14 / 18
第13話 好奇心
しおりを挟む
その後、程なくして戻ってきたサラとトマスを加えて、三人で夕食をとったのだが……案の定さきほどのせいで会話はまるで弾まなかった。トマスが話しかけてもサラは生返事なのだ…。
食事の質はかなり上がった。今まで見たことのないような食材が並んでいたが…それどころではなく、味もいまいち分からなかった。
「はぁ……」
私は一人、ロウソクを片手に廊下を歩きながら、盛大に溜息をついた。
食事の後、私はトマスに呼び出され、サラの件で再び念を押されてしまった。
そのせいで随分と夜遅くになってしまった。
まだ初日である。初日だからこそかも知れないが、こんな事でやっていけるのだろうか。
私とトマスはともかく、娘の場合は物心ついた頃からほとんど会っていないのだ。
「トマスももう少し…言葉を選んでくれればいいんだけどね…」
彼はこの国の貴族だから仕方がないと言えばそうなのだが、一歩も引かないのだ。
娘もそんなトマスに引く素振りは見せなかった。
「似たもの同士と言えば聞こえはいいけどね…」
頑固なのはいいが、家の中ではせめてもう少し歩み寄る姿勢を持ってほしいものだ。
そして私は自分の寝室に帰る途中、ふと足を止めた。
ここは確か――お義兄様の寝室だ。
「……結局彼は何者なのかしら」
トマスの兄で英雄…らしいのだが、扉を見ながらついそんな事を口走った。
何といえば良いか、情報を聞けば聞くほど…うさんくさいのである。
そして彼を見ているとなぜだか…。
――気になる…。
ちょっとした好奇心、疑念。そんな感情から…ついノックをしてしまう。
……返事はない。そして――
「……失礼いたし…」
私はそう言いながら…扉を少し開けてしまった。鍵が…掛かっていなかったのだ。
もしトマスが言ったように、寝たらしばらく起きれないのであれば、あまりにも不用心すぎる…。
だが日も落ちてしばらく経つ頃だ。中をつい覗いてしまったが、手に持っていた僅かな灯では、部屋の中は薄暗くてよく見えなかった。
「……何してるんだろう」
私はよく見えなかった事に、逆に一安心してしまった。そして自分の行動を顧みた。
そして冷静になり、早く寝室に帰って寝ようと思った。
「――何をなされているのですか?」
「――ひっ!?」
その時、後ろから誰かに声をかけられた。
私はびっくりして、思わずその場で固まってしまった。
薄暗いとはいえ、先ほどまで誰の姿も気配もなかったはずなのに……。
そして恐る恐る首を回し、後ろを確認すると……そこにはメリッサさんがいた。
失礼かも知れないが、暗がりの中で突如現れた彼女は不気味に見えた。
「えっと…特に何かしていたわけでは……」
つい反射的に言い訳してしまう。
「……気になりますか?」
だがメリッサさんの目は私の手に注がれている。
そして私の手はしっかりと…お義兄様の寝室のドアノブを掴んでいるのだ…。
しかも扉は少しだが開いている…言い訳のしようがなかった…。
「えっ、あっ、いやぁ…」
私はまるで、悪戯がばれた子供のようだった。
恐らく今の私は、顔は赤くなり目は泳いでいることだろう。
「どうぞ、こちらへ…」
そう言うとメリッサさんは少し開いたドアをさらに開け、中に入るように即して来た。
「えっ?? いや、その…いいんですか?」
返答は沈黙だ。でも良いのだろうか…ここはお義兄様の寝室で彼は寝ているはずだ。
仮にも主人…いや今の主人はトマスなのでその兄だが、こんな事をして許されるのだろうか。私もトマスと結婚するとはいえ、まだ籍は入れていないのだ…。そんな状態で…。
「し、失礼いたします…」
これを言うのは二回目だ…。
私は結局、メリッサさんの圧に負けて部屋に入った。
そして彼女も入ってきて扉が閉められた。
なんだか逃げ場がなくなった…そんな感覚だった。
「こちらへお掛けください」
私は薄暗い中、用意された椅子に座る。
ふと横を見ると…寝ているお義兄様の顔がチラりと見えた。
私が座ったのはベットの真横だった。
「さて…」
ただ顔を見ただけだが悪い事をしたような感覚になり、私はその一言で思わずびくりと震えてしまう。メリッサさんを見ると立ったままだった。
「何からお話…いえ、まず何かお聞きになりたい事は御座いますか?」
私は先ほどの行為を咎められると思って緊張していたが、彼女にそう切り出された。
もしかして聞けば普通に話してくれるのだろうか…?
彼らが隠そうとしている何かを…。
――聞いても良いのだろうか…?
