キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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第212話 解体作業

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「それにしてもみんな本当に強かったなあ」

「ホホー!」

 ガレンを筆頭にジーナ、カルラ、スターフェル村の人たちはあれだけ大きなクマ型の魔物をあっという間に討伐していった。村の人たちもこの魔物がひしめく森の中で生活をしていることもあって、戦い慣れているようだ。

 特にガレンは本当に強かった。群れの中でも大きなボスらしき個体もその大きな剣で圧倒し、一人で3体も倒していたからな。相変わらず動きが速すぎてほとんど見えなかった。やはり一人だけ飛びぬけているようだ。

 俺はというと出番は最初のクマ撃退スプレーを使ったあとは大盾を持って待機していただけである。……何度も言うが、盾役の俺が戦闘に参加しないほうが良いのだ。

「今回はあれだけ状況が整っていたからな。ブラッディベアの群れにバレることなく近付けたし、あれだけ敵が混乱していた状況だったから楽なもんだ。これもシゲトたちのおかげだぜ」

「うむ。少しは被害が出ることも考えておったが、シゲト殿たちのおかげだ。本当に助かったのう」

「ああ。おかげで危険なブラッディベアの群れを排除することができた。感謝しているぜ!」

「役に立ててよかったよ」

 村の人たちやガレンがそう言ってくれるのなら俺たちも嬉しい限りだ。



「………………」

 今はフー太とスターフェル村の2人がブラッディベアの血の臭いにつられて魔物がやってこないかを確認し、残りの者は手分けをして解体作業をしているところだ。

 俺も多少はこの異世界に慣れてきて、解体作業にもあまり気分が悪くならなくなってきたのだが、ブラッディベアの群れの中には小さな子供の個体もいた。先ほどまでは誰も大きな怪我がなく戦闘が終わったことに喜んでいたが、改めて考えてみるとこのブラッディベアたちも生きていくために生活をしていただけなんだよなあ……。

「シゲト、こっちは終わったからそっちを手伝うぜ」

「ああ、ありがとう」

 ガレンの方の解体作業が終わり、俺の方を手伝いにきてくれた。

 2人で手分けをしながら必要な部位を切り分けていく。

「どうした、大勝利だってのに浮かない顔をして?」

「いや、何でもないよ」

「もしかすると、群れの中にガキがいたのを気にしてんのか?」

「……よくわかったね」

 俺が微妙な顔をしながら解体作業をしていた理由を当てられた。ガレンと出会ってからまだ間もないというのに、よく人を見ている。

「駆け出し冒険者によくあることだからな。まあ、たとえ魔物であってもガキを殺すってのはいい気分がしないもんだ」

 いろいろと見透かされているらしい。今までの狩りの中でも子供の魔物を見つけたことはあったが、肉の量が少ないという理由もあって見逃してきた。

 親子の魔物を倒したのは今回が初めてだ。

「だが、もしもここで俺たちがブラッディベアのガキを見逃したら、そいつらがスターフェル村の者を襲うかもしれない。そしてこいつが成長して新しい群れを作り、別の村を襲う可能性もある。俺の村もそうだったが、小さな村にとってブラッディベアのような魔物は一匹でも脅威になる。こういう時は俺たちが将来のそういった村を救った英雄なんだと考えるべきだな」

「……なるほど、さすがガレンだ。今のでだいぶ気が楽になったよ」

 そうだな、ここは平和だった日本とは違う。生き物の命の大切さよりも、もっと大切なものがある。

「おう。まあ、そんな小難しいことは考えずにみんなが大切な仲間を守るために最善を尽くしたって考えりゃあいいと思うぜ」

「そうだな。うん、本当にみんな大きな怪我がなくてよかったよ」

 ガレンの言う通りだ。旅の仲間や村のみんながこうして元気なのが一番である。

 ガレンからは本当に戦闘技術以外にもいろいろなことを教わるなあ。



「おっ、村が見えてきたぜ」

「ふう~さすがに解体した素材が多いから大変だったな」

 解体したブラッディベアの毛皮に肉や牙などの素材を包み、みんなで手分けをして運んできた。

 8体もの素材は今回の討伐メンバーでは持ちきれなかったので、また狼煙を上げて村の人総出で運んできた。帰りも何度か魔物に遭遇したけれど、村の人たちが大勢いたことでとても心強かった。

 村に到着して、まずは井戸から汲んできた水で身体を洗う。やはり解体をすると血の臭いが沁み込んでしまう。本当はキャンピングカーのシャワーを浴びたいところだけれど、まだこの村の人たちには見せていない。米を育てていることもわかったし、次回この村を訪れた時には話してもいいかもしれない。

 そして俺たちが身体を洗っている間に少し遅めの昼食を準備してくれていた。朝ご飯はしっかり食べたけれど、すでにお腹がペコペコだ。果たしてブラッディベアの肉はどんな味がするか楽しみだ。供養の意味も含めてしっかりと味合わせてもらおう。
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