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連載
第216話 ロンデル遺跡
しおりを挟む「いやあ~うまかったぜ! それにあの料理は酒にもよくあっていたな」
「味の濃い料理にビールはあうからね。それにしてもブラッディベアの肉はうまかったな」
「ダナマベアよりもいっそう深い味でしたね。しばらくあの味が楽しめると思うと楽しみです」
ブラッディベアの肉はすき焼き風の濃い味付けにもまったく負けていなかった。おかげで5合も炊いたご飯はすべてみんなのお腹の中へ入ってしまった。
カルラなんてそれでも足りなかったから、ブラッディベアの肉だけさらにお代わりしていたな。肉は全員でかなりの量をもらったので、当分の間は楽しむことができそうだ。米も手に入ったことだし、次はどんな料理を作るのか考えるだけで楽しいぞ。
「シゲト、このブラッディベアの肉でベーコンを作ってくれよ。あのレッドドラゴンのベーコンは酒のつまみに最高だったぜ」
「僕もベーコンを食べたい!」
「いいね。ただベーコンを作るのには少し時間がかかるからしばらく待ってくれ。それにできればこの森を抜けてからにしたいところだな」
「ホ~」
相変わらずガレンは酒にあう料理が大好きなようだ。俺もどんな味がするのか気になるし、このブラッディベアの肉でもベーコンを作ってみるとしよう。
ただ、強い魔物が多い中でのん気にベーコンを作って燻製をしたくはないので、ゆっくりと料理をするのはこの森を抜けてからにしたいところだ。
「この森はロンデル遺跡まで続いているんだよな。そういえばロンデル遺跡ってどんな遺跡なんだ?」
明日向かう予定のロンデル遺跡のことを改めてガレンに聞いてみる。一番の目的であったスターフェル村の米を無事に手に入れられたこともあって、少し忘れていたが、異世界の遺跡というものも非常に興味深い。
元の世界でいう遺跡へは何度か訪れたこともあり、その時は当時の生活様式を見ることができてとても楽しかった記憶がある。はたしてこちらの世界の遺跡とはどんなものなのだろうな。
「ロンデル遺跡か。俺も護衛で2回ほど行ったことがあるくらいだからそこまで詳しいことは知らないが、どうやら大昔にエルフの集落があった跡地のようだな」
「ジーナお姉ちゃんと同じだね!」
「ええ。母から聞いた話によると、大昔はエルフという種族自体が珍しく、賊に狙われることも多々あったようです。そのため、エルフという種族だけで隠れ里を作って暮らしていたことが多かったようですね」
……昔はそんな時代があったんだな。森フクロウのフー太も珍しくて狙われてしまうようだし、きっとそれも貴族とかの仕業なのかもしれない。
「場所が場所だから、訪れるやつはほとんどいない。昔の遺跡が残っている場所があるのはここだけではないし、もっと有名な遺跡なんかもある。俺も長いこと冒険者をやっているが、ロンデル遺跡へ護衛で案内する依頼を受けたのはその2回だけだ。おっと、これで3回目になるか」
あの街で長いこと冒険者を続けているガレンがたった2回しか護衛を引き受けたことがないということは本当に訪れる人が少ないのだろう。まあ、俺たちもメインの目的はスターフェル村で、ロンデル遺跡はその近くにあったからという理由だし、普通の人ならあえて危険な魔物が多いこの森を通ってロンデル遺跡を観光する人は少ないのだろう。
とはいえ、観光客が少ないからといって、大した場所じゃないということはない。元の世界でも観光客が少ない穴場スポットや山奥の秘境にある温泉なども多くある。
……そういえば秘湯のこと考えていたら、久しぶりにアステラル村の温泉に入りたくなってしまった。旅をしながらシャワーを浴びられるのも贅沢なのだが、それでも温泉は格別なのだ。近くに温泉があったら最高なんだけれどなあ。
「今は誰も住んでないならあんま面白そうじゃねえな……」
「そうだな。今では廃墟になっていて、特に目新しい物もないから見ててもそこまで面白くはないかもしれん。それに建物は石造りで頑丈だから、稀に魔物が巣を作っていることもあるから気は抜けないぞ」
「おっ、それは面白そうだぜ!」
全然面白そうじゃない……。まったく、カルラは戦うのが好きすぎるぞ。
「そこまでじっくりと観光したいわけじゃないし、大きな遺跡でもないから、のんびりと1日観光して出発するくらいがちょうどよさそうだな」
「ホホ~」
ブラッディベアのすき焼き丼を楽しみつつ、明日以降の方針を決める。
みんなそこまで遺跡には興味がないみたいだけれど、俺は楽しみだ。元の世界でも子供のころに社会科見学で行った遺跡や城の跡地なんかはとてもワクワクして楽しかった。はたして異世界の遺跡はどんなものなのだろうな。
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