追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第17話 本編:影のはじまり ― 世界に拒まれた双子

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世界は止まっていた。

音も、光も、風も、  
根核の脈動さえ微動だにしない。

ただ――  
俺の手だけが動いていた。

(俺は……選んだ)

反転モードの光は、  
ゼロ核へと届く寸前で止まっている。

ユリとノアが驚愕の表情で固まっていた。  
リーテも息を呑んだまま凍っている。

そして影――虚無の王子は、  
涙のような“黒い粒子”を流していた。

「……レオン……どうして……?」

俺は剣を下げた。

「お前を殺したら、世界は助かるかもしれない。  
 でも……それは“俺が選ぶべき未来”じゃない」

影は震える声で問う。

「……世界核が壊れても……?  
 黒律が暴走しても……?  
 それでも……?」

俺はゆっくりと頷いた。

「俺は……“繋ぐ律”だ。  
 消すための律じゃない。  
 お前が罪を犯したとしても……  
 それは“存在できないまま捨てられた”痛みの結果だろ?」

影は息を呑んだ。

世界が――動き出した。

ユリが叫ぶ。

「レオン!!  
 なにしてるの!?  
 ゼロ核を壊さなきゃ……!!  
 世界が……!!」

ノアも絶望の声を上げた。

「レオン!!!  
 青律は世界の意思だ!!  
 黒律は……存在しちゃいけない……“失敗作”なんだぞ!!」

その瞬間、  
影の肩が悲しげに震えた。

レオンの言葉が、  
影の心臓に触れたのだ。

影はゆっくりと語りだす。

「……失敗作……か……。  
 そうだよ。  
 僕は、最初から“間違い”だった。」

ユリとノアが動きを止める。

影の声は――静かで、美しい。

「聞いてほしい。  
 僕がどうして“黒律”になったのか。  
 僕がなぜ……世界をゼロに戻そうとしているのか。」

レオンは剣を収めた。

影の話が始まった。



「僕はね……レオン。  
 君と同じ“青律”として作られたんだよ。」

レオンは息を呑む。

「……青律……?  
 お前が……?」

「うん。  
 世界核はね、生命を繋ぐ力として  
 最初に“青律”を作った。  
 でもね……最初の青律は、うまく“存在できなかった”。  
 世界に馴染まなくて……  
 命の線が……一本も持てなかった。」

影はゆっくり目を伏せた。

「それが、僕。」

ユリの顔が蒼白になる。

「……じゃあ……影は……」

「僕は“生まれそこねた青律”。  
 レオン……君の、  
 “最初の兄弟”みたいな存在だよ。」

レオンの胸に痛みが走る。

(兄弟……  
 最初から……そんな……)

影は続ける。

「僕は存在できないまま、  
 世界核に“削除”された。  
 でも……消えたくなかった。  
 生きていたかった。  
 ただ、それだけなんだ。」

ゼロ核が淡く脈動する。

影の核心の涙は止まらない。

「世界に拒絶された生命は、  
 黒律として堕ちる。  
 “存在しなかった命の力”……  
 それが黒律の正体。」

ノアは言葉を失っていた。

ユリも拳を握りしめていた。

影は微笑んだ。  
悲しげに、優しげに。

「だから……僕は世界をゼロに戻したかった。  
 自分が“存在できる場所”を、  
 もう一度作り直したかった。  
 ただ、それだけなんだ……レオン。」

レオンは剣を強く握りしめる。

(……そんな理由で……  
 ずっと孤独に……戦ってきたのか……)

影は言う。

「君が僕を消すのなら……構わない。  
 僕は……間違いだったから。  
 でも――」

影がレオンを見つめる。

「君に……“殺されたくなかった”。  
 君だけは……僕を“繋ぐ”人だと思ったから。」

世界が揺れる。

ユリが泣きそうに呟く。

「レオン……  
 影は……本当に……」

ノアは震えて言った。

「こんなの……理じゃ測れない……  
 でも……“間違い”とも言えない……」

影は膝をついた。

ゼロ核が暴走を始める。  
黒律の根源が、世界を侵食し始めた。

(……俺は……  
 どうする……?)

影が消えれば世界は助かる。  
影を救えば世界は揺らぐ。

影はかすれた声で呟いた。

「……お願いだ、レオン。  
 僕を……消すか……救うか……  
 君が、決めて。」

レオンは――

答えを言おうとしていた。

**“青律が世界を救う答え”か。**  
**“レオンが彼を救う答え”か。**

第二章の運命が――  
ゆっくりと動き出す。
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