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ひとつめ【殺人事件の被害者霊とのお話】
しおりを挟む数年前、自宅のとても近所で殺人事件があった。その時のお話。
難波しぶ子は、普通に平凡に暮らす科学者でも巫女でもない一般人だ。
ただ、しぶ子は小さい頃から、夢で色々メッセージを受け取る体質で、概ね夢見から数日後に、りあるに何かが起きる事が多かった。
「夢見が悪すぎるな……。」
その日も同じ内容の夢を、連日見続けていたしぶ子は身構えはじめていた。
夢の内容が、人が殺される場面や、時刻のアップの場面、あと、電車に乗り遠くへ行けと伝えてくる内容だったからだった。
「怖いな。。」
さすがにしぶ子は過去の経験から、これはかなり危険な事が今から起きるのかもしれないと思ったものの、それがいつ?どこで?何が?なわけで、どうする事も出来なかった。
それに、普通に仕事が忙しく、遠くになんて行ける状態ではない。
でも、夢でこんな何もかもほったらかしにして、この場所を離れろとメッセージを送ってくる事が
過去でも数回しかなく、今から自分の身に何かが起きる、それも自分が下手すると巻き込まれる恐れがある事だけはわかった。
「地震かしら・・、はたまた通り魔?事故・・・・?あぁ・・・・気が滅入る・・・。」
しぶ子はとりあえず、おとなしくビクビクしながらも日々を過ごした。
事件当日―
その日は、とても雨風が強い日だった。
仕事がいつもより何故か早くあがれる事になり、不思議と普段ではありえない行動をして、しぶ子は夕方から一歩も外へは出なかった。普段はほぼ夜に帰宅するし、外にいる事が多い。
だから、突然出来た自由時間をのんびりと過ごした。
早めの入浴に早めに夕食。早めに眠る事にし、しぶ子は寝室へと向かった。
眠る前に少しテレビでも見るかな。
しぶ子はパジャマで布団に横たわる前に、おもむろにテレビの電源を入れた。
テレビからはいつものニュース番組の映像が流れ始めた。
「次は殺人事件のニュースです」
テレビの男性アナウンサーが、原稿を読み進めるとテロップが流れた。
しぶ子はそれを目にし愕然とした。
その場所があまりに近い場所だったから。
そしてお知らせ通りな殺人事件だったから。
そして、被害者が面識ある方だったから。
まだ情報は開示されていなかったけれど、
テレビ画面から情報が浮き上がり、犯人が被害者の身内なのはわかった。
色々情報の映像が脳内に流れ込んできたので、メモを取った。
顔が見えたので似顔絵も書いた。年齢もだいたいこれくらい。現場から東へ逃げてる姿が視えた。
「どうか、一致しませんように。」
こんなのが一致したら、発狂してしまう。周囲にこんなおかしな発言を漏らせば、
逆に犯人と思われてしまう。
色々見えた事を一通り書き留め終えた頃、しぶ子は何だか、背後に気配を感じた。
しぶ子は、ゆっくりと後ろを振り返った。
そこには、今速報が流れた、殺人事件の殺された方が立っていた。
顔は険しく、しぶ子を睨みつけている。すると、その方が大声でこう叫んだ。
「どうして、殺されるのをわかっていたなら止めてくれなかったのよ!!」
ドラマならどんな展開になるのだろう。主人公が一緒に犯人を捜そう!とか奔走するのか。
それとも主人公の苦悩の描写のシーンだろうか。
これはさすがに自分でも驚いたのだけれど、そう責められて瞬間答えたしぶ子の返答はこうだった。
「そんなん!こうなるとか知らんかったんやもん!」
すると、霊の方の目が点になった。
なかなか、こんなシーンお目にかかれないと思う。
それからは「こいつアカン」と思われたのか、そこまで強気には言ってこられなくなった。
沢山それから想いを聞いた。
「殺されるとは思わなかった。犯人は〇〇。信じていたのに・・」
私は頷きつつ、色々な話をした。その人が笑ってくれる様な日常の雑談をした。
犯人を知った所で、私には何もできない。話を聞くしかしてあげられない。
『ふふっ・・・・』
すると、とても単純な事でその方が笑った。
その瞬間、その方はゆっくりゆっくりとその場から消えていった。
笑うとみんな消えていく、何でだろう。
わからないけど、笑うと消えていく。
どうか、天国への道で迷子になりませんように、
そう静かに祈った。
結局その事件の犯人は、数年後捕まった。
メモ通りの結末で、やはりあの幽霊は殺された方だったのかと思った。
もっとダメージを受けるかなと思っていたのだけれど
案外静かに、しぶ子はそれを受け止めた。
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