう。
だが、どこかに立て籠もって取り残されでもしたら…と考えるとその方法にはきっと行きつかなかっただろう…。
そして程なくして、宿が視線の先に見えてきた。
あの時はとても…長く感じたが、集会所から宿までの距離はそう離れていなかった。この重い空気が早く終わりそうで、ある意味助かったと言える。
宿は道沿いの壁と窓が少し破壊されているぐらいで、見る限りではすぐに復旧できそうだった。これならすぐに営業を開始できるだろう。
宿の女将さんは当時は襲撃があった南西地区ではなく南東の地区に買い物に行っていたはずなのできっと大丈夫だと思うのだが少し心配だった。
そんな事を考えながら宿の近くまでいくと誰かが宿の前に立っているのが見えた。
「あれ…パパ…??」
サラの方が早くにその人物の正体に気が付いた。
そこに居たのは――久しぶりに見た婚約者のトマスだった。
「――えっ? トマス?」
「ん…? おぉ! 二人とも無事だったか!」
トマスはこちらを確認すると感極まった表情で駆けて来た。
――どうしてトマスがここに…?
普通に考えれば心配で来てくれたのであろうと思ったが、私はもやもやした気持ちでいっぱいだった。
「おぉ、サラ! 大きくなったなぁ!」
「えっ? あ、うん…」
トマスはサラを嬉しそうに持ち上げるが、サラは何とも言えない表情を浮かべていた。何年かぶりに会ったのだから当然と言えばそうなのだが…。
――なんでいまさら……。
トマスは忙しい中せっかく来てくれたのであろうに、私はそんな事を考えてしまった。
もしかしたらサラもそう思っていたのかも知れないと、ふと顔を見て思ってしまった。
そんな気持ちを押し隠しつつ、私はトマスに訊ねた。
「えっと…トマス? わざわざ心配してきてくれたのね?」
「ん? おぉ! そうなんだよ! でもそれだけじゃなくてね……」
「「??」」
トマスはサラをおろしながら嬉しそうに話を続ける。
彼は他にも用事があるようだった。『こんな状況で何か用が?』と思い、少し勘ぐってしまう。
「聞いてくれ! 実は二人を家に迎え入れれる事になったんだ!」
「――は?」
私は思わずそんな声をあげてしまった…。
この状況で…? なんでいまさら…?
十年間も実質放置していた挙句、今になってそれが可能になった理由は何故だろうと、疑問に思った。
考えられるとしたら…今回の襲撃だろうか。そこで功績をあげたから? それとも危険があるから? だとしたらもっと早くに迎えにきそうなものだが…。私は色々考えてみたが理由が思いつかなかった。
「なんで今になって……」
思わず私はその言葉を口にしてしまった。これは仕方がない事だと思う…。
「実はな…兄さんが帰って来たんだ!」
「……??」
私はすぐに言っている意味を理解できなかった。確か十年前に聞いた話では戦死したと聞いていたのだが…。
「えっと…お兄さん? は亡くなったはずじゃ?」
「それが生きてたんだよ! それでさっき戻ってきたんだ!」
トマスは嬉しそうにそう報告するが、私は納得できないでいた…。
兄が死んだから当主を継いですぐに結婚できなくなったと言われ、十年も経ったとある日に兄が生きて帰ってきたから出来るようになったと急に言われても、すぐに納得できる話ではなかった。
「……?? 私達お屋敷で暮らすの?」
「そうだよ、サラ」
「そっか……」
なぜかサラはその話を聞いて、複雑そうな顔を浮かべていた。確か、サラは貴族になりたがっていたはずだが…違うのだろうか?
「そういえば、お兄さんはどんな人なの?」
私はもやもやした気持ちを押し隠すように、そんな質問をした。
トマスの兄について、私はあまり知らなかった。亡くなった家族の事をあまり深く、自分から聞くのは野暮だと思ったからだ。トマスも『立派な兄だった』、ぐらいしか話さなかった。
「ん…? ああ……これから家族になるから言っても別に問題ないか…」
「「??」」
突然トマスは辺りを確認し始めた。
もしかしたら何か人には言えない事情や過去がある人物なのだろうか。緊張が走る。
そして人気がない事を確認して、彼はこう言った。
「ああ、実は兄さんはな、五英雄…いや、今は元だったな…。『金色の英雄・金獅子』なんだよ」
「「……??」」
――トマスは何を言っているんだ?
