異世界で傭兵始めました

ミストレ

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2章 傭兵団拡張編

8話

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【本文】





 カオルは黒魔法に含まれる幻惑魔法を使い、その場にいるかのように見せていた。本人はと言うと転移でディグル領の拠点に戻り、フィルを救出するた為の準備をしていた。

 アテナやアイギスらゴーレムを呼び作戦を立てていた。


 「急に呼んですまないな」


 「いえ、マスターがお呼びならすぐにかけつけぞ」

 「主人の命が第一優先ゆえ、気にせず言ってくだされ」

 「二人ともありがとう。では、本題に移ろう」


 まず、僕は商会ギルドでの事をゴーレム達に話した。


 「マスター、フィル様らは魔の森に行くとおっしゃられておりました」

 「フィル殿の仲間も戻られておりません」

 「そうか・・・」


 アテナやアイギスは他のゴーレムに確認を始めた。その間、僕は空間地図マップを使い魔の森を確認していた。モンスターなどの位置は既に放った偵察ゴーレムのお陰で丸わかりだ。
 しばらく観察していると一体のゴーレムが洞窟を見つけ、足跡がその中に続いているのを見つけた。


 「アテナ!アイギス!」

 「マスター、何事か!」

 「如何致しましたか?」

 「フィル達の居場所が分かった。これからお前達にはそこに向かってもらう。そろそろ幻惑魔法も溶けてしまうから僕は戻る。流石に幻惑での対応も限界だ。作戦だけ言うから後はお前達にやってもらう」

 「任せておけマスター」

 「御意」


 僕はアテナやアイギス、ゴーレムの部隊長に作戦を伝え、急いで転移で戻った。



 「いいかお前達!この作戦は決して失敗は許されないぞ!自分の体を失ってもマスターの仲間を守り、救出するぞ!」


 「「「「「おおおおぉぉぉぉーーーー」」」」」


 カオルの知らぬ所でそれは行われ、今ならドラゴンでも倒してきそうな勢いであった。




________________________




 転移で会議室に戻るとガルドは顔を真っ赤にさせていた。まぁ、その理由は置いといた小型ゴーレムの情報から理解している。


 「小僧!いい加減にしろ!儂をどこまでコケにすれば気がすむんだ!」


 「僕はどう救出するかを考えていたんです。あなたこそ邪魔をするのはやめて下さい」


 「ぐぬぬぬー!そんなことは時間の無駄だ!お前の所の子供達を助けたければ、儂の条件をのむしかないんじゃよ」


 自分が優位なのを思い出したのかニタニタ顔を向けてきた。僕はそんなガルドの事は無視して、セルベスの方を向き僕の顔から察したのかただ頷いた。


 「ガルド、お前は勘違いをしている」

 「なに?」

 
 先程までのニタニタ顔をやめ、僕を睨みつけてきた。


 「フィル達を捕まえて言う事を聞かせれるのは僕だけであって、商会ギルド本部長であるセルベスには拘束力は持たない」

 「けっ!そんなことか。甘いな小僧、其奴にとってもお前の子供達は有効なんじゃよ。なんせ、商会ギルドのメンバーが、それもギルド長である者が契約相手に無礼を働いたと世に知られれば商会ギルドの名は地に落ちるからの」

 「それはお前の戯言が表に出ればの話だろ」


 僕は挑発するかのようにニヤッと笑ってみせた。案の定、ガルドは僕の挑発にのった。


 「ほほう。小僧、お前の仲間が儂の手元にあるのにどうしようと言うんだ?」

 「それは、お前の手元にあったからこそ効力を発揮していた。けれど、それがもう手元にないとしたらどうだ?」

 「ふん!何をたわけた事を。手始めに小娘でも可愛がってやろうか?可愛がるなら貴様の前で可愛がってやろう」





 ガルドがそんな事を言った時だった。


 「ガルドの旦那あの女共すぐ壊れちまったぜ。代わりを用意してくんないですか?」

 「これだから、人間の女はダメだって言ったろ?」


 会議室にも関わらず、場違いな奴らが入って来た。ドラゴニュートの男が二人、恐らく僕の元にいるドラゴニュート達が言ってた裏切り者だろう。


 「貴様ら!儂の指示があるまで部屋から出るなと言ったのを覚えておらんのか!」

 「でも、女が・・・」

 「大人しくする代わりにと言う事で女を与えたと言うのに、その事で来られては元も子もないわ!」

 「だから言っただろ?」

 「すまねーなアル」

 「構わないよ。イルにはいつも迷惑をかけられているからね」

 「貴様ら!儂の話を聞いておるのか!」



 ガルドとアル、イルと名乗るドラゴニュート達の会話は静かな会議室内に響いていた。



 「くそっ!力があるから引き入れたが飛んだじゃじゃ馬じゃったわい。何か、気晴らしを・・・」


 ガルドは一人ぶつぶつと呟きながら僕の方を見るとニヤついた。


 「おい、貴様ら!あの小僧を可愛がるんじゃ」  

 「ん?あんな奴をボコればいいんですか?」

 「そうじゃ、分かったらとっととやれ!」

 「相変わらず、ガルドさんは命令は突然ですね。アルやりますよ」

 「あいよ、イル」



 二人のドラゴニュートは僕元に一歩また一歩と近づいて来た。その時の二人の表情はガルドのように歪んでいた。そんな二人の表情を見て裏切り者の二人だと確信した。


 「あんたには恨みはないがガルドの旦那の命令だ。恨むなよ」

 「アル、間違っても殺すことの無いように」

 「んなぁことわかってら」

 「本当に理解しているのやら」


 この時、カオルは無表情のまま物を見るかのような目線で二人を見ていた。そんな目線にイルが反応した。


 「その目は何ですか。少しイラっとさせますね。アル先にやらせてもらいますよ」


 そう言ってイルは素早く移動しカオルの目の前に出て、カオルは殴り飛ばされぶつかった壁は大きなひび割れを作った。
 飛ばされたカオルは壁にぶつかり床に倒れた。その様子に周りにいたギルド長達は息を呑んだ。


