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勇者と魔王
過去編:遠い昔の聖夜の儀式
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名前とは何か、君は考えたことがあるだろうか
ただ他のものと区別するためのもの?
他人を他人として認識するためのもの?
答え合わせはできない
答えのない問いに解はない
それでも意味を見出すならば――
それは正解といえるだろう
XXXXX年前・地球
「今日は何の日でしょうか?」
艶のある黒い髪を後ろに1本でまとめた、所謂ポニーテールにしている女性、瀬奈は正面に座る僕を見ながら唐突に質問してきた。
「何か特別なことでもあった?もしかして瀬奈の誕生日だったりする?」
特に思い当たることもなかったのでそれらしいことを言ってみたが、瀬奈が頬を膨らましている様子を見る限り違ったらしい。案の定すぐにそっぽを向いて完全に拗ねてしまった。
「拗ねないで教えてよ。あんまりそういうこと知らないんだ」
「……っもう!仕方ないんだから。君、今日は12月24日なんだよ?」
「?」
「むむむ。ここまで言ってもわからないんだ。一般常識なんだからね!ク・リ・ス・マ・ス・イ・ヴ、だよ!それで明日がクリスマス!」
「ふーん。それで?その……クリスマス?っていうのは何をすればいいの?」
「えっ。そ、それは、す、好きな人と一緒に……じゃなくてっ!えーっと、そう!な、仲のいい友達同士でパーティーを開いて一緒に一夜を過ごすの!」
途中、瀬奈の声が極端に小さくなって聞こえなかった部分があったが空気を読んでスルーした。とりあえず、クリスマスとは友達同士で一緒に過ごす日らしい。とはいっても瀬奈とはいつも一緒にいるので普段と何も変わらない気がした。疑問に思い瀬奈に質問してみると、瀬奈は澄んだ瞳をまっすぐ向けてきて真剣さがはっきりと伝わる声で答えた。
「クリスマスは特別な日だよ。君は今までつらい思いをたくさんしてきたと思う。幼い時は家族と一緒に祝う日だから。私もクリスマスは楽しい思い出がたくさんある。君にもたくさん楽しい記憶を作ってほしい、私と」
それから瀬奈の過ごしたクリスマスの思い出をたくさん聞いた。話している瀬奈はとても幸せそうで聞いているだけの僕も自然と笑顔になってしまう。まるで僕自身が一緒に瀬奈と過ごしていたかのような懐かしさを覚える。
「そっか、僕はクリスマスっていうの知らなかったよ。素敵な日、なんだね」
「うんっ!だから君も明日は私に付き合うこと!」
「わかった。素敵なクリスマスになるといいね。」
♦♦♦
次の日、目覚めると知らない天井だった。
「っていうか、マジでここどこ!?」
「ん。起きたの?君、ちょっと寝坊だよ!わたしだけでパーティー会場の準備済ませちゃった。」
昨日、瀬奈の話で出てきたクリスマスパーティーの会場にそっくりだった。きれいに飾りつけさせたクリスマスツリー。イルミネーションをまとった様々な動物の模型。まるで別世界に迷い込んでしまったかのような光景が広がっている。おそらく魔法で作り出したんだろうが気合の入り方が半端じゃない。たった二人のパーティーにしては大規模すぎる。まぁ森の中で、結界もはってあるから安全だが。
「さぁ!これから買い出しだよ!早く支度して!」
「お、おう。」
♦♦♦
その日の夜は少年の思い出の中でも1、2を争う出来事だった。
大きな口を目いっぱい開けてかぶりついたチキンの味。一緒に食べたクリスマスケーキの口に広がる甘い味。窓から見える雪がイルミネーションの光とまじりあって幻想的な雰囲気を醸し出している。
「ねぇ、ここまであえて言わなかったことがあるの。」
「何?」
「クリスマスにはね、プレゼントをあげるものなんだ!」
「ええ!そんなこと一言も言っていなかったじゃないか。何も用意してないよ……」
「君は、私をいつも守ってくれている。それだけで、十分。私がしてあげられることはあまりないから」
それは違う!君は僕を救ってくれた。あの森でただ朽ちていくだけだった僕を!
思わず声を荒げて言いかえそうとした僕より先に瀬奈が話しかけてきた。
「でも、一つだけ受け取ってほしいものがある。君にあげたいものがある。恥ずかしいけど、このクリスマス独特の楽しく酔った雰囲気の中だったら、私も少しだけ勇気が出せるかなって」
「......」
「名前をあげる。いつまでも君って呼ぶのは嫌。君って呼ぶたびにあなたを遠い存在に思ってしまう。いつか離れ離れになってしまうと感じてしまうから」
そんな心配はいらない。
「僕はずっと瀬奈のそばにいる」
「だから、名前を受け取ってほしい!君はいつも、名前なんていらないっていうけどそれはダメ!名前って言うのは、存在の証明だから。その存在を示すものが名前だから。あなたの名前は○○。一生懸命、悩んで決めた。どうかな?」
そう言いながら瀬奈はそっと僕の頬に触れてきた。そこで初めて気づいた。僕の頬を流れる一筋の涙に。
「まるで僕の母親みたいだな」
僕は恥ずかしくなってうつむきながら無意識に思いを口にする。本音というものは、勝手に出てしまうものらしい。しかし瀬奈には聞こえてしまったようだ。にやにやしながら頭をなでてくる。
「ふふふ、だって私の方がお姉さんなんだから!」
♦♦♦
名前とは、その存在を示す言の葉。
瀬奈という女性が「名前」に見出した意味。
それを真実だというのなら―――
名前をもらう、あるいは名前を付ける。本来ならこの世に生を授かった時に行われる儀式。
ノワールの中に眠る、遠い、遠い昔の思い出。
しかしその記憶は決して消えることはない。
ただ他のものと区別するためのもの?
