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第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第二話 前説 はよ付き合えと思ったお知らせ

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 長谷川は今日もレアスナタを遊びに施設へと向かっていた。
 妹のあゆさのお願いである『荒野原さんと兄貴と遊びたい』を叶える為に。

「妹のわがままに付き合ってもらって悪いね」
「私は構わないけど」
「ま、大人になると時間って合わなくなるから、遊べるうちに遊んだ方がいいかなとね」
「妹想いのいいお兄ちゃんね」

 そんな会話をしながら歩いていると、進行方向の横断歩道が赤になっていて2人は止まる。

「あ、そうだ」
「ん?」
「知ってるかもしれないけどさ」

 横断歩道が青になった。

「私、風月も持ちキャラなんだよね」

 荒野原はそういうと歩き始める、そよ風が長谷川の横を通り過ぎ歩き始める。

「ああ、知ってるよ」

 長谷川は少し苦笑いをして荒野原に歩くスピードを合わせる。

「知ってたか、自前で声を変えていたんだが、くそ」
「てか、フレンド一覧でわかるよ? プレイヤーID一緒じゃん」
「くっ、盲点だったか」

 荒野原はワザとらしく苦悩している、バレているのはわかっていたようだ。

「隠しておきたかったの?」
「いや? 隠す利点が無いじゃん」
「まあそうだよな」
「私はどちらか言えば風月が性格近いんだよね」
「知ってるよ、一緒に飲んでるとなんとなく感じる」
「そっか、なら長谷川君の前でなら素で大丈夫だね」

 荒野原はうんうんと頷いている。

「おいおい、なんだなんだ、重たい過去とか止めてくれよ」
「いや、そんなんじゃないよ? 小学校の時周りからうるさいって言われてショックで大人しくなっただけ」
「おおう……」

 長谷川は反応に困っている顔をした。

「で、中学くらいでレアスナタを知ってね? ここでなら本当の私を表現出来ると奮闘したのよ! いや~リアル中二病って怖いね、その時の私は表ではクールに! 裏では活発な少女! とか思ってたよ」

 たたみかけるように話し出す荒野原の顔は笑っていて楽しそうだ。

「暗い話なのか笑い話なのかわからないな」
「でまあ、色々とあって今の私があるんだけど」
「ふむ」

 そんな話をしながら歩いていると2人の視界に何時もレアスナタを遊んでいる施設が見えてくる。

「長谷川君には少し気を許せるかなって」
「それは俺もだな、俺と波長があうなら女性は珍しい」

 施設目の前の横断歩道が赤になったので2人は止まった。

「おお~私はレア物ですな?」
「人との信頼は価値がつけられないものさ」
「ヒュ~かっこいい~」

 長谷川縁っぽい事を言ってニヤリと笑った。
 口笛を吹いて両手で指差しをする荒野原。

「こら、付き合ってもいない未来のバカップル共、道端で何をイチャイチャしとるんじゃ」
「うお、お前何時の間に?」

 長谷川が振り返ると妹のあゆさがジト目をしながら見上げていた。

「何時の間にじゃないわ、白昼堂々と2人の世界に入るな」
「おはようございます、あゆさちゃん」
「これはご丁寧に、おはようございます荒野原さん」
「で、長谷川君、今のはイチャイチャに入るの?」
「入るらしいな、妹の基準じゃ」

 2人揃って首を傾げてあゆさを見ていた。

「お前ら早く付き合ってしまえ、どう見ても相思相愛だろ」

 あゆさは面倒くさそうにため息をする。

「だって長谷川君」
「お互いをもっと知ってからだな、じゃないと許せる範囲が狭くなる」
「あ、それはわかる、ダメな部分をある程度知ってないとね」

 2人は端から見れば付き合ってるようにしか見えないやり取りをしていた。

「現実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ、私は何を見せられているのだろうか」

 あゆさは疲れた顔をしながら横断歩道の信号を見る、まだ赤のようだ。

「ってか兄貴このさいだから言うけどさ、思わせぶりな態度だけは止めてな? 荒野原さんに失礼だから」
「俺は器用じゃないから好意を持ってる人には節度を守って好意は伝えてるつもりだが……迷惑だったか?」
「嫌じゃないから私は的にオッケー」
「まあ……一方的なアプローチにならんようにな、兄貴」

 流石に踏み込み過ぎたと思ったのか、あゆさはやってしまったと思っているような顔をしていた。

「それは大丈夫あゆさちゃん」
「私、好きでもない人と2人っきりで飲みに行かないから」
「お、そりゃ初めて聞いたな」
「初めて言ったもの」
「もうやだ! 早く付き合って! この付き合ってないバカップル!」

 あゆさは恥ずかしいのか呆れているのか、両手で顔を隠した。

「このやり取りって付き合ってないから面白いよな?」
「そうね、付き合ってやってたらただの迷惑なバカップル」
「謎の持論で自覚を持つなバカップル共、ほれ行くぞ」

 横断歩道が青になりあゆさは我先にと歩いていく。

「あらら、怒られてしまった」
「よし、後で袖の下を渡して許してもらおう」

 2人は早歩きをしているあゆさを駆け足で追いかけた。
 施設に入った3人は受付を済ませ、それぞれ割り振られたプレイルームへ。
 長谷川は荷物を置いて、シートベルトとゴーグルを正しく装着する。

「行くぜ! レアスナタの世界へ!」

 ゴーグル越しに見えるスタートボタンを長谷川が押す、この瞬間から長谷川ではなく縁になるのだ。
 縁はログインすると辺りを見回した。

「さて、2人は何処かな」
「兄貴、こっちこっち」

 声のした方を振り返ると絆とスファーリアが居た。

「よし集まった、今日は絆ちゃんのシナリオをするんだよね?」
「そうだよ、あ、流血表現とかちょいと大人な演出とかあるから苦手ならオフにしといてね」
 
 レアスナタには流血表現や性的な表現が含まれる場合がある、流血表現は千差万別で、オプションからギャグやシリアス等々選べる。
 性的表現は過度な物はロール中であろうが即運営が仲介に入り、そのプレイヤーに運営は説明を求め表現の緩和を要求する。
 また年齢や健康状態等を考慮してシナリオ参加不可等もある。

「私は大丈夫」
「俺も平気だ」
「ほいさ、これが私のシナリオよ~送信」

 絆はメニューを開いて操作をする。

 絆ちゃん発案シナリオ公式イベント参加編。
 イズール帝国にもう遅い警告へ。
 イズール帝国は絆が幼少の頃から絆を殺そうと奮闘してきた国。
 絆はその国に最後の警告へと向かうが……?
 皇帝に警告しに向かえ!

「確認オッケー? 開始するよ?」

 絆はメニューを開きながら縁とスファーリアを見た。

「おう」
「うん」
「んじゃスタート!」

 絆はメニューを操作し終わって開始を告げるベルを鳴らすと、3人は光に包まれて消えた。
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