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第16話 我儘娘と
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「夢、か……」
気持ちの良い目覚めとは言えなかった。
夢の内容は普通はあまり覚えていないというが、私はよく覚えている方だった。
そして、あまりいい夢ではなかった気がする。
隣を見るとサラはまだスヤスヤと寝ており、外を見ると日も登って間もない時間のようだった。
「今日も頑張らないとね……」
ここに来てまだ二日目なのだが、なんだか気が重かった。
だがそうもいってられない、新しい生活に早く慣れなければと思ったのだが――
「つ、疲れたわ……」
私は足を引きながら部屋に戻り、ベットに突っ伏した。時刻はまだ昼である。
足は痛いしなんだかつりそうだ。それに頭もくらくらとする。
何故こうなったかと言うと…朝からマナーの稽古が、みっちりとあったのだ…。
本来こういう物は時間をかけてゆっくりやる物なのだが、急ぐ理由があったのだ。
そう、一月後の結婚式である…。
この国では他国と違い、あまりマナーにはうるさくない方だ。
それは、貴族と平民に大きく分かれてはいるが、それぞれ内分けでの階級や爵位制度などが廃止されていたり、貴族と平民の結婚についても禁止されてないなど、他国と大きく異なるのが理由だ。
当時は同じ平民でも扱いに差があったようだが、同じ民として協力し国を支えるという名目上、廃止されたらしい。
とはいえ階級自体に差はないが、ここ最近では平民内での貧富の差が顕著になり、貴族間でも戦力差などで結局序列の様な物が発生しているのが現状なのだが…。
それはさておき、あくまで他国と比較して楽な方であって、マナー自体はどこの国にだって存在するものだ…。
私は一般常識で、ある程度は知っているからと高を括っていたのだが、そううまくはいかなった…。
主に、所作が駄目だったのだ…まったく知らない事ばかりだった。
その上とても細かく意識してやろうとしても、所作というものは難しい物だった。
「ふ…うぅ…」
サラもふらふらとしながら部屋にやって来て、同じように隣に突っ伏した。
自分の部屋がちゃんと用意されているはずなのだが…。
「こんな事、やる必要あるの…?」
サラはぐったりとしながら泣き言を言っていた。
貴族になりがっていたが、どうやらマナーは別物のようだ。
ちなみにだが午後もマナーのレッスンはある。必要な事とは言え、今から憂鬱だ。
「――はっ! そうだ!」
突如何かを思い出したかのように、サラはガバっと顔を上げた。
「今ならおじ様起きてるかも!」
「へっ…?」
そしてそんな事を言うと、ベットから飛び起きて部屋を飛び出していってしまった。
「ちょ、ちょっと? 待ちなさい! サッ…あっ…」
私は急いで追いかけようとしたが…足を痛めていたのを忘れていた。
思わず躓いて倒れそうになり、その間に見失ってしまった。
「もう…! あの子ったら!」
まったく…サラはお義兄様の事となるとこれだ…。
そして昨日の事をふと思い出した。
あまりあの人に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
私は痛む足を引きずりながら、急ぎ娘の後を追う事になった。
のだが…。
「はぁ…一体どこに行ったのかしら…」
とりあえずお義兄様の部屋に行ったのだが、誰もいないようだった。
屋敷は広い。そのうえ、まだ全ての部屋を案内はしてもらってなかった。
そもそも彼が起きていたとして屋敷内に必ずいるとは限らないのだ。
誰かに居場所を聞こうにも使用人は少ないせいか、すぐに見当たらなかった…。
面倒だが近くの部屋から探して行くしかないと思った時――かすかに声が聞こえて来た。
私は声のする方へ歩みを進めていく、すると楽しそうな話声が聞こえて来た。
「――これは?」
「うん? これはね…」
扉が半開きの部屋から聞こえているようで、私はそこを覗いてみる事にした。
するとそこには、お義兄様の膝の上にのって楽し気に話しているサラが見えた。
「……サラ?」
「…えっ? ママも来たの?」
来ては行けなかったのだろうか…。一体何をしているのかと辺りを見ると、机の上には煌びやかな貴金属や宝石が、所せましに置かれていた。
――本当に何してるのかしら…。
「ほら、サラ。お義兄様のご迷惑になるでしょ、部屋に戻るわよ」
ぱっと見で何をしているかさっぱりだったが、あまりお義兄様の邪魔をしてはいけないだろう。そう思い、娘を部屋に連れ戻そうとする。
「えっ…? やっ!」
――ええっ!?