 「セルベスや他の者達には手は出さん。儂に逆らわなければなら」


 ガルドの言葉に互いを見合うギルド長らにガルドは高笑いを上げていた。


 「ガルドの旦那の気分も良いみたいだし、こっちも手早く終わらせるぞイル」

 「ふん、あとはお前がやってもいいぞ。俺は今ので満足した」

 「なら、あとは俺にやらせてもらうぞ!!」


 そう言ってアルはカオルが倒れているところ目掛けて走り殴りかかった。

 セルベスはただ耐えていた。苦汁を飲まされてるかのような表情をしながら、手を強く握り締めながら。

 アルの拳がカオルに当たり床は割れ、カオルの頭は床下に消えた。



 その後も、サンドバッグ状態は続いた。顔を殴られ、体を殴られとカオルの姿は見るも無残な姿へと変わっていた。

 そんなカオルの姿にガルドは再び高笑いを上げた。


 「あはははは!儂に逆らうからじゃ!どうだギルド長達よ、儂に付くか決めたかね?」



 周りのギルド長達は、今にも頷いてしまいそうになっていたが、それを防いだ男がいた。


 「戯けを抜かすなガルド。お前のような奴が商会ギルド本部長に着くくらいなら儂の権限を持って解散させてくれるわ!」

 「セルベス、貴様はまだ儂の邪魔をするつもりか?なら、仕方がないな。イルやれ」


 ガルドの命令を受けてイルはセルベスへと近づいて行った。
 セルベスがいくらガタイが良いからと言ってもドラゴニュートの攻撃をまともに受ければただでは済まない。それ故にセルベスの額から汗が流れた。


 「おい、爺さん覚悟はいいな」


 イルは腕を上げ、振り下ろそうとした時だった。




 「がああああぁぁぁーーーーー!!」


 アルが叫び声を上げながら壁へと吹き飛び、カオルが壁にぶつかった時よりも大きなひび割れを作った。

 イルは慌てて振り向き構えたが、その時にはカオルが目の前にいた。


 「なっ!お前!」

 「・・・・・・・」


 イルは慌ててガードしようとするも間に合わず、アルと同じように殴り飛ばされた。
 

 「あ、アル、生きてっか」

 「あ、あたり、ま、えだ」


 先程までとは違いドラゴニュートの二人は数秒の間だけでボロボロになっていた。


 「こ、小僧!反撃したら小娘らの命はないぞ!!」


 ガルドは顔を赤くしながら言い放った。


 「すればいいだろう。その人質が本当にお前の所にいるならな」


 カオルの言葉にガルド唖然とした。それなりの数と手練れを人質を奪われないように雇った。それ故に余裕な態度でいたが、ガルドの頭の中では嫌な予感しかしていなかった。

 先程までただ殴られていたカオルが反撃してきた。それにあの発言となると・・・。

 ガルドは慌てて懐から筒状の物を取り出し、それを握ったまま動かなくなった。


 そんなガルドを見ていたカオルに隙と見てアルとイルが殴りかかってきた。アルのは躱し、イルの拳は受け止め、掴んだままアルに向けて投げ飛ばした。イルはアルを巻き込んで壁へと飛ばされ、床に倒れた。


 「ぐぅっ!俺らが人間なんかにそれもひとりになんて」

 「余計な事は考えるなアル!今は・・・」


 言ってる途中で、バキッ!音を立てながら頭を床下へとめり込ませていた。


 「ひっ!」


 その光景を目にしたアルは戦意を喪失していた。余裕だと思って多分反動が大きかった。


 「待ってくれ!俺はもう何もしなねぇ。だから、もうやめてくれ!」


 アルはガタガタと震えながら声を振り絞り言った。
 そんなアルにカオルは冷たく言い放った。


 「お前はそう言ってた人をどうした?笑って続けたんだろ?なら、お前もやられてもしょうがないな。それに、お前には沢山可愛がってもらった分かえさないとな」

 「待ってくれ!今度からはちゃ・・・・」


 アルの言葉を最後まで聞かぬまま、カオルはアルをただ殴りただ殴り、アルの体から床へと血は滴り、小さな血溜まりを作っていた。


 「・・・・・・・」
 

 殴られている間、「やめて」、「許して」と言っていたアルも今では静かになり、床に横たわっていた。



 








【後文】


 お久しぶりです。この章を終わらせてから休載しようとしてましたが、既に休載状態になっていました。

 ゴールデンウィークに入り、休みになったので少し書きました。
 なんとか、ゴールデンウィーク中にこの章を終わらせたいです。

 誤字脱字などがありましたら感想からよろしくお願いします。



 投稿してない間、読んで下さった方、新規登録や登録し続けてくれた方、ありがとうございます。

 これからも書き続ける予定ですので、今後ともよろしくお願いします。





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