キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

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連載

【番外編】キャンプ場とキャンピングカー①

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※こちらの番外編は別作品『異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!』のコラボ小説となります。

本編は別となりますので、3巻以降の内容は187話までお進みくださいませ。





「……んん、なんだこれは?」

「どうかしたのですか、シゲト」

「どうしたの、シゲトお兄ちゃん?」

「ホホー?」

 昼下がりの午後。

 この世界の文明では存在しない大きな車、キャンピングカーに乗った別の世界から転移してきたシゲトが首を傾げる。

 シゲトと一緒にキャンピングカーで旅をしているエルフのジーナ、黒狼族のコレット、そして白いフクロウの魔物であるフー太がシゲトの操作しているカーナビをのぞき込む。

「いや、なんか地図に今まで見たことない表示がされているんだ。……これはテントだよな? いや、まさかこんなところにキャンプ場があるわけないし……」

 カーナビにはデフォルメされた地図が表示されている。そんな中で、これまで見てきた街や村とは違ったシゲトが見たことのない元の世界のテントが表示されていた。

「シゲトお兄ちゃん、キャンプ場ってなあに?」

 黒い柔らかなケモミミとフサフサとした尻尾を持つコレットがシゲトへ尋ねる。

「キャンプ場というのは俺の故郷にあった宿泊施設だな。そこでは自然の中で焚き火をしたり、料理を作ったりしてのんびりと過ごせる場所なんだ」

「……普段の野営とどう違うのですか?」

「ホー?」

「確かに野営みたいなものなんだけれど、キャンプ場は安全にのんびりと過ごせる場所なんだよね」

 この世界には魔物と呼ばれる危険な生物や盗賊が存在するため、夜は見張りをしながら気を張りながら寝なければならない。とはいえ、キャンピングカーに守られているこの一行は普通に野営をするよりも安全に眠れることは間違いないが。

「ちょっと気になるから、次の目的地はここでいい?」

「ええ、もちろんですよ」

「うん、もちろん!」

「ホーホー!」

 次の目的地が決定し、シゲトがアクセルを踏むと、キャンピングカーがゆっくりと走り出した。



「……あれ、地図だとここの先なんだけれどな?」

 しばらくキャンピングカーが走った後、道を走っていたキャンピングカーが停車する。その先に道はなく、森が広がっているだけだった。

「確かに大きな道はないですが、人が歩いてできた道がありますよ」

「えっ、そうなんだ。キャンプ場だったら案内の看板くらい出してそうなものなんだけれどな……」

「シゲトお兄ちゃん、どうするの?」

「そうだな。地図だと少しだけ先だから、歩いていってみよう。だけど、もしかしたら盗賊のアジトとかいう可能性もゼロじゃないから、気を付けて進んで行こう」

「ええ、了解です」

「ホー!」



「……なぜにメイド服?」

 キャンピングカーをシゲトの能力で収納し、3人と1羽は森の中を進む。しばらく進むと開けた場所に出て、木の板でできた壁に囲まれた場所があった。

 シゲトは一瞬本当に盗賊のアジトかと疑ったようだが、入り口にいる女性が着ている服に反応した。

「メイド服ですか?」

「うわあ~可愛い服だね!」

「……とりあえず盗賊のアジトとかじゃないみたいだ。奥にテントも張ってあるし、本当にキャンプ場なのかな? あそこにいる女性へ聞いてみるか」

「ホー」

 一行は多少警戒を解き、この施設の入り口にいる女性の方へ進む。

「いらっしゃいませ。ようこそイーストビレッジキャンプ場へ」

 シゲトたちを出迎えたメイド服の女性はジーナと同じ長く尖った耳をしているが、その肌の色は褐色だった。彼女はダークエルフと呼ばれる珍しい種族であった。

「お客様は初めてですね。私はソニアと申します。ここはキャンプ場と申しまして、1泊銀貨5枚で宿泊できる施設となっております。こちらのテントを貸し出しておりまして、お客様ご自身で好きな区画にご自身で設営していただきます」

「……本当にキャンプ場だったのか。俺はシゲトと言います」

「お客様もキャンプ場を知っているのですね。少なくとも私はここ以外には知らなかったです。こちらでは宿泊だけでなく、日帰りで食事や温泉や読書などを楽しめる場所にもなっております」

「えっ、ここに温泉があるの!?」

「はい。当キャンプ場自慢の温泉がありますよ。温泉も宿泊料金に含まれます。もちろん温泉だけ利用することもできますよ」

「シゲト、ここに泊まりましょう!」

「僕も温泉に入りたいです!」

「ホー!」

「もう少しで日も暮れるし、そうしようか。それにしてもまさか温泉に入れるとはな」

「ありがとうございます。3名様と、こちらの可愛らしいフクロウさんは半額になります」

「はい、これでお願いします」

 シゲトがキャンプ場への入場料金をソニアへと渡す。

「はい、確かに。この辺りでは見ない真っ白なフクロウでとても可愛らしいですね。……あの、ほんの少しだけ触らせてもらえないでしょうか?」

「ホー?」

 ソニアの言葉はシゲト以外の者と同じでフー太には理解できないらしい。

「フー太、ソニアさんがちょっとだけ触ってもいいかだって」

「ホホー」

 シゲトが尋ねるとフー太が首を振る。ジーナやコレットにはすぐに気を許したフー太だったが、さすがに初対面の人に自分の身体を触らせたくないと思うのは当然のことだろう。

「……残念です」

「すみません、ソニアさん」

「いえ、こちらこそお客様に対して失礼しました。こちらへどうぞ」

 明らかにがっかりとしている様子であるソニアは女性のものとは思えない力でテントやテーブルなどを軽々と持ちあげて一行を案内する。彼女は女性ながらにして、元はAランクの腕利きの冒険者である。
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