聞けば戻れないような気がするが、知らないで不利益を被るのはもっと御免だった。
だがあまりに急な展開に、私は何を聞こうか迷ってしまった。
そして――。
「えっと――彼は…お義兄様は本物の『金獅子』なんですか!?」
なんというか本当に聞いていいか分からない質問をしてしまった。
もしこれで『違います』なんて言われたら逆に困る。
そもそも彼は寝ているのだから証明しようがないのだが。
「……??」
メリッサさんはしばらく、何を言われているか分からないという顔をしていたが…。
「あぁ…なるほど、そういう事ですか…」
そう言うと何やら思い至ったようで、お義兄様に近づき布団をめくった。
そして――何を思ったのか、彼の服を脱がし始めたのだ…。
「…んぇっ!? ちょ、ちょっと何、を…?」
私は思わずその奇行に慌てて止めようとしたが、目にした光景に驚いてしまった。
お義兄様の体はやせ細っていて、まるで…。
「証明にはなりませんが…これが英雄の真相に御座います」
「いや、真相って…」
何を言っているんだこの人は…これでは英雄ではなく――病人だ。
食事の質はかなり上がった。今まで見たことのないような食材が並んでいたが…それどころではなく、味もいまいち分からなかった。
「はぁ……」
私は一人、ロウソクを片手に廊下を歩きながら、盛大に溜息をついた。
食事の後、私はトマスに呼び出され、サラの件で再び念を押されてしまった。
そのせいで随分と夜遅くになってしまった。
まだ初日である。初日だからこそかも知れないが、こんな事でやっていけるのだろうか。
私とトマスはともかく、娘の場合は物心ついた頃からほとんど会っていないのだ。
「トマスももう少し…言葉を選んでくれればいいんだけどね…」
彼はこの国の貴族だから仕方がないと言えばそうなのだが、一歩も引かないのだ。
娘もそんなトマスに引く素振りは見せなかった。
「似たもの同士と言えば聞こえはいいけどね…」
頑固なのはいいが、家の中ではせめてもう少し歩み寄る姿勢を持ってほしいものだ。
そして私は自分の寝室に帰る途中、ふと足を止めた。
ここは確か――お義兄様の寝室だ。
「……結局彼は何者なのかしら」
トマスの兄で英雄…らしいのだが、扉を見ながらついそんな事を口走った。
何といえば良いか、情報を聞けば聞くほど…うさんくさいのである。
そして彼を見ているとなぜだか…。
――気になる…。
ちょっとした好奇心、疑念。そんな感情から…ついノックをしてしまう。
……返事はない。そして――
「……失礼いたし…」
私はそう言いながら…扉を少し開けてしまった。鍵が…掛かっていなかったのだ。
もしトマスが言ったように、寝たらしばらく起きれないのであれば、あまりにも不用心すぎる…。
だが日も落ちてしばらく経つ頃だ。中をつい覗いてしまったが、手に持っていた僅かな灯では、部屋の中は薄暗くてよく見えなかった。
「……何してるんだろう」
私はよく見えなかった事に、逆に一安心してしまった。そして自分の行動を顧みた。
そして冷静になり、早く寝室に帰って寝ようと思った。
「――何をなされているのですか?」
「――ひっ!?」
その時、後ろから誰かに声をかけられた。
私はびっくりして、思わずその場で固まってしまった。
薄暗いとはいえ、先ほどまで誰の姿も気配もなかったはずなのに……。
そして恐る恐る首を回し、後ろを確認すると……そこにはメリッサさんがいた。
失礼かも知れないが、暗がりの中で突如現れた彼女は不気味に見えた。
「えっと…特に何かしていたわけでは……」
つい反射的に言い訳してしまう。
「……気になりますか?」
だがメリッサさんの目は私の手に注がれている。
そして私の手はしっかりと…お義兄様の寝室のドアノブを掴んでいるのだ…。
しかも扉は少しだが開いている…言い訳のしようがなかった…。
「えっ、あっ、いやぁ…」
私はまるで、悪戯がばれた子供のようだった。
恐らく今の私は、顔は赤くなり目は泳いでいることだろう。
「どうぞ、こちらへ…」
そう言うとメリッサさんは少し開いたドアをさらに開け、中に入るように即して来た。
「えっ?? いや、その…いいんですか?」
返答は沈黙だ。でも良いのだろうか…ここはお義兄様の寝室で彼は寝ているはずだ。
仮にも主人…いや今の主人はトマスなのでその兄だが、こんな事をして許されるのだろうか。私もトマスと結婚するとはいえ、まだ籍は入れていないのだ…。そんな状態で…。
「し、失礼いたします…」
これを言うのは二回目だ…。
私は結局、メリッサさんの圧に負けて部屋に入った。
そして彼女も入ってきて扉が閉められた。
なんだか逃げ場がなくなった…そんな感覚だった。
「こちらへお掛けください」
私は薄暗い中、用意された椅子に座る。
ふと横を見ると…寝ているお義兄様の顔がチラりと見えた。
私が座ったのはベットの真横だった。
「さて…」
ただ顔を見ただけだが悪い事をしたような感覚になり、私はその一言で思わずびくりと震えてしまう。メリッサさんを見ると立ったままだった。
「何からお話…いえ、まず何かお聞きになりたい事は御座いますか?」
私は先ほどの行為を咎められると思って緊張していたが、彼女にそう切り出された。
もしかして聞けば普通に話してくれるのだろうか…?
彼らが隠そうとしている何かを…。
――聞いても良いのだろうか…?
聞けば戻れないような気がするが、知らないで不利益を被るのはもっと御免だった。
だがあまりに急な展開に、私は何を聞こうか迷ってしまった。
そして――。
「えっと――彼は…お義兄様は本物の『金獅子』なんですか!?」
なんというか本当に聞いていいか分からない質問をしてしまった。
もしこれで『違います』なんて言われたら逆に困る。
そもそも彼は寝ているのだから証明しようがないのだが。
「……??」
メリッサさんはしばらく、何を言われているか分からないという顔をしていたが…。
「あぁ…なるほど、そういう事ですか…」
そう言うと何やら思い至ったようで、お義兄様に近づき布団をめくった。
そして――何を思ったのか、彼の服を脱がし始めたのだ…。
「…んぇっ!? ちょ、ちょっと何、を…?」
私は思わずその奇行に慌てて止めようとしたが、目にした光景に驚いてしまった。
お義兄様の体はやせ細っていて、まるで…。
「証明にはなりませんが…これが英雄の真相に御座います」
「いや、真相って…」
何を言っているんだこの人は…これでは英雄ではなく――病人だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる