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第10話 お屋敷
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私とサラの二人はあの日から三日経って、トマスの…クレイソン家の屋敷に向かっていた。荷物の方は事前に運び込んでもらった。元々私物はそれほどなかったので手間はかからなかった。
『良かったじゃないか! 頑張りなさいよ!』
『はい…今までありがとうございました』
住み込みで働いていた宿の女将さんに事情を説明した所、快く送り出してくれた。
だが、私は少しうっぷんした気持ちを抱えていた。
十年間…と言うのは想像以上に長いものだ。
これからうまくやっていけるのか…不安でいっぱいであった。
そもそもここ数年会ってすらいなかったのだ、どうしろと言うのだ。
「…おっきいね」
「え、ええ…そうね…」
私達は屋敷が見える位置までやってきた。
屋敷の場所は、王都でも貴族特区と呼ばれる文字通り貴族達が住まう区域の中でも、ひと際目を引く煌びやかな一角に建っていた。屋敷は他と比較的しても大きめで庭も広々としており、整備もきちんと行われているようだった。没落しているとはいえ、有力な貴族である事がそれだけでうかがえる。
これからここに住むと考えると、少し気後れしてしまった。
「お待ちしておりました…」
庭師道具…と言えばよいのだろうか、園芸用の鋏やらをポーチにいれつなぎを着た老年の男性が、なぜか門の前で待っていた。
私達はその人の案内で敷地の中に入っていくが、門番のような人は誰もおらず…この人物が屋敷まで応対してくれた。
「なんだか、緊張するね!」
「そうね…」
サラは念願の英雄様に会える…という事でソワソワしていた。
あの日トマスから、兄があの時の英雄であると聞いたサラは、目を輝かせていた。
なんというか、すっかりと気に入ってしまったようである。
毎日のようにいつ会えるのかと、呟いていたほどだった。
だが、私は気が気ではなかった。
――一体どんな人物なのだろうか…。
トマスから優しい兄だから大丈夫だと聞かされてはいたが、この国の元・五英雄の一人であり、私のような”技能なし”の平民からすればまさに雲の上の人物である。あまりその言葉は信用できなかった。
しかも、ド派手な全身金色の鎧と兜を付けているのだ…。きっと変わり者に違いないだろうと、私は勝手にそう思っていた。
――やはり直接お礼を伝えたほうが、良いのだろうけど…。
助けられた事をトマス経由で事前に言ってはいたが、それだけというのも失礼に当たるのではと思った。だが、直接言うとなると勇気がいりそうな相手だ。
「こちらのお部屋になります…」
「はい…ありがとうございます」
「いえ…あなた様はご当主であらされるトマス様の奥方様になられますので、ご遠慮なさらずに…」
――なんだか慣れないわね…。
色々と考えを巡らせている間に、トマスとその兄が待っている部屋の前まで来てしまった。
侍女がいる、庭師がいる。そして、そんな事にまだ慣れない自分がそこにいた。
私達二人はメイド長のメリッサさんという方に、屋敷内を案内をしてもらった。
この屋敷は大きさに比べて、常駐している使用人はなんと…三人しかいないらしい。さすがに足りるのだろうかと思う。
……そもそも三人しかいないのに、メイド”長”とはどういう事なんだろうか?
聞けば昔はもっと多く居たが、没落して十年でここまで減ってしまったらしい。今残っているのは、先々代から務める老齢な人物ばかりだそうだ。
部屋の前に近づくと、二人の話声がかすかに聞こえる。
私は緊張を押し隠しながらノックをした。
「おお、来たか。入ってくれ」
「「失礼いたします」」
トマスの返事を聞き、私は意を決して部屋に入った。
部屋に入るとそこにはトマスと――その向かいに金髪の若い青年がいた。
私は驚いた。彼は筋骨隆々の英雄どころか、まともに戦った事もなさそうな…その辺の兵士崩れにすら見えないほど、華奢な優男だったからだ…。
『良かったじゃないか! 頑張りなさいよ!』
『はい…今までありがとうございました』
住み込みで働いていた宿の女将さんに事情を説明した所、快く送り出してくれた。
だが、私は少しうっぷんした気持ちを抱えていた。
十年間…と言うのは想像以上に長いものだ。
これからうまくやっていけるのか…不安でいっぱいであった。
そもそもここ数年会ってすらいなかったのだ、どうしろと言うのだ。
「…おっきいね」
「え、ええ…そうね…」
私達は屋敷が見える位置までやってきた。
屋敷の場所は、王都でも貴族特区と呼ばれる文字通り貴族達が住まう区域の中でも、ひと際目を引く煌びやかな一角に建っていた。屋敷は他と比較的しても大きめで庭も広々としており、整備もきちんと行われているようだった。没落しているとはいえ、有力な貴族である事がそれだけでうかがえる。
これからここに住むと考えると、少し気後れしてしまった。
「お待ちしておりました…」
庭師道具…と言えばよいのだろうか、園芸用の鋏やらをポーチにいれつなぎを着た老年の男性が、なぜか門の前で待っていた。
私達はその人の案内で敷地の中に入っていくが、門番のような人は誰もおらず…この人物が屋敷まで応対してくれた。
「なんだか、緊張するね!」
「そうね…」
サラは念願の英雄様に会える…という事でソワソワしていた。
あの日トマスから、兄があの時の英雄であると聞いたサラは、目を輝かせていた。
なんというか、すっかりと気に入ってしまったようである。
毎日のようにいつ会えるのかと、呟いていたほどだった。
だが、私は気が気ではなかった。
――一体どんな人物なのだろうか…。
トマスから優しい兄だから大丈夫だと聞かされてはいたが、この国の元・五英雄の一人であり、私のような”技能なし”の平民からすればまさに雲の上の人物である。あまりその言葉は信用できなかった。
しかも、ド派手な全身金色の鎧と兜を付けているのだ…。きっと変わり者に違いないだろうと、私は勝手にそう思っていた。
――やはり直接お礼を伝えたほうが、良いのだろうけど…。
助けられた事をトマス経由で事前に言ってはいたが、それだけというのも失礼に当たるのではと思った。だが、直接言うとなると勇気がいりそうな相手だ。
「こちらのお部屋になります…」
「はい…ありがとうございます」
「いえ…あなた様はご当主であらされるトマス様の奥方様になられますので、ご遠慮なさらずに…」
――なんだか慣れないわね…。
色々と考えを巡らせている間に、トマスとその兄が待っている部屋の前まで来てしまった。
侍女がいる、庭師がいる。そして、そんな事にまだ慣れない自分がそこにいた。
私達二人はメイド長のメリッサさんという方に、屋敷内を案内をしてもらった。
この屋敷は大きさに比べて、常駐している使用人はなんと…三人しかいないらしい。さすがに足りるのだろうかと思う。
……そもそも三人しかいないのに、メイド”長”とはどういう事なんだろうか?
聞けば昔はもっと多く居たが、没落して十年でここまで減ってしまったらしい。今残っているのは、先々代から務める老齢な人物ばかりだそうだ。
部屋の前に近づくと、二人の話声がかすかに聞こえる。
私は緊張を押し隠しながらノックをした。
「おお、来たか。入ってくれ」
「「失礼いたします」」
トマスの返事を聞き、私は意を決して部屋に入った。
部屋に入るとそこにはトマスと――その向かいに金髪の若い青年がいた。
私は驚いた。彼は筋骨隆々の英雄どころか、まともに戦った事もなさそうな…その辺の兵士崩れにすら見えないほど、華奢な優男だったからだ…。
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