ま、まさか反抗されるとは思わなかった…。
そのため一瞬面をくらってしまう。
サラは素直ないい子だったはずなのだが…。
「ほ、ほら、我儘言わないの。お義兄様は忙しい方なんだから…」
「そんな事ないもん! ね!?」
「いやまあ、今はそうだね…」
サラは背中を擦り付けるようにして、お義兄様に甘えている。
そしてそれに対して彼は…特に咎める事もなかった。
…何故だろうか。私はそんな光景を見ていると無性に腹が立ってきた…。
お義兄様は国を守るという大事な仕事があるのだ…我儘を言ってはいけない。
それに彼も彼だ…何故断らないのだ…。
昨日の事があったからかは分からないが、そう思ったのだ。
「ほら…邪魔になるから、いいから行くわよ!」
私はサラの手を取り、強引に立ち去ろうとしたのだが…。
「むー! 邪魔してないもん! 今ママの宝石一緒に選んでるんだもん!!」
「…えっ?」
「えっ? ちょ、ちょっとサラちゃん…」
「――あっ!」
お義兄様は少し慌てており、サラはしまったという顔をして口に手を当てている。
気持ちの良い目覚めとは言えなかった。
夢の内容は普通はあまり覚えていないというが、私はよく覚えている方だった。
そして、あまりいい夢ではなかった気がする。
隣を見るとサラはまだスヤスヤと寝ており、外を見ると日も登って間もない時間のようだった。
「今日も頑張らないとね……」
ここに来てまだ二日目なのだが、なんだか気が重かった。
だがそうもいってられない、新しい生活に早く慣れなければと思ったのだが――
「つ、疲れたわ……」
私は足を引きながら部屋に戻り、ベットに突っ伏した。時刻はまだ昼である。
足は痛いしなんだかつりそうだ。それに頭もくらくらとする。
何故こうなったかと言うと…朝からマナーの稽古が、みっちりとあったのだ…。
本来こういう物は時間をかけてゆっくりやる物なのだが、急ぐ理由があったのだ。
そう、一月後の結婚式である…。
この国では他国と違い、あまりマナーにはうるさくない方だ。
それは、貴族と平民に大きく分かれてはいるが、それぞれ内分けでの階級や爵位制度などが廃止されていたり、貴族と平民の結婚についても禁止されてないなど、他国と大きく異なるのが理由だ。
当時は同じ平民でも扱いに差があったようだが、同じ民として協力し国を支えるという名目上、廃止されたらしい。
とはいえ階級自体に差はないが、ここ最近では平民内での貧富の差が顕著になり、貴族間でも戦力差などで結局序列の様な物が発生しているのが現状なのだが…。
それはさておき、あくまで他国と比較して楽な方であって、マナー自体はどこの国にだって存在するものだ…。
私は一般常識で、ある程度は知っているからと高を括っていたのだが、そううまくはいかなった…。
主に、所作が駄目だったのだ…まったく知らない事ばかりだった。
その上とても細かく意識してやろうとしても、所作というものは難しい物だった。
「ふ…うぅ…」
サラもふらふらとしながら部屋にやって来て、同じように隣に突っ伏した。
自分の部屋がちゃんと用意されているはずなのだが…。
「こんな事、やる必要あるの…?」
サラはぐったりとしながら泣き言を言っていた。
貴族になりがっていたが、どうやらマナーは別物のようだ。
ちなみにだが午後もマナーのレッスンはある。必要な事とは言え、今から憂鬱だ。
「――はっ! そうだ!」
突如何かを思い出したかのように、サラはガバっと顔を上げた。
「今ならおじ様起きてるかも!」
「へっ…?」
そしてそんな事を言うと、ベットから飛び起きて部屋を飛び出していってしまった。
「ちょ、ちょっと? 待ちなさい! サッ…あっ…」
私は急いで追いかけようとしたが…足を痛めていたのを忘れていた。
思わず躓いて倒れそうになり、その間に見失ってしまった。
「もう…! あの子ったら!」
まったく…サラはお義兄様の事となるとこれだ…。
そして昨日の事をふと思い出した。
あまりあの人に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
私は痛む足を引きずりながら、急ぎ娘の後を追う事になった。
のだが…。
「はぁ…一体どこに行ったのかしら…」
とりあえずお義兄様の部屋に行ったのだが、誰もいないようだった。
屋敷は広い。そのうえ、まだ全ての部屋を案内はしてもらってなかった。
そもそも彼が起きていたとして屋敷内に必ずいるとは限らないのだ。
誰かに居場所を聞こうにも使用人は少ないせいか、すぐに見当たらなかった…。
面倒だが近くの部屋から探して行くしかないと思った時――かすかに声が聞こえて来た。
私は声のする方へ歩みを進めていく、すると楽しそうな話声が聞こえて来た。
「――これは?」
「うん? これはね…」
扉が半開きの部屋から聞こえているようで、私はそこを覗いてみる事にした。
するとそこには、お義兄様の膝の上にのって楽し気に話しているサラが見えた。
「……サラ?」
「…えっ? ママも来たの?」
来ては行けなかったのだろうか…。一体何をしているのかと辺りを見ると、机の上には煌びやかな貴金属や宝石が、所せましに置かれていた。
――本当に何してるのかしら…。
「ほら、サラ。お義兄様のご迷惑になるでしょ、部屋に戻るわよ」
ぱっと見で何をしているかさっぱりだったが、あまりお義兄様の邪魔をしてはいけないだろう。そう思い、娘を部屋に連れ戻そうとする。
「えっ…? やっ!」
――ええっ!?
ま、まさか反抗されるとは思わなかった…。
そのため一瞬面をくらってしまう。
サラは素直ないい子だったはずなのだが…。
「ほ、ほら、我儘言わないの。お義兄様は忙しい方なんだから…」
「そんな事ないもん! ね!?」
「いやまあ、今はそうだね…」
サラは背中を擦り付けるようにして、お義兄様に甘えている。
そしてそれに対して彼は…特に咎める事もなかった。
…何故だろうか。私はそんな光景を見ていると無性に腹が立ってきた…。
お義兄様は国を守るという大事な仕事があるのだ…我儘を言ってはいけない。
それに彼も彼だ…何故断らないのだ…。
昨日の事があったからかは分からないが、そう思ったのだ。
「ほら…邪魔になるから、いいから行くわよ!」
私はサラの手を取り、強引に立ち去ろうとしたのだが…。
「むー! 邪魔してないもん! 今ママの宝石一緒に選んでるんだもん!!」
「…えっ?」
「えっ? ちょ、ちょっとサラちゃん…」
「――あっ!」
お義兄様は少し慌てており、サラはしまったという顔をして口に手を当てている。
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