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第26話 オドリオの街

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「ホー!」

「シゲト、前方右斜めに魔物がおります!」

「了解!」

 ブロロロロロ

 キャンピングカーのハンドルを少し左に回し、少しだけ道を逸れて魔物をかわしてから元の道へと進路を戻す。先ほどから稀にだが、魔物の姿がちらほらと現れた。

 どうやらジーナもかなり目が良いらしく、キャンピングカーを走らせている間はフー太と同様、前方に魔物や障害物などが見えた時にはすぐに教えてもらっている。2人のおかげである程度スピードを出しても、早めに危険な魔物や障害物を察知して回避できている。

 現在は時速60kmほどのスピードで街までの道のりを走っている。このキャンピングカーの最高時速は倍以上出せるのだが、この世界では道が舗装されておらず、大きな岩や倒れた木などの障害物があったり魔物が突然現れて危険なため、かなりスピードを抑えて走っている。

「……よし、予定通りいきそうだ」

 徒歩で5日ということは1日20~30kmくらい進むと考えても約150km、3時間弱あれば街まで到着するはずだ。このままのペースでいくぞ。
 
 

「おっ、もしかしてあれが目的の街か?」

「は、はい、あれがオドリオの街です。し、信じられない……まさか本当にこんな短い時間で街まで来られるなんて!」

「ま、間違いないぞ! まさか本当に歩いて5日かかる道をたった数時間で着くことができるとは……」

 この道の先に大きな壁が見えた。あれが街の城壁なのだろう。これだけ大きな壁ということは街もかなりの大きさのようだ。村からここまでの道のりはあまり人が通らないようで、大きな荷物をしょった商人のような人と、ファンタジーの世界で見たような冒険者の格好をした3人組と行き違っただけだった。

 両組ともこの街に向かっているらしく、後ろから通り過ぎたが、きっと俺たちが通り過ぎたあとはポカンとしていたに違いない。

 街の入り口から少し離れた場所にキャンピングカーを止めた。そして街の中に持っていくものをリュックに詰めていく。商館に売る予定である香辛料、もし香辛料だけでは足りなかった場合に高値で売れそうなキャンプ道具、自分たちの身を守るための護身用具を持っていくことにした。

 ジーナたちとキャンピングカーを降りて、車体に触れてキャンピングカー収納機能を発動させると、それまでそこにあったキャンピングカーの車体が一瞬で消えた。

「や、やはり何度見てもすごいですね。あれだけ大きな魔道具が一瞬で消えてしまいました」

「……ふ~む、これほどすごい魔道具は初めて見たのう」

「さあ、街の中に入りましょう。あっ、でもフー太は街へ入らない方がいいのかな? 確かウッズフクロウは狙われる可能性があるんだっけ?」

「ホー……」

 フー太がとても残念そうな顔をしている。だが、そっちの方がフー太は安全そうだし、キャンピングカーを停めたこの小さな林がある場所で待ち合わせをした方が良いのかもしれない。

 フー太は身体を大きくすることができるが、小さくすることはできないようだ。

「いえ、薬が売っている店も、物を買い取ってくれる店も大きな通りにあるので、大丈夫だと思います。それにいざとなればジーナがおりますから」

「ジーナが?」

「ええ。ジーナは村で一番の狩人で、この街にいる腕利きの者にも引けを取らないと思いますよ」

「今度こそシゲトとフー太様を守ってみせます!」

「………………」

 ジーナってそんなに強かったのか……言われてみると、確かに風魔法まで使えていたし、ディアクのあの巨体をたったひとりで討伐していた。

 昨日村長さんに聞いたところ、この世界では魔法を使える適性のある人はとても珍しいようだ。元の世界で見たファンタジー世界のように、すべての人が魔法を使用できるというわけではないらしい。

 ……出会った時から森で迷って空腹で倒れたり、お腹が空いている状態でお腹が空く魔法を使ったりと、どこか抜けているところしか見ていなかったから、ジーナがそんなに強いだなんて思いもよらなかったよ。

「それとフー太様はシゲト殿の肩から離れないようにお願いします。空を飛んでいると、街にいる他の者に捕らえられてしまうかもしれません」

 なるほど、空を飛んでいると、野生のウッズフクロウと思われてしまうのかもしれない。

「ホー?」

「街にいる間は俺の肩から離れないようにな」

「ホー!」

 やはり村長さんの話も理解することができないので、村長に代わってフー太に伝えた。さあ、いよいよ街の中に入るぞ。



 オドリオの街の入り口まで進み、街へ入るための列に並ぶ。街へ入るためには門番による検査を受けなければならない。

「次の者、中へ」

 列に並んでから10分後、俺たちの番が来たみたいだ。

「こちらが私の分の通行証です。2人は付き添いのものなので通行証はありません」

「……ふむ、こちらは問題なし。残りの2人分で銀貨6枚だ」

「はい」

 村長さんは税金を納める時や、農作物を売る際に街に入るため、通行証を発行してもらっていたようだ。ひとり銀貨3枚ということはだいたい3000円くらいか……妥当と言えば妥当なのかな。

「……それでそっちのウッズフクロウはどうなっているんだ? 見たところ鎖も付けていないのになぜ逃げ出さない?」

「俺にもよく分からないのですが、怪我を治してあげたら、とても懐かれてしまったようです」

「ウッズフクロウが人に懐くことがあるとはな……どちらにせよ通行証がない者は簡単なチェックをしてもらうことになっている。そっちで詳しい話をしてくれ」

「分かりました」

 通行証がない人は門番によるチェックを受けなければならないようだ。確かに俺たちの前に並んでいた人の何人かは別室に案内されていたので、フー太がいるから特別にチェックするわけではないらしい。
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