私の戦う理由 ~帰ってきた英雄はお義兄様~

転落人

文字の大きさ
15 / 18

第14話 真相?

しおりを挟む
 病人ならまだいいかも知れない、お義兄様の体は大丈夫なのか…?

「えっと、すみません。意味が分からないのですが…」

 私は目をそらしながら答えた。見るに堪えなかったのだ。
 そもそも英雄かどうか聞いただけなのだが…?

「坊ちゃま…いえ、レオン様がほとんど寝ていらっしゃる、というお話は御存じですね」
「ええ、はい…」
「もし仮に、そのような人間がいたら体はどうなるでしょうか」

 メリッサさんは彼の服を戻しながら、そう問いかける。
 何が言いたいのだろうか…。

「まあ、端的に言えば筋力などは大幅に落ちるでしょう」

 沈黙しているとその問いに続けて答えた。
 ずっと寝ていればそうなると…。だが、あの体はその程度の物なのだろうか…。

「メア様は、魔術に関しては御存じですか?」
「えっ? 一応常識の範囲内では…」

 魔術は技能スキルとは別の物で技術の一種だ。
 大昔に代替品として生まれたと言われているが、逆に技能スキルの元になったなんて説もある。
 後は一人一属性だけ適正があり、学ぼうと思えば誰でも一属性は習得可能という事。
 そして…使いすぎると人体に影響が出るという、よく言われる迷信も私は語った。
 そのため、一定の年齢になるまで魔術は原則として使用が禁止されていたりする。

「――魔術と言う物はいわば魔力…という物を使うとされていますが、実質使っているのは体その物、体力のような物なのです」
「は、はあ…」

 ――のだが、私はなぜか、メリッサさんから魔術の成り立ちのような物を突如教わった。

「そして未熟な体で無理やり魔術を行使し続ければ、それ相応の反動を受けます」

 恐らく迷信についての話だろうが、そう言いながらお義兄様の方を見た。

「…? つまりこの体は魔術を無理に使ったからだと?」
「その通りで御座います」

 なるほど…彼がこうなった理由は分かった、だが…。

「坊ちゃまの技能スキルが戦闘…火力を出すのに向いていないのは御存じですか?」
「えっ? ええ、一応は」

 あくまで国の公式発表だが…超強力ではあるが、それ自体は火力が出ない物だったはずだ。

「だから魔術も使っていたと…?」
「その通りで御座います」

 ますます意味が分からない。

「ではなぜ…お義兄様のような人が英雄に…?」

 英雄とは国にとって最強の存在だ…。そう在らねばならない存在だ。
 ではなぜ、彼のような人物が選ばれた…? なぜ戦っているのだ?

「それは、もうこの国は護り手が常に不足…いえ今は存在しないからです」
「……はい?」

 何を言っているのだろうか。
 確かにお義兄様はもう戦える状態ではないかも知れない。
 元・五英雄も全員引退した…。
 だが、新しく代替わりで就任した人物が五人もいるはずなのだ。
 それに英雄がいなくたってこの国は…。

「この国は常に一部の強き者に従ってきました…。裏を返せばそれだけ英雄という存在に頼って、ここまで平和に生きながらえて来たのです…」

 メリッサさんは急に何かを思い出したように語りだす。

「そのつけがついに、回ってきたのでしょう…。もうこの国は存続自体が危うい状態にあるのです」
「……その、冗談ですよね?」

 返答は沈黙だ。
 あまりにも突拍子もない事を言われた。普通なら信じないだろう。
 だが、私は今の話を聞いて不安に駆られていた。
 先日の襲撃の件があったからだ…。
 後に分かった事だが、規模に対しての被害が大きすぎたのだ。
 そのため、国と貴族は国民に突き上げを食らっている。

「……トマスはこの事を…お義兄様のお体の事もご存じなのですか?」

 トマスは兄がいるから、これから家は大丈夫だ…などと言っていたが、どう見ても今の話を考慮したらそれ所ではない。そもそもだ、その兄が死にそうではないか。

「いいえ、ご存じではありません」
「――なぜ?」
「それは、前当主様と坊ちゃまのご意向で御座います」

 トマスは知らなかったようだ。まあ知っていた上であの態度だったら、逆にどうかと思うが…。

「ではなぜ私にだけ、この事を?」
「…出来ればあなたには知っていてほしかったからです」
「……えっ?」

 てっきり、『この事を知ったからには…!!』 みたいな展開になると私は予想していたので拍子抜けしてしまった。

「どういう、意味ですか?」
「それはいずれ分かるかと…」

 ここまで言われて、はぐらかされてしまった。

「さて…あまり遅くなりますと勘ぐられますので…」

 そして、言うだけ言って一方的に話を切ろうとする。

「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……何か?」

 私はそんな急な塩対応に一瞬怯みつつも、もう一つ聞いておきたい事があったのだ。

「この十年間、お義兄様は何をしていたのですか?」

 こうなると色々話が変わってくる。本当に療養していたのかすら怪しい。

 メリッサさんはチラりと寝ているお義兄様の方を見た。
 もしかしたら何か、口止めされているのかも知れない…。
 そして暫しの沈黙の後で、こう答えた。

「坊ちゃまは…この十年間、残った部下を率いて戦っておられました」
「……??」

 それは嘘だ。先ほど見た体では到底戦えるとは思えない。
 しかも十年間も戦っていたら、どこかで噂になるはずである。
 だが私は先日の魔物の襲撃で現れた彼の姿を思い出してしまった。
 あの時の彼は変わらず英雄としての姿であったと。

「では、そろそろ」
「あっ、ちょっとまだ…」

 まだ聞きたい事があったが、彼女はこれ以上は語るつもりはないといった状態だった。そして追い出されるように私は部屋を後にした。

「出来ればわたくしが話したという事は伏せていただけると…」

 それだけ言ってメリッサさんは立ち去ってしまった。
 いつの間にか姿は闇に消え、見えなくなっていた。

 そして私はそこに一人取り残された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...