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第10話 この世界の事情

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「本当にご馳走様でした、シゲト殿。この御恩は決して忘れません!」

 コンソメスープパスタを綺麗に平らげて一息ついた。そのままキャンピングカーの横に設置したテーブルとアウトドアチェアでジーナの話を聞く。

「これだけおいしそうに食べてくれれば、俺のほうも作った甲斐があるよ。そうそう、俺も呼び捨てで呼んでくれていいからな」

 殿なんて付けられると、なんだかむずかゆい。どうやら名前を呼び捨てで呼ぶみたいだし、ジーナにもそうしてもらおう。

「……わかりました。本当にありがとうございました、シゲト」

「………………」

 自分で言っておいてなんだが、若干――いや、かなり恥ずかしい。綺麗な女性に苗字ならともかく名前呼びされた経験なんて、彼女がいなかった俺には小学生以来のことだ。

 いかん、いかん。あまり意識しないことにしよう。

「それでジーナ。さっきも言ったけれど、俺はかなり遠くの国からやってきたんだ。いろいろとこの国のことや魔法のことなんかを教えてほしい」

「はい、私が知っていることなら喜んで! なるほどシゲトは遠くの国から来たのですね。それでこちらのテーブルや椅子などは見たことがない造りとなっているのも納得です」

 そう言いながら、キャンプギアのテーブルやアウトドアチェアを不思議そうに眺めるジーナ。やはりこれらのキャンプギアはジーナの目から見ても珍しい物のようだ。

 さて、まずは何から聞いてみようか。

「まずこの国は何という名前なんだ? それと、日本やアメリカという国を聞いたことがあるかな?」

「この国の名前はコーデオ国と言います。ニホン……アメリカ……すみません、そちらの国の名前は聞いたことがありません」

 コーデオ国か……当然そんな名前の国は聞いたことがないし、日本はともかくアメリカを知らないとなると、やはりここは元いた世界とは異なる世界なのだろう。

「それじゃあこのコーデオ国はどんな国なんだ? 他国と戦争なんかはしていないよな?」

「はい。コーデオ国はそれほど大きな国ではなく、争いもなく平和な国ですよ。自然があって有名な観光地なども多く、おいしい食材も取れる国で有名です」

「なるほど」

 それはありがたい情報だ! さすがに他国と戦争中の国をふらふらとキャンピングカーで移動するのは非常に危険だもんな。それに自然が多く、おいしい食材を取れる国ならば元の世界に帰る情報を集めながら、この国を楽しく回ることができる。

 ……というよりも、はたして俺は元の世界に帰りたいのだろうか? 家族や友人に会えないのはとてもつらいが、ブラック企業で夜遅くまで働くあの生活に戻りたいのかと言えば少し微妙だ。

 幸い俺が苦労して購入した夢のキャンピングカーは一緒だし、よく分からないがキャンピングカーの機能まで拡張できるようになっているし、この世界をキャンピングカーと一緒に楽しく回るスローライフの生活もありなのではと思ってしまう。

 まあ、それについては今考える問題じゃないか。とりあえず今は元の世界の情報を探しつつ、今後の生活基盤を整えていくことが大事かもしれない。

「それじゃあ、次はフー太について聞きたいな。ジーナ達にとってはウッズフクロウはどういう存在なの?」

「ホー!」

 つぶらな黒い瞳をぱちくりさせながら首を傾げるフー太。相も変わらず可愛らしい。

「私達の村や付近の村では森の遣いとして崇める対象となっております。また、ウッズフクロウ様は畑を荒らす害獣などを捕まえてくれるため、普段より感謝を捧げております」

「おお、ウッズフクロウはすごいんだな!」

 確か元の世界でもフクロウは畑を荒らすネズミなんかを食べてくれる益鳥とされていた。それに加えて森の遣いとして崇められているようだ。

「ホー?」

 よく分からないという顔をしているフー太。というよりも、これはもしかして……

「フー太、ジーナの話している言葉は分かるのか?」

「ホー……」

 首を横に振るフー太。やはり俺の言葉は理解できるようだが、ジーナの言葉は理解できていないらしい。

「なっ!? シゲトはフー太様と話ができるのですか!」

「いや、フー太は俺の言葉を理解できるらしいけれど、俺はフー太の言葉を理解できていないぞ」

「そ、それでもフー太様に言葉を伝えられるのはとても素晴らしいです! 先ほどの魔物を自在に召喚できる魔法といい、シゲトは本当に素晴らしい魔法使いなのですね!」

「………………」

 そういうわけじゃないんだけれど、説明が面倒だからそういうことにしておくか。

 どうやら、フー太が言葉を理解できるのは俺だけのようだ。やはりこれについては俺が別の世界から来たことと関係があるのだろう。

「そういえば、ウッズフクロウが身体の大きさを変えられるのはやっぱり魔法なの?」

「いえ。ウッズフクロウ様が身体の大きさを変えられるのは元々持っているお力です。このようなお力を持っているのは本当に数少ない種族だけなのです」

「ホー?」

「なるほど」

 どうやらフー太が大きくなれるのは魔法ではなく、ウッズフクロウという種族が元々持っている能力らしい。まあ、自分の身体を何倍にも大きくする魔法がそう簡単に使えたら、この世界が大変なことになりそうだもんな。

 その後もジーナからこの世界のいろいろな情報を聞くことができた。
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