30 / 84
第30話 広島県② 宮島、アナゴ飯、もみじ饅頭
しおりを挟む「ほう、これがこちらの世界の船なのじゃな!」
「これは宮島、別名厳島まで行くためのフェリーだね。片道10分くらいだから小さめの船だよ。この世界にはこの船の何十倍も大きな船があったりするね」
「何十倍!? それは想像もできないのじゃ……」
ここは宮島へ行くためのフェリー乗り場でもある。もちろんミルネさんの転移魔法なら、フェリーを使わず直接宮島にある厳島神社へと行けるのだが、せっかくならフェリーにも乗ってもらったほうが良いと思ったのだ。
宮島へのフェリーターミナルからは往復で500円もかからず、10分程度の道のりだ。
ミルネさんも異世界で船に乗ったことはあるらしいが、向こうの世界はまだ帆船らしいから、エンジン動力の船には驚いたようだ。
「ここは美しい島なのじゃな」
「本当ですね。海に囲まれた島ですか。沖縄を思い出しますね」
沖縄にはたくさんの島があるからな。そういえば喜屋武さんは沖縄のどこ出身なんだろうな。やはり那覇のある本島かな?
「フェリーでくる島って本当にいいよね。それぞれの離島には本当にいろいろな特色があるからなあ」
まあ宮島を離島というかは微妙なところであるが、フェリーで移動するだけで特別な場所に来たという感覚がある。特に九州や四国には離島が多く、旅中はいろいろな島を巡ったりもした。
身近なところでは東京からでもフェリーで伊豆諸島に日帰りで行けたりするからな。一度伊豆大島に行ったことがあるが、ご飯もおいしくて本当に楽しかった。普通の観光だけでなく、離島を巡る旅行もおすすめだぞ。
宮島の中央には弥山という山があり、ロープウェーで登ったりもできる。
「おお、ここにも鹿がおるのか」
「そうだね。奈良公園と同じで、この島にもたくさんの鹿がいるよ」
奈良公園と同じで、この島にもたくさんの鹿が生息して街中を歩いている。
「これはなんとも巨大なしゃもじですね」
「しゃもじ?」
「日本だと昔からご飯をよそうときにしゃもじを使っているんだ。ほら、あっちに普通のサイズのしゃもじがあるよ」
厳島神社へと向かう商店街の途中には日本一大きなしゃもじが展示されている。ここ宮島ではしゃもじが有名だ。宮島は昔から木製のしゃもじの有名な生産地で、しゃもじの起源もここ宮島だと言われている。
「こんな感じでしゃもじに文字が書いてあって、縁起物として売られているよ」
もちろん普通に使用するしゃもじも売られてはいるが、他にも『必勝』、『商売繁盛』みたいな文字が書かれた縁起物のしゃもじも販売されている。宮島のお土産としてはちょうどいいかもしれないな。
「おお、すごいぞ! 海の上に社や鳥居が立っているのじゃ!」
「赤色の社がとても綺麗ですね」
「厳島神社は日本三景のひとつで、世界遺産でもある場所だからね」
松島や天橋立と並ぶ日本三景のひとつで、日本の文化遺産のひとつでもある。
『神を斎き祀る島』という厳島の語源のように、古くから島そのものが神として信仰されており、この社はかなり昔に建てられた。
わざわざ潮の満ち引きがある海上に建てられたのは、島全体が神と崇められていたため、島の木を切ったり、土を削ることがないようにするためだといわれている。
「そしてこれが一番有名な大鳥居だ!」
厳島神社の社も有名だが、一番有名なのは海上に浮かぶこの巨大な大鳥居だろう。海の中に荘厳とたたずむ大きな赤い鳥居は、島の対岸からでも見ることができるらしい。
「干潮時には歩いて鳥居をくぐることができるんだよ」
「それは面白いですね」
今は海の中にたたずんでいるが、潮が引けば歩いて鳥居の場所まで行けるから面白い。景色としては潮が満ちているときのほうが綺麗だから、どの時間帯に行くかは迷うところなんだよな。
「今日はミルネさんがいるおかげで、夕日が沈む綺麗な時間帯を見ることができるからね」
「ほう、それはさぞ美しいのじゃろうな!」
そう、この大鳥居の一番の見どころは夕日が沈む時間帯や朝日が昇る時間帯なのだが、実はその時間には始発のフェリーはまだなく、最終便のフェリーはすでにないのだ。
そのため、本来なら夕日や朝日を見るためには宮島に一泊しなければならないのだが、ミルネさんの転移魔法があるため、帰りのフェリーの時間は気にしなくてもよいのである。本当に転移魔法って素晴らしい!
「これは愛知県で食べたうなぎじゃな!」
「おしいね。これはアナゴといって、うなぎとは少しだけ違うんだ。でもかば焼きにして食べることは一緒かな」
厳島神社で夕日の沈む美しい大鳥居を見たあと、広島県の名物であるアナゴ飯を出しているお店に来ている。
アナゴ飯とはアナゴの頭や骨、昆布などで取った出汁に醤油を混ぜたものでご飯を炊いて、そのご飯の上にアナゴのかば焼きを乗せた料理である。
「うなぎと違って少しタンパクな味ですね」
「うん。うなぎは脂が乗っているけれど、アナゴはタンパクでさっぱりとした味かもしれないね」
見た目はかなり似ているが、味は結構違う。うなぎの方が脂が乗っていてこっちのほうがおいしいという人のほうが多いかもしれないが、その分お値段もお高いからな。とはいえアナゴはアナゴでとてもおいしい。
そして夜のおやつには広島県銘菓のもみじ饅頭を買ってきた。広島県のお土産と言えばこれだろう。
また、最近では生もみじ饅頭という、皮に米粉と餅粉を使ったモチモチとした食感が特徴の新商品もある。ミルネさんはどちらも気に入ってくれたようでよかったな。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
223
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる