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第14話 真相?
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病人ならまだいいかも知れない、お義兄様の体は大丈夫なのか…?
「えっと、すみません。意味が分からないのですが…」
私は目をそらしながら答えた。見るに堪えなかったのだ。
そもそも英雄かどうか聞いただけなのだが…?
「坊ちゃま…いえ、レオン様がほとんど寝ていらっしゃる、というお話は御存じですね」
「ええ、はい…」
「もし仮に、そのような人間がいたら体はどうなるでしょうか」
メリッサさんは彼の服を戻しながら、そう問いかける。
何が言いたいのだろうか…。
「まあ、端的に言えば筋力などは大幅に落ちるでしょう」
沈黙しているとその問いに続けて答えた。
ずっと寝ていればそうなると…。だが、あの体はその程度の物なのだろうか…。
「メア様は、魔術に関しては御存じですか?」
「えっ? 一応常識の範囲内では…」
魔術は技能とは別の物で技術の一種だ。
大昔に代替品として生まれたと言われているが、逆に技能の元になったなんて説もある。
後は一人一属性だけ適正があり、学ぼうと思えば誰でも一属性は習得可能という事。
そして…使いすぎると人体に影響が出るという、よく言われる迷信も私は語った。
そのため、一定の年齢になるまで魔術は原則として使用が禁止されていたりする。
「――魔術と言う物はいわば魔力…という物を使うとされていますが、実質使っているのは体その物、体力のような物なのです」
「は、はあ…」
――のだが、私はなぜか、メリッサさんから魔術の成り立ちのような物を突如教わった。
「そして未熟な体で無理やり魔術を行使し続ければ、それ相応の反動を受けます」
恐らく迷信についての話だろうが、そう言いながらお義兄様の方を見た。
「…? つまりこの体は魔術を無理に使ったからだと?」
「その通りで御座います」
なるほど…彼がこうなった理由は分かった、だが…。
「坊ちゃまの技能が戦闘…火力を出すのに向いていないのは御存じですか?」
「えっ? ええ、一応は」
あくまで国の公式発表だが…超強力ではあるが、それ自体は火力が出ない物だったはずだ。
「だから魔術も使っていたと…?」
「その通りで御座います」
ますます意味が分からない。
「ではなぜ…お義兄様のような人が英雄に…?」
英雄とは国にとって最強の存在だ…。そう在らねばならない存在だ。
ではなぜ、彼のような人物が選ばれた…? なぜ戦っているのだ?
「それは、もうこの国は護り手が常に不足…いえ今は存在しないからです」
「……はい?」
何を言っているのだろうか。
確かにお義兄様はもう戦える状態ではないかも知れない。
元・五英雄も全員引退した…。
だが、新しく代替わりで就任した人物が五人もいるはずなのだ。
それに英雄がいなくたってこの国は…。
「この国は常に一部の強き者に従ってきました…。裏を返せばそれだけ英雄という存在に頼って、ここまで平和に生きながらえて来たのです…」
メリッサさんは急に何かを思い出したように語りだす。
「そのつけがついに、回ってきたのでしょう…。もうこの国は存続自体が危うい状態にあるのです」
「……その、冗談ですよね?」
返答は沈黙だ。
あまりにも突拍子もない事を言われた。普通なら信じないだろう。
だが、私は今の話を聞いて不安に駆られていた。
先日の襲撃の件があったからだ…。
後に分かった事だが、規模に対しての被害が大きすぎたのだ。
そのため、国と貴族は国民に突き上げを食らっている。
「……トマスはこの事を…お義兄様のお体の事もご存じなのですか?」
トマスは兄がいるから、これから家は大丈夫だ…などと言っていたが、どう見ても今の話を考慮したらそれ所ではない。そもそもだ、その兄が死にそうではないか。
「いいえ、ご存じではありません」
「――なぜ?」
「それは、前当主様と坊ちゃまのご意向で御座います」
トマスは知らなかったようだ。まあ知っていた上であの態度だったら、逆にどうかと思うが…。
「ではなぜ私にだけ、この事を?」
「…出来ればあなたには知っていてほしかったからです」
「……えっ?」
てっきり、『この事を知ったからには…!!』 みたいな展開になると私は予想していたので拍子抜けしてしまった。
「どういう、意味ですか?」
「それはいずれ分かるかと…」
ここまで言われて、はぐらかされてしまった。
「さて…あまり遅くなりますと勘ぐられますので…」
そして、言うだけ言って一方的に話を切ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……何か?」
私はそんな急な塩対応に一瞬怯みつつも、もう一つ聞いておきたい事があったのだ。
「この十年間、お義兄様は本当は何をしていたのですか?」
こうなると色々話が変わってくる。本当に療養していたのかすら怪しい。
メリッサさんはチラりと寝ているお義兄様の方を見た。
もしかしたら何か、口止めされているのかも知れない…。
そして暫しの沈黙の後で、こう答えた。
「坊ちゃまは…この十年間、残った部下を率いて戦っておられました」
「……??」
それは嘘だ。先ほど見た体では到底戦えるとは思えない。
しかも十年間も戦っていたら、どこかで噂になるはずである。
だが私は先日の魔物の襲撃で現れた彼の姿を思い出してしまった。
あの時の彼は変わらず英雄としての姿であったと。
「では、そろそろ」
「あっ、ちょっとまだ…」
まだ聞きたい事があったが、彼女はこれ以上は語るつもりはないといった状態だった。そして追い出されるように私は部屋を後にした。
「出来れば私が話したという事は伏せていただけると…」
それだけ言ってメリッサさんは立ち去ってしまった。
いつの間にか姿は闇に消え、見えなくなっていた。
そして私はそこに一人取り残された。
「えっと、すみません。意味が分からないのですが…」
私は目をそらしながら答えた。見るに堪えなかったのだ。
そもそも英雄かどうか聞いただけなのだが…?
