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第9話 コンソメスープパスタ
しおりを挟む『キャンピングカー収納』――俺がキャンピングカーに触れている最中に収納と念じると、キャンピングカーを自在に出し入れできる機能だ。
キャンピングカーを出す際には何もない空間にしか出せず、地面にタイヤが付いた状態でしか出すことができない。
空中にキャンピングカーを出して、下にいる魔物を攻撃するなんてことはできないらしい。さすがに俺やフー太が車内へいる間に収納ができるかは試していない。その場合に収納された俺やフー太がどうなるかが分からなくて怖いからな。
「あれほどの召喚魔法を使えるとはシゲト殿はさぞ名のある魔法使いなのですね!」
ジーナが尊敬のまなざしで俺を見てくる。
本当は魔法使いというわけではないんだけれどね。というか、この世界には魔法があるのか。
「いや、この魔法しか使えないから、そんな大した者じゃないよ。ジーナは何か魔法を使えたりするの?」
「はい、シゲト殿には遠く及びませんが、風魔法を使うことができます。こんな感じで風を集めて攻撃魔法として放つことができます」
「おお、すごい!」
「ホー!」
ジーナが右手を前に出すと、周囲の風がそこに集まり、目にも見えるくらいの渦となっていった。これには俺もフー太もとても驚いている。どうやらこの世界に魔法があるというのは本当のようだ。フー太の身体のサイズを変えられるのも、もしかしたら魔法なのかもしれない。
「うっ……」
「ちょっ!? 大丈夫?」
ジーナが突然片膝をついた。いったいどうしたんだ?
ぎゅるるるるるる~
「す、すみません。魔法を使うと少しお腹が減るのです……」
「………………」
ならやらなくてもいいのに……
道に迷ったり、空腹状態で魔法を使ったりと、このエルフさんはどこか抜けている気もする。少なくとも、必要以上に警戒する必要はなさそうだな。
「顔色も良くなって多少は体調も良くなってきたみたいだし、もう少しまともな食事を取ってもよさそうだな。ちょっと待っていてくれ」
「い、いえ! 先ほどはおいしい料理をいただいた上にこれ以上食事をいただくわけには……」
ぎゅるるるるるる~
「「………………」」
再びジーナのお腹の虫の音が盛大に鳴った。彼女のお腹は正直だ。
「はうう……」
顔を真っ赤にして、お腹を抑えながら恥ずかしがっているジーナ。その様子は年相応の可愛らしい女の子だ。なんだか少し抜けているけれど、憎めない子だな。
「こういう時はあまり遠慮するもんじゃないぞ。俺達もちょうど昼ご飯を食べるところだから、あまり気にするな」
「……はい、それではお言葉に甘えさせてもらいます」
「さてと、何を作ってあげようかな」
「ホー」
改めてキャンピングカーを出して、フー太と一緒にキャンピングカーの中へ入る。大丈夫だとは思うが、一応ジーナにはキャンピングカーの外で待ってもらっている。
このキャンピングカーは召喚した魔物ということにしてあるから、ジーナの方も中に入るのを遠慮していたように見えたしな。
「よし、野菜も取れて身体の温まるアレにするか」
そしてキャンピングカー内で調理をして、外にアウトドアチェアとテーブルをセットする。アウトドアチェアはキャンピングカーを購入した際に3つほど余分に購入しておいた。
……ぼっちにそんなにアウトドアチェアが必要か、という疑問は置いておけ! 俺だって元の世界で一緒にキャンプをする友人くらいはいたぞ! まあ数人だけれど……
「さあお待たせ、食べようか。ジーナもフー太もゆっくりと食べるんだぞ。それとこれは俺の故郷の料理だから、口に合わなかったら無理はするなよ」
「うわあ、とても良い香りですね!」
「ホー♪」
俺が作った料理はコンソメスープパスタだ。
作り方は実に簡単。沸騰したお湯に塩を入れてパスタを茹でる。その間に別の鍋で野菜やキノコなどを茹でておき、そこにハムとコンソメを投入。パスタが茹で終わったら、それを鍋に入れてもうひと煮立ちしたら塩とアウトドアスパイスで味を付けて完成だ。アウトドアスパイスはこんなものにまで使えるから優秀だよな。
簡単にできる上に栄養も取れて身体も温まるという、まさに今欲しい料理だ。ハムをベーコンに代えてもうまいのだが、今回はホットサンド用のハムしか購入していなかった。
多少食材は使ってしまったが、ジーナからこの世界の情報を得られるのなら安いものだ。うまくいけば村で野菜なんかを購入できるかもしれない。
「んん! スープに入った長くてモチモチとしたものが味の濃いスープと一緒に口の中で合わさってとてもおいしいです!」
「これはパスタっていう麵料理なんだけれど、麺は食べたことがないの?」
「はい! 私は初めて食べました! それにこのスープがとても濃い味でおいしいです。複雑な味と香りをしていて……もしかして塩だけではなくて香辛料などが使われているのではないでしょうか!?」
「ああ、塩と一緒にアウトドアスパイスという香辛料が入っているよ」
「そ、そんな高価なものを……本当にありがとうございます!」
……ジーナの様子を見ると、この世界の食文化はそれほど高くないように思えるな。味が濃いと言っていたが、ジーナの体調を考えて、味付けは少し薄味にしている。多分塩以外の香辛料が手に入りにくいのかもしれない。
「ホー♪ ホー♪」
フー太も器用にパスタをちゅるちゅると食べている。フー太を見ているとこちらまで癒されるなあ。
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