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蜜月
一話
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美苑(美桜)は十五歳になった。
「君たちには、基地で特攻兵や豫科練の身の回りの世話をしてもらうことになる。―――といっても、主には寄宿舎の部屋をそれぞれに受け持って、他は廊下や食堂の片付けなんかだな」
昭和十六年十二月初旬に開始された第二次世界大戦により働き手がいなくなった国内で、人材不足を学徒動員として女学生らが補った。
「遠野美苑」
「はい」
「君は二階にある、長谷川潤弥の部屋だ」
それぞれの部屋担当を、立花一登が読み上げる。この基地には指導教官として十数名の軍人が詰めていたが、うち三名〈長谷川潤弥、立花一登、上田洋右)はともに二十代の少佐階級だった。
「あの若さで少佐なんて、立花さん達って有能なのね」
「なんでも、マレーや真珠湾で撃墜王の異名を与えられたらしいわよ?」
女学生の中には、見目麗しい三人の話題で盛り上がる者もいた。
(カッコいい男性にときめくなんて、戦時中も平成も変わらないな)
「遠野さん」
学級委員の住良木美代子が手招きし、美苑は駆け寄る。
「はい」
「気をつけてね」
小声で、美代子が囁いた。
「え」
「長谷川少佐は、良くない噂があるの。【子作りをするために、嫁探しをしている】って噂よ」
美苑は顔を紅くする。
(子作り―――って)
「気をつけてね、軍務に忙しくて。ずいぶんと、ご無沙汰らしいから」
美代子は去っていった。
「・・ご無沙汰って、欲求不満てこと?」
美苑は洗面所で顔を洗う。
(戦時中って、結婚前はエッチしないんじゃ?あ、だから遊郭とかあるのか)
鏡に映る美苑の顔はまだ幼さが残る、愛らしい顔つきをしていた。
「失礼します」
執務室では潤弥が書類に目を通し、印を押していた。
「ああ、今日から掃除に女学生が入るんだったな。君がそうか?」
「はい、遠野美苑です。宜しくお願い致します」
「ああ、よろしく。オレは長谷川潤弥だ」
「掃除、始めますね」
板張りの部屋を、ホウキで掃き掃除から始める。
(切れ長の目にすっきりとした鼻筋、形のいい口唇・・。長谷川さんって、男前だな)
ちらと見た横顔は整っていて、美桜として生きていた平成の時代の男子とは違った。
トクン・・と、心臓が高鳴る。
ー 子作りの為の嫁探し ー
美代子の言葉を思い出し、美苑は首を振る。自分のような子供を性の対象にする訳ない、そう思うと美苑の胸は痛んだ。
「君たちには、基地で特攻兵や豫科練の身の回りの世話をしてもらうことになる。―――といっても、主には寄宿舎の部屋をそれぞれに受け持って、他は廊下や食堂の片付けなんかだな」
昭和十六年十二月初旬に開始された第二次世界大戦により働き手がいなくなった国内で、人材不足を学徒動員として女学生らが補った。
「遠野美苑」
「はい」
「君は二階にある、長谷川潤弥の部屋だ」
それぞれの部屋担当を、立花一登が読み上げる。この基地には指導教官として十数名の軍人が詰めていたが、うち三名〈長谷川潤弥、立花一登、上田洋右)はともに二十代の少佐階級だった。
「あの若さで少佐なんて、立花さん達って有能なのね」
「なんでも、マレーや真珠湾で撃墜王の異名を与えられたらしいわよ?」
女学生の中には、見目麗しい三人の話題で盛り上がる者もいた。
(カッコいい男性にときめくなんて、戦時中も平成も変わらないな)
「遠野さん」
学級委員の住良木美代子が手招きし、美苑は駆け寄る。
「はい」
「気をつけてね」
小声で、美代子が囁いた。
「え」
「長谷川少佐は、良くない噂があるの。【子作りをするために、嫁探しをしている】って噂よ」
美苑は顔を紅くする。
(子作り―――って)
「気をつけてね、軍務に忙しくて。ずいぶんと、ご無沙汰らしいから」
美代子は去っていった。
「・・ご無沙汰って、欲求不満てこと?」
美苑は洗面所で顔を洗う。
(戦時中って、結婚前はエッチしないんじゃ?あ、だから遊郭とかあるのか)
鏡に映る美苑の顔はまだ幼さが残る、愛らしい顔つきをしていた。
「失礼します」
執務室では潤弥が書類に目を通し、印を押していた。
「ああ、今日から掃除に女学生が入るんだったな。君がそうか?」
「はい、遠野美苑です。宜しくお願い致します」
「ああ、よろしく。オレは長谷川潤弥だ」
「掃除、始めますね」
板張りの部屋を、ホウキで掃き掃除から始める。
(切れ長の目にすっきりとした鼻筋、形のいい口唇・・。長谷川さんって、男前だな)
ちらと見た横顔は整っていて、美桜として生きていた平成の時代の男子とは違った。
トクン・・と、心臓が高鳴る。
ー 子作りの為の嫁探し ー
美代子の言葉を思い出し、美苑は首を振る。自分のような子供を性の対象にする訳ない、そう思うと美苑の胸は痛んだ。
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