某国の皇子、冒険者となる

くー

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第3章 定めに抗う者たち

2. 素材を求めて

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俺はウィルとジンと一緒に、ブラウフォンスへと向かっていた。
エトワールの病の特効薬となる薬の、材料を手に入れるために。
アルゴグの新鮮な胆嚢――それが薬作りに必要不可欠な素材だった。

アルゴグというモンスターの名は、長年生きているらしい魔族のジンですら聞いたことがないそうだ。
「ちっ……役立たずのお気楽魔族が」
「ノア~…ウィルがいじめるよぅ~」
ジンは悪くない気もするけど、ウィルに同感……


魔法使いの森からの町に向かう途中で、通りがかりの馬車に乗せてもらうことができた。

馬車に揺られ眠気を感じ始めた頃、ブラウフォンスの町に入った。

「ウィル見て。あの家、もう誰か住んでるみたいだよ」
この街に着いてすぐ暮らし始めた、赤い屋根の家の前を馬車は通りかかった。
魔術師ホルデウムの屋敷に住み込みで修行をさせてもらえることになったので、二週間ほどで借家契約を解除したのだった。
「ああ、懐かしいなぁ…」

あの頃は、城にぜったいに帰らないために、居心地のいい拠点となる場所を確保しようと、まだ冒険者試験にも受かってないのに家を借りたんだよな…

『一軒家に住む駆け出し冒険者って、めずらしいですよね』

エトワールとの会話を思い出していた。
ぜったいに助けてやるからな――


市街地の中心で馬車を降り、素材屋や魔法道具屋など、少しでも取り扱っている可能性のありそうな店を回るが、すべて空振り……
素材屋の店主の情報は、俺たちを更なる絶望へと叩き落とした。
『アルゴグって…伝説級のレアモンスターだぜ。ここ二十年出回ってねぇよ…しかも新鮮な……ってなぁ、帝都の魔導院にも在庫があるはずないぜ』
まずい…どうしよう……
店主の話を聞いて、兄に頼るという道も絶たれてしまった。

「アルゴグを倒すしかないね~」
「簡単に言うな。お気楽魔族」
ジンに即座に噛みつくウィル。ウィルはまだ、ジンが俺にしたことを根に持っているようだった。かく言う俺も忘れてないが。

「そんな珍しいモンスターがそこらへんを歩いててすぐに見つかると思うか?」
「わかんないよ~。ノアってめちゃくちゃ強運の持ち主だし。ていうか俺、お気楽魔族じゃなくて、エリート魔族だからわかるんだ」
「じゃあ俺の運はどんなもんだよ」
「ウィルは全然~平均以下ってかんじ。たぶんもうすぐモンスターにやられて死ぬと思う」
「このっ…インチキ魔族が……っ!」
「ふたりとも……置いてくぞ」

俺たちは冒険者ギルドにたどり着いた。
石造りの壁に鉄製の黒い扉――


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