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第197話 未知の乗り物
しおりを挟む確かに森フクロウのフー太が誘拐されそうになったこともあったし、カルラが目立っている種族であることも事実だが、ガレンに黙っていてほしいことはこっちが本命だ。
「今から見せるのは他の人にはくれぐれも秘密で頼むよ。あと予め言っておくけれど、これから見せるのは魔物じゃないから、攻撃はしないでね」
「ああ、もちろん誰にもいわねえさ。それに俺はもう冒険者を引退して、面倒ごとに関わる気はねえから安心するといい」
いよいよガレンの前にキャンピングカーを出す。
と言っても、普段街中で買い物をしたあとに誰もいないところでキャンピングカーを出してアイテムボックスに入れる際は透明化しているからまだ見えないのだが。
「……むっ」
見えないキャンピングカーを出したところで、ガレンが何かを感じ取ったのかもしれない。透明だが、目の前に大きな物質が現れたことには違いないからな。
みんなには透明で見えないが、俺にだけはキャンピングカーの輪郭が半透明に見えている。半透明なドアに手を当て、そのままドアを開いた。
「なっ!?」
ガレンが声を上げる。まあ、なにもない空間にいきなりキャンピングカーの車内への入り口が現れればそれも当然か。
「これがキャンピングカーという乗り物なんだ。普段はこんな感じで透明にできるんだよ。今透明化を解除するから、くれぐれも攻撃しないでね」
「あ、ああ……」
大事なことなのでもう一度言っておいた。
車体強化機能によって大抵の攻撃なら通さないキャンピングカーだが、元Aランク冒険者であるガレンの攻撃を防げるのかは分からない。ガレンの武器はその腰に差した大きな剣だ。ジーナの持つロングソードよりもさらに大きくて長い。さすがにあの剣による攻撃を受けたら厳しい気もする。
キャンピングカーの運転席へ移動し、カーナビの点線で描かれた〇をタッチした。それと同時にキャンピングカーの外から声がしたのはおそらく驚いたガレンの声だろう。だが、衝撃は来なかったので、攻撃まではしてこなかったようだ。
「これが俺の能力で、このキャンピングカーという特別な乗り物を召喚できるんだよ」
キャンピングカーの外に出ると、予想通りガレンが驚いた様子で立ち尽くしていた。
「……長年生きてきたつもりだが、こんな物を見たのは初めてだぜ。確かに呼吸をしていないようだし、魔物どころか生物じゃねえみたいだ。魔道具みたいな物か?」
「確かにどちらかというと魔道具の方が近いかな」
どうやら呼吸がないことで生物でないことがわかるらしい。さすがだ。
初めは武器に手をかけていたガレンだが、剣から手を離す。
「中は見た目よりも広いんだ。まずは中を案内するよ」
「ほら、ガレンのおっさん。ビビんなくても大丈夫だぞ」
「大丈夫だよ」
「お、おう」
カルラとコレットちゃんに連れられてキャンピングカーの中へ入るガレン。
俺はともかく眩しい笑顔のこの2人に案内されれば、ガレンもさすがに罠だとは思わないだろう。
「……見たことない物ばかりだ。それになんだか中の方が広くないか?」
「俺の故郷の便利な道具なんだよ。あとこのキャンピングカーは拡張機能といって、どんどん進化していくんだ。これは空間拡張機能といって、この乗り物の中を広げることができる機能なんだよ。例の酒もこのキャンピングカーの機能で増やすことができるんだ」
「なにっ! あの酒もこの乗り物からできているのか?」
「キャンピングカーからできているってわけじゃないんだけれど。まあ、詳しい説明は走りながらするよ」
「ガレンさん、シートベルトはこうやって付けるんだよ」
「しーとべると?」
「このキャンピングカーは結構速く走ることができるから安全のためだよ。すぐに外せるから安心してくれ」
ガレンからしたらいきなり未知のキャンピングカーに乗って、身体を拘束されると言われると不安に思うだろう。本当はガレンが携えている武器を外しておいてほしいところだが、それはもう少し信頼してもらってからでいい。
いつも通りカルラとコレットちゃんが横に並んで後部座席に座り、反対側にガレンが座ったのを見て俺たちも運転席へと移動する。
「森の入り口までは距離があるから少し時間がかかる。事前に説明した通り、森を避けて遠回りに行くよ」
「あ、ああ。了解だ」
ルートは昨日中にガレンと相談して決めてある。
ロンデル遺跡の手前にあるスターフェル村へ行くためには直線距離だとそこまで離れてはいないのだが、大きな森を通る必要がある。魔物が多い地域でもあることだし、遠回りをしつつ、可能なところまでは森を避けて進む予定だ。
ガレンにもキャンピングカーの詳細は伝えていなかったが、かなり速い乗り物で遠回りにそこまで向かうことは伝えてある。まずはキャンピングカーの説明をしつつ、慣れてもらうとしよう。
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