他人を他人として認識するためのもの?
答え合わせはできない
答えのない問いに解はない
それでも意味を見出すならば――
それは正解といえるだろう
XXXXX年前・地球
「今日は何の日でしょうか?」
艶のある黒い髪を後ろに1本でまとめた、所謂ポニーテールにしている女性、瀬奈は正面に座る僕を見ながら唐突に質問してきた。
「何か特別なことでもあった?もしかして瀬奈の誕生日だったりする?」
特に思い当たることもなかったのでそれらしいことを言ってみたが、瀬奈が頬を膨らましている様子を見る限り違ったらしい。案の定すぐにそっぽを向いて完全に拗ねてしまった。
「拗ねないで教えてよ。あんまりそういうこと知らないんだ」
「……っもう!仕方ないんだから。君、今日は12月24日なんだよ?」
「?」
「むむむ。ここまで言ってもわからないんだ。一般常識なんだからね!ク・リ・ス・マ・ス・イ・ヴ、だよ!それで明日がクリスマス!」
「ふーん。それで?その……クリスマス?っていうのは何をすればいいの?」
「えっ。そ、それは、す、好きな人と一緒に……じゃなくてっ!えーっと、そう!な、仲のいい友達同士でパーティーを開いて一緒に一夜を過ごすの!」
途中、瀬奈の声が極端に小さくなって聞こえなかった部分があったが空気を読んでスルーした。とりあえず、クリスマスとは友達同士で一緒に過ごす日らしい。とはいっても瀬奈とはいつも一緒にいるので普段と何も変わらない気がした。疑問に思い瀬奈に質問してみると、瀬奈は澄んだ瞳をまっすぐ向けてきて真剣さがはっきりと伝わる声で答えた。
「クリスマスは特別な日だよ。君は今までつらい思いをたくさんしてきたと思う。幼い時は家族と一緒に祝う日だから。私もクリスマスは楽しい思い出がたくさんある。君にもたくさん楽しい記憶を作ってほしい、私と」
それから瀬奈の過ごしたクリスマスの思い出をたくさん聞いた。話している瀬奈はとても幸せそうで聞いているだけの僕も自然と笑顔になってしまう。まるで僕自身が一緒に瀬奈と過ごしていたかのような懐かしさを覚える。
「そっか、僕はクリスマスっていうの知らなかったよ。素敵な日、なんだね」
「うんっ!だから君も明日は私に付き合うこと!」
「わかった。素敵なクリスマスになるといいね。」
♦♦♦
次の日、目覚めると知らない天井だった。
「っていうか、マジでここどこ!?」
「ん。起きたの?君、ちょっと寝坊だよ!わたしだけでパーティー会場の準備済ませちゃった。」
昨日、瀬奈の話で出てきたクリスマスパーティーの会場にそっくりだった。きれいに飾りつけさせたクリスマスツリー。イルミネーションをまとった様々な動物の模型。まるで別世界に迷い込んでしまったかのような光景が広がっている。おそらく魔法で作り出したんだろうが気合の入り方が半端じゃない。たった二人のパーティーにしては大規模すぎる。まぁ森の中で、結界もはってあるから安全だが。
「さぁ!これから買い出しだよ!早く支度して!」
「お、おう。」
♦♦♦
その日の夜は少年の思い出の中でも1、2を争う出来事だった。
大きな口を目いっぱい開けてかぶりついたチキンの味。一緒に食べたクリスマスケーキの口に広がる甘い味。窓から見える雪がイルミネーションの光とまじりあって幻想的な雰囲気を醸し出している。
「ねぇ、ここまであえて言わなかったことがあるの。」
「何?」
「クリスマスにはね、プレゼントをあげるものなんだ!」
「ええ!そんなこと一言も言っていなかったじゃないか。何も用意してないよ……」
「君は、私をいつも守ってくれている。それだけで、十分。私がしてあげられることはあまりないから」
それは違う!君は僕を救ってくれた。あの森でただ朽ちていくだけだった僕を!
思わず声を荒げて言いかえそうとした僕より先に瀬奈が話しかけてきた。
「でも、一つだけ受け取ってほしいものがある。君にあげたいものがある。恥ずかしいけど、このクリスマス独特の楽しく酔った雰囲気の中だったら、私も少しだけ勇気が出せるかなって」
「......」
「名前をあげる。いつまでも君って呼ぶのは嫌。君って呼ぶたびにあなたを遠い存在に思ってしまう。いつか離れ離れになってしまうと感じてしまうから」
そんな心配はいらない。
「僕はずっと瀬奈のそばにいる」
「だから、名前を受け取ってほしい!君はいつも、名前なんていらないっていうけどそれはダメ!名前って言うのは、存在の証明だから。その存在を示すものが名前だから。あなたの名前は○○。一生懸命、悩んで決めた。どうかな?」
そう言いながら瀬奈はそっと僕の頬に触れてきた。そこで初めて気づいた。僕の頬を流れる一筋の涙に。
「まるで僕の母親みたいだな」
僕は恥ずかしくなってうつむきながら無意識に思いを口にする。本音というものは、勝手に出てしまうものらしい。しかし瀬奈には聞こえてしまったようだ。にやにやしながら頭をなでてくる。
「ふふふ、だって私の方がお姉さんなんだから!」
♦♦♦
名前とは、その存在を示す言の葉。
瀬奈という女性が「名前」に見出した意味。
それを真実だというのなら―――
名前をもらう、あるいは名前を付ける。本来ならこの世に生を授かった時に行われる儀式。
ノワールの中に眠る、遠い、遠い昔の思い出。
しかしその記憶は決して消えることはない。
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