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第3話 白いフクロウ

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「この世界にもフクロウはいるのか。というか、さっきのゴブリンは見間違いで、ここは地球上のどこかだったらまだ救いはあるんだけれどな」

 目の前に落下してきたのは小さなフクロウだった。白色のモフモフとした毛並みに覆われ、身体の割に大きな目をぱちくりさせてとても可愛らしい。

「……翼を怪我していてうまく飛べないのか。治療してあげたいところだけれど、危険な生物という可能性もあるんだよな」

 どうやらこのフクロウは怪我をしているらしく、右の翼には一本の大きな枝のようなものが突き刺さっており、赤い血が流れている。こっちには気付いた様子もなく、左の翼でそれを抜こうとしているが、うまく抜けないようだ。

 可哀そうだから枝のようなものを抜いてあげたいところだけれど、近付いたらいきなり襲ってくる可能性もある。確かフクロウって見た目に寄らずかなり獰猛なんだよな。もし俺がここで怪我をしても、医者がいるのかすらも分からない。だけど……

「さすがに可愛そうだな……」

 30センチメートルほどの小さなフクロウはとても可愛らしく、必死で枝を抜こうとしている姿は見ていて痛々しい。せめて、あの枝だけでも抜いてあげたい。

「確か緊急用の救急セットがあったな」

 キャンピングカーに積んであった救急セットとペットボトルに入れた水、そして何かあった時のための薪割り用のナタを持って、最大限に警戒をしながらゆっくりとキャンピングカーの外に出る。

「……ホー!」

 ゆっくりと近付いていくと、フクロウがこちらに気付いて、翼を広げて威嚇をしてきた。

「落ち着け、俺は敵じゃない! その木の枝を抜いて治療をしてやるだけだ。ほらみろ、何もしないぞ!」

 持っていたナタと水や救急キットを地面に置き、両手を目の前に広げて、敵意がないことをアピールする。

「………………」

 当然フクロウはまだこちらを警戒している。そりゃ言葉が通じていないんだから当然だ。

「枝を抜くだけで何もしないぞ! 分かるか、こうやって枝を抜くだけだ!」

 通じないと分かりつつも、必死に翼から枝を抜くジェスチャーをする。なんとか敵意がないことを分かってもらえるといいんだけれど……

「ホー……」

 フクロウはひと鳴きするとゆっくりと広げていた翼を戻して、威嚇をやめた。こちらに敵意がないことを感じてくれたのだろうか?

「今からゆっくりと近付いていくぞ。これは水と怪我を治すものだからな」

 ナタは置いたままで、水と救急キットだけを持って、ゆっくりとフクロウへ近付いていく。

「……よし、今から枝を抜くからな。少しだけ痛むけれど、ちょっとだけ我慢してくれ」

「………………」

 手を伸ばせばフクロウに手が届くところまでやってきた。フクロウはこちらを警戒しつつも、逃げ出さずにじっと俺を見ている。

 俺はゆっくりとフクロウの右の翼に刺さっている木の枝に手を掛けた。

「あれ、木の枝じゃない? 何かの棘……それか爪か?」

 フクロウの翼に刺さっていたのは木の枝ではなかった。もっと硬い棘か爪のように3本に枝分かれしていたものが絡まってが刺さっている。これは下手に無理やり抜こうとすると余計に痛くなるやつだ。

「……いい子だぞ。そのまま動かないようにな」

「………………」

 枝分かれした硬いものをフクロウの翼を傷付けないようにゆっくりと外していく。かなり痛みそうなものだが、フクロウはじっと我慢してくれている。

「よし、取れた! あとは水でしっかりと傷口を洗い流して、雑菌が入らないように包帯を巻いてと……」

 無事に棘か爪のようなものが抜けた。そのまま傷口を水で洗い流すと、フクロウは少しだけ痛がっているようだが、暴れずに我慢してくれた。そしてそのまま包帯を巻いていく。救急セットの中には消毒液もあるのだが、人以外に使っていいものなのかわからないからやめておいた。

「……よし、これで大丈夫だ。しばらくしたら、包帯を外してやるからな」

「ホー♪」

 フクロウがとても喜んでいるように見える。ちゃんとこのまますぐに飛び立っても自然に外れるよう、包帯は少し緩めに巻いておいた。

 それにしても本当に可愛らしいな。どうやら怪我を治療したことで、こちらに気を許してくれたらしい。ゆっくりと頭を撫でたり、首すじを触るとくすぐったそうにしている。そしてモフモフとした毛並みもとても触り心地がいい。

「ちゃんと我慢して偉かったぞ。本当に可愛いな、おまえ」

「ホー!」

 何やらとても人懐っこい。もしかして人に飼われたことでもあるのだろうか?

 ぐううううう~

「おっと、安心したらお腹が空いてきたな。とりあえず飯にするか。お前も食べるか?」

「ホー!」

 まるでこちらの言葉が分かっているかのように返事をするフクロウ。

「よし、俺も外で食べるか」

 一度キャンピングカーに戻って、キャンピングカーのキッチンで簡単に調理をしつつ、キャンピングチェアとテーブルを外に持ってくる。もちろん何か起こった時のため、すぐ逃げ出せるようにキャンピングカーのすぐ横でだ。

「ほら、お前の分だぞ」

「ホー♪」

 小皿へ冷蔵庫に入れてあった生の豚こま肉を取り分けてやる。貴重な食料だが、これは昨日スーパーで購入してきたおつとめ品だから、どちらにせよ今日中に食べないと賞味期限が危ない。

 確かフクロウは肉食で基本的にはいろんな肉を食べられるはずだ。うん、ちゃんとおいしそうに生肉を食べているな。

「さて、俺の方はこいつだ」

 俺の方はこの豚こま肉をさっと炒めて、キャンプ御用達のアウトドアスパイスを振りかけたものだ。アウトドアスパイスとは塩胡椒やハーブなど各種スパイスを調合したもので、肉、魚、野菜、そのすべてにあうようにできている。

 それと一緒に同じくスーパーで購入したおつとめ品のサラダにドレッシングをかけたものだ。キャンピングカーで冷蔵庫があると、スーパーで購入したものをそのまま持ち込めるから素晴らしい。

「うん、うまい!」

 シンプルに焼いてアウトドアスパイスを振りかけるだけでも、十分にうまいのだ。アウトドアスパイスはマジで持っていて損はない調味料だぞ。

「ホーホー!」

「なんだ、もしかしてお前も焼いた肉が食べたいのか? はは、まさかな」

「ホー!」

「………………」

 フクロウが俺の問いに対して、まるで言葉が分かっているかのように頷く。さっき怪我の治療をしている時にもしやと思ったが……

「もしかして俺の言葉が通じているのか?」

「ホー!」

 白いフクロウは力強く頷いた。

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