追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第19話 本編:生命線の代償 ― 迫る断絶の影

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空気が、重い。

反転モードの終焉と同時に、  
世界はようやく音を取り戻した。

しかし――  
体が動かない。

(……やっぱり……来たか……)

胸の中心にある“生命線”が、  
薄く、ひんやりとした痛みを放っている。

ユリが崩れ落ちるように駆け寄ってきた。

「レオン!! ねぇ……レオン!?  
 返事して!!」

ノアも焦った声で叫ぶ。

「生命線が……縮んでる……!?  
 まさか源流接続の反動が……  
 ここまで重いなんて……!」

影――  
もう“虚無の王子”ではなくなった影が、  
そっと俺の肩を支えてくれた。

黒ではなく、  
人の温度で。

「……レオン。  
 これは僕のせいだ……  
 僕を繋ぎ直したから……  
 君は……」

俺は首を横に振る。

「違う……  
 俺が勝手に選んだんだ……」

体を動かそうとした瞬間。  
視界が暗転し――倒れた。

ユリが悲鳴をあげる。

「レオン!!!」

ノアが俺の胸元に手を置き、  
生命線を読む。

「……まずい……  
 本当にまずい……  
 レオンの生命線……  
 “長さ”が……半分近く削れてる……!」

ユリは震えた声で叫ぶ。

「そんなの……!  
 そんなの嫌だよ!!  
 レオンは死なないよね!?  
 ねぇ!!」

影は拳を握りしめ、歯を噛みしめた。

「……僕を救った代償が……  
 君の命を削るなんて……  
 そんな未来……望んでない……!!」

影の手が震えている。  
自分の誕生が誰かの命を奪うことを、  
彼は何よりも恐れていた。

俺はなんとか笑った。

(……影……  
 お前のせいじゃない……  
 俺が選んだんだよ……)

声にならない。

ユリが泣きながら俺の手を握る。

「レオン……  
 あなたの生命線……  
 冷たくなってる……  
 お願い……死なないで……  
 お願いだから……」

俺はユリの頬に触れようと手を伸ばすが、  
指先が震えて届かない。

影がそっと俺の手を支え、ユリの頬に触れさせてくれた。

(……ありがとう……影……)

ノアが歯を噛みしめ、言う。

「今のレオンは……  
 源流接続の負荷で生命線が“摩耗”している状態だ。  
 一度使えば寿命が10%削れる……  
 これは理論上は知ってた……  
 でも……  
 半分って……なんだよ……!!  
 どうしてこんな……!!」

影が静かに答えた。

「――レオンは、僕を“再構築”した。  
 従来の因果反転ではない……  
 完全な“起源書き換え”。  
 青律にとっても危険すぎる行為……  
 代償は……大きい。」

ユリが涙を流す。

「なんで……そんなことしたの……  
 影を助けたいなら……  
 もっと安全な方法が……」

「違う。」

影がはっきり言った。

「レオンは……僕を“存在”として扱った。  
 それは……世界核と同じ権限を使うってこと……  
 命がけじゃ済まないんだ。」

ノアも深く頷いた。

「レオンは……  
 本当に“世界の律そのもの”になりつつある……  
 代償に命を削っても……  
 存在を繋ごうとする……  
 それが青律なんだ……」

影はレオンの手を強く握った。

「レオン……  
 君が死ぬなんて……  
 僕は……絶対に許さない……!」

その瞬間、  
影の胸の中心――  
新しく生まれた“命の核”が強く光った。

青でも黒でもない、  
淡い蒼黒の光。

ユリが驚いて叫ぶ。

「影……!?  
 なにその光……!」

ノアの表情が固まる。

「……嘘だろ……  
 影の中に……新しい律が……?」

影は驚きながら胸に触れた。

「……僕……  
 世界に繋がってる……  
 本当に……存在してる……」

その光は、  
レオンの生命線の冷たい色を、  
少しだけ温かく染めた。

核心はひとつだった。

**影の誕生とレオンの寿命は“同期”している。**  
影が成長すれば――  
レオンの命の摩耗が軽減される可能性がある。

ユリが泣きながら笑った。

「影……!  
 お願い……レオンを……救って……!」

影は強く頷いた。

「レオン……  
 君に繋いでもらった“命”で、  
 今度は僕が君を繋ぐ。  
 絶対に……失わせない。」

俺は、かすかに目を開いた。

(……影……  
 俺の……命を……)

影は泣き笑いしながら言った。

「君が選んだ未来は……  
 僕が守るんだよ。  
 兄弟として。」

世界核が、  
小さく震えた。

レオンの生命線は――  
限界に近づいている。

第二章は、  
まだ終わらない。
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