トマスのお兄さんが英雄…?? しかも『金色』の…。
私には理解できなかった。
それはつまり、先ほど助けたくれた彼がトマスの兄…私の義兄になる人物だという事だったからだ…。
サラは先ほどの事は何も話さなかった。
「帰ろっか…」
「……そうね」
私達二人は、住み込みで働いている宿に帰る事にしたのだが…会話はあまり弾まず帰り道は人通りも疎らで、活気のなさも相まって空気はとても重かった。
時刻は夕暮れ時を過ぎ、そろそろ街にあかりがともる時間だった。あの襲撃からまだ半日と立っていないという事実に私は実感がわかなかった。
周囲を見渡しながら歩いていたが、あまり家屋等に被害は出ている様子はなかった。そのため、瓦礫などもほとんど出ている様子はなかった。目立った被害は壊されたあの城門ぐらいと言える。
あの時は逃げるので必死だったが、襲撃の規模をからして小さい物だったから当然と言えば当然かも知れない。
これだったら逃げるのではなくどこかに立て籠もっていたほうが、安全だったかも知れないと過ぎた事を考えてしまう。
だが、どこかに立て籠もって取り残されでもしたら…と考えるとその方法にはきっと行きつかなかっただろう…。
そして程なくして、宿が視線の先に見えてきた。
あの時はとても…長く感じたが、集会所から宿までの距離はそう離れていなかった。この重い空気が早く終わりそうで、ある意味助かったと言える。
宿は道沿いの壁と窓が少し破壊されているぐらいで、見る限りではすぐに復旧できそうだった。これならすぐに営業を開始できるだろう。
宿の女将さんは当時は襲撃があった南西地区ではなく南東の地区に買い物に行っていたはずなのできっと大丈夫だと思うのだが少し心配だった。
そんな事を考えながら宿の近くまでいくと誰かが宿の前に立っているのが見えた。
「あれ…パパ…??」
サラの方が早くにその人物の正体に気が付いた。
そこに居たのは――久しぶりに見た婚約者のトマスだった。
「――えっ? トマス?」
「ん…? おぉ! 二人とも無事だったか!」
トマスはこちらを確認すると感極まった表情で駆けて来た。
――どうしてトマスがここに…?
普通に考えれば心配で来てくれたのであろうと思ったが、私はもやもやした気持ちでいっぱいだった。
「おぉ、サラ! 大きくなったなぁ!」
「えっ? あ、うん…」
トマスはサラを嬉しそうに持ち上げるが、サラは何とも言えない表情を浮かべていた。何年かぶりに会ったのだから当然と言えばそうなのだが…。
――なんでいまさら……。
トマスは忙しい中せっかく来てくれたのであろうに、私はそんな事を考えてしまった。
もしかしたらサラもそう思っていたのかも知れないと、ふと顔を見て思ってしまった。
そんな気持ちを押し隠しつつ、私はトマスに訊ねた。
「えっと…トマス? わざわざ心配してきてくれたのね?」
「ん? おぉ! そうなんだよ! でもそれだけじゃなくてね……」
「「??」」
トマスはサラをおろしながら嬉しそうに話を続ける。
彼は他にも用事があるようだった。『こんな状況で何か用が?』と思い、少し勘ぐってしまう。
「聞いてくれ! 実は二人を家に迎え入れれる事になったんだ!」
「――は?」
私は思わずそんな声をあげてしまった…。
この状況で…? なんでいまさら…?
十年間も実質放置していた挙句、今になってそれが可能になった理由は何故だろうと、疑問に思った。
考えられるとしたら…今回の襲撃だろうか。そこで功績をあげたから? それとも危険があるから? だとしたらもっと早くに迎えにきそうなものだが…。私は色々考えてみたが理由が思いつかなかった。
「なんで今になって……」
思わず私はその言葉を口にしてしまった。これは仕方がない事だと思う…。
「実はな…兄さんが帰って来たんだ!」
「……??」
私はすぐに言っている意味を理解できなかった。確か十年前に聞いた話では戦死したと聞いていたのだが…。
「えっと…お兄さん? は亡くなったはずじゃ?」
「それが生きてたんだよ! それでさっき戻ってきたんだ!」
トマスは嬉しそうにそう報告するが、私は納得できないでいた…。
兄が死んだから当主を継いですぐに結婚できなくなったと言われ、十年も経ったとある日に兄が生きて帰ってきたから出来るようになったと急に言われても、すぐに納得できる話ではなかった。
「……?? 私達お屋敷で暮らすの?」
「そうだよ、サラ」
「そっか……」
なぜかサラはその話を聞いて、複雑そうな顔を浮かべていた。確か、サラは貴族になりたがっていたはずだが…違うのだろうか?
「そういえば、お兄さんはどんな人なの?」
私はもやもやした気持ちを押し隠すように、そんな質問をした。
トマスの兄について、私はあまり知らなかった。亡くなった家族の事をあまり深く、自分から聞くのは野暮だと思ったからだ。トマスも『立派な兄だった』、ぐらいしか話さなかった。
「ん…? ああ……これから家族になるから言っても別に問題ないか…」
「「??」」
突然トマスは辺りを確認し始めた。
もしかしたら何か人には言えない事情や過去がある人物なのだろうか。緊張が走る。
そして人気がない事を確認して、彼はこう言った。
「ああ、実は兄さんはな、五英雄…いや、今は元だったな…。『金色の英雄・金獅子』なんだよ」
「「……??」」
――トマスは何を言っているんだ?
トマスのお兄さんが英雄…?? しかも『金色』の…。
私には理解できなかった。
それはつまり、先ほど助けたくれた彼がトマスの兄…私の義兄になる人物だという事だったからだ…。
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