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第52話 クッキーの味
しおりを挟む「ふう~おいしかった。角ウサギの肉はディアクの肉とも違っておいしかったね。ありがとう、フー太」
「はい、とってもおいしかったです! フー太様、ご馳走様でした!」
「ホー♪」
角ウサギはそれほど大きくなかったので、3人ですべて食べきってしまった。角はとても硬くて素材として買い取ってくれるらしいので、角だけは残しておいて残りは地面を深く掘って埋める。角ウサギのモツは小さすぎて食べられなさそうだったからな。
「さて、今日はちょっとしたお菓子があるよ」
「さっきシゲトが作っていたクッキーというものですね」
「ホー!」
「そういうこと。こっちもジーナが作ってくれたバターを使ったよ」
皿に載せたクッキーをジーナとフー太目の前に置く。
「……柔らかかった生地が固くなっているんですね」
「ああ、さっき一緒に作った生地を冷蔵庫で少し寝かせて、オーブンレンジでしばらく焼き上げたものだよ」
「寝かせる? オーブンレンジ?」
「えっと、俺も詳しくは覚えていないけれど、確か生地のグルテンを落ち着かせたり生地のムラをなくすんだったっけな。オーブンレンジはこのキャンピングカーにある道具で、食材を温めたり熱を加えることができる道具だよ」
このキャンピングカーにはオーブンレンジを搭載してある。こうなってしまうと、キャンピングカーに搭載したのはただの電子レンジではなく、ちょっと高価だがオーブンレンジにしておいてよかったな。
「うん、初めて作った割にはちゃんとしたクッキーの味になっているな」
「……っ!? シゲト、とても甘くて美味しいです!」
「ホーホー♪」
クッキーを食べるとジーナとフー太は満面の笑みを浮かべた。もしかしたら角ウサギのソテーを食べた時よりも嬉しそうかもしれない。2人とも砂糖を使ったお菓子を食べるのは初めてなんだろうな。
クッキーは初めて作った割にはうまくできたようだ。計量カップなんかはあるけれど、砂糖や小麦粉の量なんかはだいぶ目分量だったが、ちゃんとクッキーの味がする。
この味だと、次回はもう少し砂糖を多く入れた方がちょうどよさそうかもしれないな。
今回使った小麦粉や砂糖、バターの量なんかはメモってあるから、次回作る時に活かしていくとしよう。こうやって自分たちで少しずつ手探りでレシピを探していくのも面白いかもしれない。
「そういえばジーナとフー太はアイテムボックスから物を取り出せなかったんだよね?」
「あの黒い渦ですよね。ええ、私には触れられませんでした」
「ホー! ホー!」
フー太も首を振る。
このキャンピングカーの拡張機能で追加したアイテムボックス機能によって、箪笥の一番上を開けるとそこに黒い渦が現れる。このアイテムボックスに物を入れると時間の流れが止まったまま物を保存できるのだが、ジーナとフー太には使うことができなかったらしい。
これについてはキャンピングカーの所有者である俺だけがこの機能を使用できるといった感じなのかもしれない。
「クッキーはアイテムボックスに保存しておくから、もしもほしくなったら俺に言ってね。まあ、クッキーはたくさん食べると太りやすいから、少しずつ食べるようにしよう」
「そ、そうですね! ……最近はあまり運動もしていないですし、ついシゲトのおいしいご飯をたくさん食べてしまっているので気を付けなければいけません」
「ホー?」
まあフー太は飛んでいるだけで結構な運動にもなっているし、あんまり魔物に痩せているも太っているもないのかもしれないな。
ジーナは少し自分のお腹を触って確認している。今はとても細くて可愛らしいお腹だが、確かに村にいた時よりも運動量は落ちて、食べる量は増えているから多少は気になるのかもしれない。
俺もキャンピングカーを運転していて運動は全然していないから少し気を付けないといけないな。拡張機能に自動ダイエット機能なんかがあればいいのに……当然そんな都合の良い拡張機能はなかったけれど。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「よし、それじゃあ今日はフェビリー村へ向けて出発しよう!」
「はい。私もハーキム村以外の村へ行くのは初めてなので、とても楽しみです」
「ホー!」
そしてその翌日の朝、簡単な朝食を食べて、キャンピングカーを出発させる。
結局昨日作った鳴子は反応することがなく、一夜を明かすことができた。やはり万一何かが近付いてきたら音が鳴ると分かっていると、少しだけ心に余裕が生まれてよく眠れるな。
こちらの鳴子はちゃんと回収して、また屋外へ泊まる時に使う予定だ。さて、次の目的地を目指すとしよう。
「……よし、ここら辺で降りるとしよう」
キャンピングカーで走り始めてから約1時間、特に問題も起こることなく、目的地であるフェビリー村から離れて数kmのところまで到着した。キャンピングカーの存在をばらさないためにも、多少は離れたことろから歩かないとな。それになんだかんだで良い運動にもなるからちょうど良いのかもしれない。
お金や何かあった時の荷物をリュックに詰めて、ジーナとフー太と一緒に歩いてフェビリー村まで到着した。
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