キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第211話 作戦

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 森の中を歩き、風下から回ってブラッディベアの群れから少し離れたところにいる。

 コレットちゃんの耳によって相手に気付かれることなく、ブラッディベアの群れの場所を把握できた。

「……ホーホホー」

「なるほど、ブラッディベアは全部で8体か」

「ホー!」

 フー太が俺の渡した木の枝を8つこちら側に寄せてきて、俺の問いに頷く。

「ほお~フクロウが偵察してくれるとはすごいな」

「まるで言葉がわかるみたいだ」

 ブラッディベアの群れの位置を捕捉した後はフー太が空から偵察をしてきてくれた。さすがに空を飛ぶフー太はブラッディベアに狙われることなく敵の数を把握することに成功した。

 スターフェル村の人たちは森フクロウという種族は知らないらしい。フー太はすごいのだよ。

「コレットとフー太のおかげで奇襲がだいぶ楽になったな。そんじゃあ風下から一気に叩くぞ!」

「了解」

 事前にブラッディベアの群れと戦う作戦はみんなで立ててある。いよいよとなるとドキドキするな。



「撃て!」

「ガォ!?」

 ブラッディベアの群れにできるだけ近付き、ガレンの合図で村の人たちが一斉に弓を放ち、ジーナも風魔法で攻撃を仕掛ける。

 ブラッディベアはダナマベアよりもさらに一回り大きなクマ型の魔物だった。赤黒い縞模様の入った毛皮で覆われており、口からは鋭い牙が見え隠れし、その屈強な腕の先には短剣ほどの大きさの真っ黒で鋭い爪が生えていた。

「ガァ!」

「グルル!」

 しかし、遠距離攻撃である弓やジーナの風魔法ではその強靭な毛皮に阻まれてそれほどダメージを与えることはできなかった。カルラのブレスはもっと大きなダメージを与えることはできるが、森が火事になる危険性もあって使用はできない。

「よし、全員がこちらに意識を向けたな。シゲト、ジーナ、頼むぜ!」

「ああ!」

「任せてください!」

 しかし、こうして遠距離から奇襲をすることによってブラッディベアの群れの意識がこちらに向き、全員がこちらに向かって襲ってきた。そこをすかさず俺とジーナで本当の奇襲をかける。

「くらえ!」

 プシュウウウウ。

「いきます!」

 ダナマベアの時にも効果は抜群だったクマ撃退スプレー。これは指向性があり、それほど広範囲には飛ばすことができない。しかし、ジーナの風魔法を使用することによってクマ撃退スプレーの内容物を広範囲に広げることが可能だ。

「ガアアアア!!」

「グルル!?」

「よし、さすがだぜ! このまま一気にいくぞ!」

 クマ撃退スプレーを一気に当てたわけではないので、普通に使うよりも効果はだいぶ弱くなってしまうが、ジーナの風魔法により広範囲かつ風向きを気にせず使用することが可能だ。そしてこちらはジーナの風魔法でクマ撃退スプレーの成分は飛ばしたはずだが、念のため口元に布を当てている。

 ブラッディベアたちが苦しんでいる隙に全員で総攻撃をかけた。



「……よし、これで8体だ。怪我はないか?」

「不覚だが、暴れ回っていた時に攻撃が当たっちまった。まあ、こんなもんはツバを付けとけば治るぜ」

「そういった小さな傷が化膿して腕や足を斬り落とすことになった冒険者も多い。ちゃんと手当するんだぞ」

「わ、わかったぜ……」

 作戦が怖いくらい見事に決まり、こちらの被害はほとんどなく、ブラッディベアをすべて討伐することができた。

 村の人がひとり肩に傷を負ったが、それほど大きな怪我ではないようだ。とはいえ、ガレンの言う通り、小さな怪我でも大きな怪我に繋がることが多いから油断は禁物である。

「思ったよりも手応えがなかったぜ……」

「ぶっちゃけ最初ので勝負は決まったようなものだったな。毒みたいだが、すごい効果だったぜ」

「毒というよりは目つぶしだから、倒したブラッディベアの肉は普通に食べることができるよ」

 クマ撃退スプレーの内容物は唐辛子の辛み成分であるカプサイシンだ。調理して食べても問題ない。

「これだけのブラッディベアを相手に誰も大きな怪我を負わなかったのはすごいことだ。シゲトとジーナのおかげだな」

「俺は何もしていないからジーナのおかげだよ。だいぶ練習していたもんね」

 スプレーを風魔法で狙った場所へ運ぶのはかなり難しいらしく、ジーナはこれまでに夜寝る前にだいぶ練習をしていたその成果が出たようだ。

「とんでもないです。シゲトのクマ撃退スプレーがあったからこそですよ。それにみんな本当に強かったので、我々全員の勝利です!」

「ああ、そうだな。俺たち全員の勝利だ!」

「「「おおおおお!」」」

 ガレンの言葉に合わせて、全員で右腕を空に突き上げて叫ぶ。

 誰も大きな怪我をすることなく、無事に討伐ができて本当にほっとした。
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