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2章
ビッチング
――翠、入っていいかしら?
翠くんの部屋の前で、おばちゃんが声をかけても中からの返事は返ってこない。
「楓くん、今の翠はもしかしたら楓くんの知っている翠ではないかもしれない……」
おばちゃんが言いたいことは、なんとなく分かる。
僕は、どんな翠くんでも好きなんです知っての通り、おばちゃんにも色々と協力してもらって、やっと翠くんと付き合えたんだよ……だから僕からは絶対に翠くんから離れてあげない。」
おばちゃんが、ありがとうと言っうと目尻が滲んでいるように見えたけど、気付かないふりをした。
――翠くん?
部屋の前で声をかけてみるけれど、返事はなかった。
部屋のなかに翠くんが居る気配はあるんだけど……
「楓くんビッチングって言葉を知ってる?」
そう問いかける、おばちゃんの声が震えているのが分かる。
ビッチングって言葉は初めて聞いた僕は首を横に振った。
「――詳しくは楓くんのお父さんが話してくれると思うのだけど……簡単に言うと、翠の体質が変わったの……」
おばちゃんの言っている意味が分からない……
「翠くんの部屋に入ってもいい?」
僕の言葉に頷くと、おばちゃんは私は翠の部屋に入れないからとリビングへと向かった。
僕はドアをノックしたけれど返事がなくわるいと思いながらも部屋へと足を踏み入れた。
シャッターが閉まっていて電気も付いていない。
翠くんと声をかけるとベッドで何かが動く気配を感じる。
いつもなら、楓と優しく僕の名前を呼ぶのに……
その声が聞けないだけで不安になる。
いま何が起こっているのか僕には想像すら出来なくて、おばちゃんが言ってた僕の知ってる翠くんじゃないの意味も分からない。
そもそも『ビッチング』ってなに?
――翠くん……
僕の事を嫌いになったんじゃないよね……
不安な気持ちだけが僕の中で大きくなるのが分かる。
お互いに言葉を発せずに、どれくらい時間が経っただろう。
目がなれてきて、ベッドの上で布団にくるまってる翠くんへと向かい足をすすめる。
「翠くん、僕のことが嫌になっちゃたの?」
ふいに出た言葉を僕は止めることが出来なかった。
「か……え……で?」
布団だと思っていたソレは衣類やタオル等が乱雑に、けれど規則性をもっている塊だった。
そして、その中に埋もれていた翠くんは、それらを抱き締めながら僕の首へと腕を回した。
会いたかった……
会いたかった……
会えなくて、苦しかった……
楓に会えなくて……苦しかった……
しゃくりをあげながら、子どものように泣いている翠くんに僕は驚きつつも、そんな姿でさえも、すんなりと受け入れている事に気付く。
背中をポンポンとすると肩越しに翠くんの涙が落ちるのを感じた。
――楓から離れたくない……
――俺はもう楓以外には、なにもいらない……
――楓と、ずっと一緒に居たい……
そう話す翠くんに、改めて違和感を感じる。
受験が終わって、合否を楽しみにしていた翠くん。
大学に行っても、変わらずとは言えなくても2人の時間を作ろうと言っていた翠くんらしくない。
翠くんの顔を見て話がしたい。
僕はテーブルに置いてあるリモコンで部屋の電気を付け、翠くんの顔を見て、言葉が出なかった。
腫れた目元に、くっきりと浮かんだ隈。
健康的な翠くんが、やつれているように見える。
おばちゃんが、僕の知ってる翠くんではないかもしれないと言っていたのが理解できた。
「翠くんなにかあったの?」
僕の言葉を聞くと、座っている僕の腰へと腕を回した翠くんは、うわ言のように淋しい……苦しい……離れたくないと言葉を発するだけだった。
「翠くん僕は翠くんから絶対に離れない、ずっと一緒だよ。」
そう翠くんに言っても、声を出して泣くだけだった。
その時、ドアの方から視線を感じ、振り向くと苛立ちを隠すつもりもなく腕を組んでいる緑兄が僕に向かって口を開く。
――翠はΩになったんだ……αのお前を求めて……この状態になっているんだ……お前と離れた時からずっと……
緑兄の言っている意味が分からない。
翠くんはβのはず。
もしかして……
僕が望んでしまったから……
翠くんが僕だけのΩになってほしいと……
僕はこの時に血の気が引くのを初めて体感した。
翠くんの部屋の前で、おばちゃんが声をかけても中からの返事は返ってこない。
「楓くん、今の翠はもしかしたら楓くんの知っている翠ではないかもしれない……」
おばちゃんが言いたいことは、なんとなく分かる。
僕は、どんな翠くんでも好きなんです知っての通り、おばちゃんにも色々と協力してもらって、やっと翠くんと付き合えたんだよ……だから僕からは絶対に翠くんから離れてあげない。」
おばちゃんが、ありがとうと言っうと目尻が滲んでいるように見えたけど、気付かないふりをした。
――翠くん?
