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第53話 フェビリー村
しおりを挟む「いらっしゃいませ、フェビリー村へようこそ!」
村の入り口にある木の柵を超えてフェビリー村へと入る。
するとすぐに村の人が2人ほど現れ、俺たちを迎えてくれた。この村の近くにあるフェビリーの滝がこの国の有名な観光スポットとなっているようだし、観光で訪れる人も多いのだろうな。
「はるばるこんな辺鄙な村へようこそいらっしゃいました。フェビリーの滝への観光で……っ!? そ、そちらにいらっしゃるのはウッズフクロウ様でございますか!?」
「た、ただのフクロウではない! ウッズフクロウ様だ!」
「ホー?」
どうやらこのフェビリー村でもジーナがいたハーキム村と同じようにウッズフクロウを敬っているみたいだな。当のフー太はよく分からないような顔をしているみたいだけれど。
「はい、怪我をしていたところを治療してあげたらとても懐かれてしまったようで、そのまま一緒に旅をしているんですよ。申し遅れましたが、俺はシゲトと申します。こちらは護衛をお願いしているジーナです」
「初めまして、ジーナと申します」
「ほ、ほう。ジーナ様はエルフでございましたか。な、なんとも面白い組み合わせのようですね……」
まあ、ウッズフクロウのフー太とエルフのジーナと普通の人族の俺。なんとも珍しい組み合わせであることは否定できないな。
「フェビリーの滝を見に来たのですが、どちらにあるんですか?」
「ええ、フェビリーの滝ですね。あちらの方に森へ続く道がありまして、そこから数時間ほど山を登った場所にございますよ」
村の人が指を差した方向を見ると、そこにはハイキングコースの入り口のように整備された道があった。どうやら元の世界の観光地のように、コースとして整備されているみたいだな。
「もしよろしければ、有料となりますが護衛兼案内人をお付けしましょうか?」
「えっ、護衛って盗賊でも出るんですか?」
「いえ、とんでもございません! こちらはロッテルガの街からも近く、定期的に村の警備隊で付近を回っているため、盗賊が出ることはほとんどと言っていいほどないです。ですが、フェビリーの滝へ行くためには森を通って山を登っていくため、魔物はしばしば現れます。人を襲うような魔物はほとんどいないのですが、念のためという方にご案内をしております」
「なるほど……」
確かに観光地みたいな人通りの多い場所にアジトを構える盗賊なんていないか。大きな街からも近いし、獲物は多いかもしれないが、リスクが高すぎるのだろう。
「シゲトとフー太様の護衛は私がいるので大丈夫ですね!」
自信満々にドヤ顔を決めるジーナ。確かに魔物が相手なら、護衛はジーナひとりいれば大丈夫そうかな。
「そうだね。でもせっかくなら、案内役は頼んでみようか」
護衛はジーナがいるが、せっかくの機会だし案内人というものを雇ってみよう。元の世界で観光をしながら見どころなどを紹介してくれるガイドさんみたいなものに違いない。
元の世界ではガイドさんを雇ったことはないが、この世界のガイドがどんなものなのか知っておきたい。お金には多少の余裕はあることだし、一度試してみて不要だったら次回からは頼まなければいい。
「ありがとうございます! それでは少々お待ちくださいませ。おい、今案内は誰が行けそうだ?」
30代くらいの村の人が、奥にいる人たちへ声を掛ける。
「……今日は朝からだいぶ出払っているからな。ちょっと待ってくれ」
「すみません、今日は普段より観光に来てくれたお客様が多いようで……」
「ええ、大丈夫ですよ。結構フェビリーの滝を訪れる人も多いんですね」
「大変申し訳ございません。フェビリーの滝までは数時間ほどかかるので、前日はこちらの村に泊まって、早朝から向う方が多いのです」
「ああ、なるほど」
時刻はまだ昼前だが、どうやら前日はこの村に泊まって、早朝から滝を見に向かう観光客が多いらしい。
確かにこの村の位置だと、街から馬車で1日くらいで、歩けば2日くらい掛かってしまうから、この村に泊まって次の日の朝から観光に行く人が多いのかもしれない。
なるほど、観光地を巡る時にはその辺りもちゃんと考慮した方がいいんだな。
「なに、コレット? あいつは駄目だ、ウッズフクロウ様を連れられているお方に付けるわけにはいかん! すみません、すぐに案内をできる者が出払っているようでして、今しばらくお待ちいただいてもよろしいでしょうか……」
どうやら案内できる人がそのコレットという人以外にはいないようだ。
「そのコレットという者は何か問題のある者なのか?」
俺も気になっていたことをジーナが村の人に聞いた。
「え、ええ……実はコレットは黒狼族の者でして……」
「黒狼族?」
こくろう……黒い狼の獣人さんということだろうか? 獣人だから問題があるということなのだろうか?
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