蜜月

絵麻

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蜜月

序章

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 気付けば、トラックが目の前に迫っていた。

(嘘、私―――死ぬの?)
 倉沢美桜はまだ、十六歳の女子高生だった。  
(まだ、恋も知らずに死ぬの?そんなコトを思いながら、私は目を閉じた)
 できれば、痛くありませんようにと、美桜は目を閉じた。

《ミオ!》
 
 叫び声とともに、誰かが美桜を庇う。

 キキキ―――――、ドンッ!

 不快なブレーキ音と、大きな衝撃音と同時に美桜は意識を失った。


 ・・・・

 どのくらい時間が流れただろうか。倉沢美桜は七歳の少女、遠野美苑として知覧にある子爵家の屋敷で暮らしていた。
「今日から、ここがあなたの家よ。それから、私のことはお母様と呼びなさい」
 遠野家はこの区域で多くの土地を所有する、子爵の末裔だった。

「あなたのお父さんは、生きてるわ」
 ずっと、父親は死んだものとして、美苑は生きてきた。だが、唯一の身内である母・美禰子が亡くなり、美苑は孤児となった。
「美苑さんね」
 美禰子の病状悪化を聞き、子爵夫人である春江が迎えに来たのだ。

「今日は泣いていいわ、だけど――明日からは少しずつ元気を出しましょうね」
「ふぇっ」
 美苑は堪えていた涙をあふれさせ、春江はそっと美苑を抱きしめた。
「よく頑張ったわ、あなたも」
「お母さん!」
 声を上げ、美苑は泣いた。

(あれから、何年過ぎたのだろう。私はあの頃、流行っていた悪い風邪にかかり、何日も高熱にうなされた。そして、夢の中で見知らぬ女性と出逢った)

「あなた、誰?」
「私は美桜よ、あなたは?」
「私は美苑」
 名乗り合い、互いに感じる。
 この時代の美苑は命が尽きかけていて、美桜はすでに命を終えていた。
(何で、この時代に呼ばれたかは分からない。でも、同じ『ミオ』と読める名前の二人は、とてもよく似た魂だったのだ)

 美苑と美桜は手を繋いだ。眩い光が包み込み、魂は一つとなった。

(断片的にだけど、美苑としての記憶が残っている。私は遠野美苑として生きることにしたのだった)
 意識を失う前に、聞こえた声は誰だったのだろうか。美苑はふと、思った。

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