部屋の前で声をかけてみるけれど、返事はなかった。
部屋のなかに翠くんが居る気配はあるんだけど……
「楓くんビッチングって言葉を知ってる?」
そう問いかける、おばちゃんの声が震えているのが分かる。
ビッチングって言葉は初めて聞いた僕は首を横に振った。
「――詳しくは楓くんのお父さんが話してくれると思うのだけど……簡単に言うと、翠の体質が変わったの……」
おばちゃんの言っている意味が分からない……
「翠くんの部屋に入ってもいい?」
僕の言葉に頷くと、おばちゃんは私は翠の部屋に入れないからとリビングへと向かった。
僕はドアをノックしたけれど返事がなくわるいと思いながらも部屋へと足を踏み入れた。
シャッターが閉まっていて電気も付いていない。
翠くんと声をかけるとベッドで何かが動く気配を感じる。
いつもなら、楓と優しく僕の名前を呼ぶのに……
その声が聞けないだけで不安になる。
いま何が起こっているのか僕には想像すら出来なくて、おばちゃんが言ってた僕の知ってる翠くんじゃないの意味も分からない。
そもそも『ビッチング』ってなに?
――翠くん……
僕の事を嫌いになったんじゃないよね……
不安な気持ちだけが僕の中で大きくなるのが分かる。
お互いに言葉を発せずに、どれくらい時間が経っただろう。
目がなれてきて、ベッドの上で布団にくるまってる翠くんへと向かい足をすすめる。
「翠くん、僕のことが嫌になっちゃたの?」
ふいに出た言葉を僕は止めることが出来なかった。
「か……え……で?」
布団だと思っていたソレは衣類やタオル等が乱雑に、けれど規則性をもっている塊だった。
そして、その中に埋もれていた翠くんは、それらを抱き締めながら僕の首へと腕を回した。
会いたかった……
会いたかった……
会えなくて、苦しかった……
楓に会えなくて……苦しかった……
しゃくりをあげながら、子どものように泣いている翠くんに僕は驚きつつも、そんな姿でさえも、すんなりと受け入れている事に気付く。
背中をポンポンとすると肩越しに翠くんの涙が落ちるのを感じた。
――楓から離れたくない……
――俺はもう楓以外には、なにもいらない……
――楓と、ずっと一緒に居たい……
そう話す翠くんに、改めて違和感を感じる。
受験が終わって、合否を楽しみにしていた翠くん。
大学に行っても、変わらずとは言えなくても2人の時間を作ろうと言っていた翠くんらしくない。
翠くんの顔を見て話がしたい。
僕はテーブルに置いてあるリモコンで部屋の電気を付け、翠くんの顔を見て、言葉が出なかった。
腫れた目元に、くっきりと浮かんだ隈。
健康的な翠くんが、やつれているように見える。
おばちゃんが、僕の知ってる翠くんではないかもしれないと言っていたのが理解できた。
「翠くんなにかあったの?」
僕の言葉を聞くと、座っている僕の腰へと腕を回した翠くんは、うわ言のように淋しい……苦しい……離れたくないと言葉を発するだけだった。
「翠くん僕は翠くんから絶対に離れない、ずっと一緒だよ。」
そう翠くんに言っても、声を出して泣くだけだった。
その時、ドアの方から視線を感じ、振り向くと苛立ちを隠すつもりもなく腕を組んでいる緑兄が僕に向かって口を開く。
――翠はΩになったんだ……αのお前を求めて……この状態になっているんだ……お前と離れた時からずっと……
緑兄の言っている意味が分からない。
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もしかして……
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翠くんが僕だけのΩになってほしいと……
僕はこの時に血の気が引くのを初めて体感した。
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