「坊ちゃま…いえ、レオン様がほとんど寝ていらっしゃる、というお話は御存じですね」
「ええ、はい…」
「もし仮に、そのような人間がいたら体はどうなるでしょうか」
メリッサさんは彼の服を戻しながら、そう問いかける。
何が言いたいのだろうか…。
「まあ、端的に言えば筋力などは大幅に落ちるでしょう」
沈黙しているとその問いに続けて答えた。
ずっと寝ていればそうなると…。だが、あの体はその程度の物なのだろうか…。
「メア様は、魔術に関しては御存じですか?」
「えっ? 一応常識の範囲内では…」
魔術は技能とは別の物で技術の一種だ。
大昔に代替品として生まれたと言われているが、逆に技能の元になったなんて説もある。
後は一人一属性だけ適正があり、学ぼうと思えば誰でも一属性は習得可能という事。
そして…使いすぎると人体に影響が出るという、よく言われる迷信も私は語った。
そのため、一定の年齢になるまで魔術は原則として使用が禁止されていたりする。
「――魔術と言う物はいわば魔力…という物を使うとされていますが、実質使っているのは体その物、体力のような物なのです」
「は、はあ…」
――のだが、私はなぜか、メリッサさんから魔術の成り立ちのような物を突如教わった。
「そして未熟な体で無理やり魔術を行使し続ければ、それ相応の反動を受けます」
恐らく迷信についての話だろうが、そう言いながらお義兄様の方を見た。
「…? つまりこの体は魔術を無理に使ったからだと?」
「その通りで御座います」
なるほど…彼がこうなった理由は分かった、だが…。
「坊ちゃまの技能が戦闘…火力を出すのに向いていないのは御存じですか?」
「えっ? ええ、一応は」
あくまで国の公式発表だが…超強力ではあるが、それ自体は火力が出ない物だったはずだ。
「だから魔術も使っていたと…?」
「その通りで御座います」
ますます意味が分からない。
「ではなぜ…お義兄様のような人が英雄に…?」
英雄とは国にとって最強の存在だ…。そう在らねばならない存在だ。
ではなぜ、彼のような人物が選ばれた…? なぜ戦っているのだ?
「それは、もうこの国は護り手が常に不足…いえ今は存在しないからです」
「……はい?」
何を言っているのだろうか。
確かにお義兄様はもう戦える状態ではないかも知れない。
元・五英雄も全員引退した…。
だが、新しく代替わりで就任した人物が五人もいるはずなのだ。
それに英雄がいなくたってこの国は…。
「この国は常に一部の強き者に従ってきました…。裏を返せばそれだけ英雄という存在に頼って、ここまで平和に生きながらえて来たのです…」
メリッサさんは急に何かを思い出したように語りだす。
「そのつけがついに、回ってきたのでしょう…。もうこの国は存続自体が危うい状態にあるのです」
「……その、冗談ですよね?」
返答は沈黙だ。
あまりにも突拍子もない事を言われた。普通なら信じないだろう。
だが、私は今の話を聞いて不安に駆られていた。
先日の襲撃の件があったからだ…。
後に分かった事だが、規模に対しての被害が大きすぎたのだ。
そのため、国と貴族は国民に突き上げを食らっている。
「……トマスはこの事を…お義兄様のお体の事もご存じなのですか?」
トマスは兄がいるから、これから家は大丈夫だ…などと言っていたが、どう見ても今の話を考慮したらそれ所ではない。そもそもだ、その兄が死にそうではないか。
「いいえ、ご存じではありません」
「――なぜ?」
「それは、前当主様と坊ちゃまのご意向で御座います」
トマスは知らなかったようだ。まあ知っていた上であの態度だったら、逆にどうかと思うが…。
「ではなぜ私にだけ、この事を?」
「…出来ればあなたには知っていてほしかったからです」
「……えっ?」
てっきり、『この事を知ったからには…!!』 みたいな展開になると私は予想していたので拍子抜けしてしまった。
「どういう、意味ですか?」
「それはいずれ分かるかと…」
ここまで言われて、はぐらかされてしまった。
「さて…あまり遅くなりますと勘ぐられますので…」
そして、言うだけ言って一方的に話を切ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……何か?」
私はそんな急な塩対応に一瞬怯みつつも、もう一つ聞いておきたい事があったのだ。
「この十年間、お義兄様は本当は何をしていたのですか?」
こうなると色々話が変わってくる。本当に療養していたのかすら怪しい。
メリッサさんはチラりと寝ているお義兄様の方を見た。
もしかしたら何か、口止めされているのかも知れない…。
そして暫しの沈黙の後で、こう答えた。
「坊ちゃまは…この十年間、残った部下を率いて戦っておられました」
「……??」
それは嘘だ。先ほど見た体では到底戦えるとは思えない。
しかも十年間も戦っていたら、どこかで噂になるはずである。
だが私は先日の魔物の襲撃で現れた彼の姿を思い出してしまった。
あの時の彼は変わらず英雄としての姿であったと。
「では、そろそろ」
「あっ、ちょっとまだ…」
まだ聞きたい事があったが、彼女はこれ以上は語るつもりはないといった状態だった。そして追い出されるように私は部屋を後にした。
「出来れば私が話したという事は伏せていただけると…」
それだけ言ってメリッサさんは立ち去ってしまった。
いつの間にか姿は闇に消え、見えなくなっていた。
そして私はそこに一人取り残された。
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