私の戦う理由 ~帰ってきた英雄はお義兄様~

転落人

文字の大きさ
12 / 18

第11話 顔合わせ

しおりを挟む
 ――これが…トマスのお兄さんで英雄…?

 そして…年上にも見えなかった。随分と…若そうに見えたのだ。
 私が24歳でトマスが確か26か27歳だったはずだ…。つまりその上という事になるのだが、彼はそう見えなかった。

 そして、私はもっと歳の離れた人を想像していたのだ。

 確か、英雄『金獅子きんじし』の在任期間は『二十年前から十年前』だったはずだ。外見を考慮すれば、彼は随分若い頃から英雄をやっていたという事になる。彼を30歳と仮定するとしても10歳から英雄をしていた事になってしまう。もしかしたら見かけによらないだけなのかも知れないが…。

「兄さん紹介するよ、妻になるメアだ!」

 トマスは喜びの表情で私を紹介する。

「…初めまして、僕はトマスの兄でレオンだよ、よろしくね」

 彼は幼さの残る顔に、トマスとは対照的な明るい翠目が特徴的だった。そして、にっこりと私に微笑みながらそう言った。

「お、お初にお目にかかります、わたくしはメアと申します、お義兄様」

 私はイメージが違いすぎて少々呆気に取られていたが、付け焼刃の貴族知識で仕草を取りながらそう返答した。

「…これから家族になるからね、家ではあまり仰々しくなくて良いよ」

 ……何とも言えなかった…。彼は事前の想像とは全くかけ離れていた。英雄らしくも、そして貴族らしくもなかった。

 ――本物かしら? いや偽物を用意してどうするのよ…。

 私は彼のあまりの普通っぷりに拍子抜けしながらも、そんな訳の分からない失礼な事を考えていた。

「それで、この子が娘のサラだ」

 トマスはサラの背中を軽く押し、紹介する。
 するとレオン…お義兄様は少し屈んでサラに目線を合わせ。

「初めまして、サラちゃん。僕はレオン伯父さんだよ。」

 そう言いながら微笑んだ。

「あ…うっ…えっと…」
「…?」

 サラはお義兄様を前にして何やらしどろもどろになっていた。

「ハハ…サラは兄さんに緊張しているようだ」
「? そうなのかい?」
「どうやら娘は兄さんに…英雄に会いたがっていたみたいでね」
「そう、なのか…」

 喜びながらそう語るトマスに対して、お義兄様は何故か複雑そうな顔をしていた。

「それにしても…トマスに婚約者どころか、こんな大きな子が出来ているとはな…」
「そりゃそうだよ! 兄さんあれからもう十年だよ」
「それもそうか…」

 お義兄様は少し落ち込んだ表情をしていた。

 ――そういえば…この十年間、お義兄様は何をしていたのだろう…。

 話を聞く限り、やはりこの十年会っていないような口ぶりだ。
 私には気がかりな…いや、トマスに問いただしたい事が山ほどあったのだ。

 確か『金獅子きんじし』含む元・五英雄は、国の発表では全員十年前に引退して世代交代していたはずなのである。
 だが、トマスは言っていた。当主である父と長子である兄は、十年前の厄災掃討戦で死亡していると…。しかも、兄が五英雄だったなどと私達は聞いてはいなかったのだ。
 これは一体どういう事なのだろうか…。それについてトマスに聞いても『家についてから…』の一点張りだった。

「――うん…?? つまり、十年近く先送りにしてたって事か…?」
「えっと…ハハ、そうなんだよ」
「それで結婚式はいつにするんだ? まだ何もしてないって事だろう?」

 私が色々考えている内に二人は話を続けている。
 どうやら私とトマスの式について話をしているようだ。

「まあ、だから早めにしたくてね。急だけど一月後を予定してるよ」

 トマスは少しバツの悪そうな顔をしながらそう答えた。

「……いや、さすがに急すぎないか? 準備は間に合うのか?」
「……その辺は一応伝手があってね。それに、大々的にはやらないつもりだから…」
「そう、か…まあ何か手伝える事があったら、何でも言ってくれ」
「ありがとう、兄さん」

 ――結婚式、か…。

 私は二人の会話を聞きながら今後について少し考えた。
 トマスは未だに誰とも結婚していなかった。私に遠慮していたのか、家を建て直していたのか、はたまた相手が見つからなかったのかは分からないが…。
 そういう意味では痴情のもつれなども心配はないだろう。

 ふと、娘のサラの方を見る。娘は何やらぼーっとしていた…。

 サラの今後を考えれば、実の父であるトマスと結婚する方がいいと私は思っていた。
 この屋敷は王都でも頑丈な城壁に加えて、兵士達が多数駐留する地区にあるから、襲撃をそう簡単に受ける事もないだろう。さらに今までできなかった贅沢もさせて上げられるだろうと…。

 だが、これから貴族の一員になる…というのはやはり不安であった。

 しかも、一月後とはあまりにも急すぎる。
 これには日数的な問題もあるが、実は先日の魔物の襲撃の件もあり、少なからず貴族達は住民から突き上げを食らっている状態だったのだ。
 私も人の事は言えないが、民衆と言うのは常に誰かに不満を言いたがるものだ…。
 そんな中で式など挙げれば悪目立ちする可能性があったからだ。

「おっとすまない、もう少し話したい所だが…時間のようだ」
「そうか、もうそんな時間か…」

 そんな事を考えていると、お義兄様は急にそう話を切り上げる。

「それじゃあね、トマス。二人もまた今度」

 そういってお義兄様は名残惜しそうにしながら、部屋から退出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

処理中です...