某国の皇子、冒険者となる

くー

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第4章 古代遺跡探索行

8. ずるい

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その日は兄上が手配してくれたブラウフォンス一の高級宿に泊まることになった。豪勢な夕食の後、俺たちは明日に備えて早々に部屋で休むことになり、一人につき一室が宛がわれた。
兄上には仕事が山積しているらしく、宿の一室に缶詰めにして処理させるとラウルスが息巻いていた。

明日は朝早いし、そろそろ寝ようかな。
寝る支度と明日の準備を整え終えた頃、扉が控えめにノックされる音が部屋に響いた。
「はい――?どなたでしょうか?」
「私だ。開けてくれるか?ルクス」
ドアスコープからも確認したところ、たしかに兄上が扉の向こうに立っていた。

「兄上!どうかされたのですか?」
鍵を開け、兄を部屋に招き入れた。
「今、お茶の用意をしますね」
「いや、時間が惜しい。ラウルスから与えられた時間は5分しかないのだ」
「お仕事たいへんなのですね…」
「ああ、目を通さねばならない書類が多すぎて困る――ルク…ノアと一緒に遺跡探索ができると思うと楽しみすぎて眠れないだろうから、溜まりに溜まっている書類仕事を片付けろ、とラウルスにせっつかれていてな……アイツは鬼だ」
さすがラウルス……

「ルクス……何か、困っていることはないか?何か私にしてやれることは?」
「兄上には、素晴らしい贈り物をたくさんいただきました!ほんとうに、感謝しております」
「最高の冒険者には一流の装備が必要だからな。当然のことをしたまでだ」
「ありがとうございます!」
「うむ……だが、気を付けるのだぞ、ルクス。おまえは良き師に巡り合い、たしかな実力をつけたようだが、油断は禁物だ。どこに脅威が潜んでいるやもしれん」
「はい――わかりました、兄上」
「…それから、やはり、少しでもいいから――」
コンコン――

扉を叩くノックの音が、兄上の発言を遮った。
「陛下、休憩時間はとっくにすぎていますよ。早急にお部屋にお戻りください」
「……地獄の番人のお出ましか。ルクス…なごり惜しいが……」
「はい、兄上。お忙しいのに、こちらへ来てくださってありがとうございました。お仕事がんばってくださいね」
「ああ、おやすみ……」
「おやすみなさい……」
去りゆく兄上を見送るあいだ中、心臓が締め付けられるかのように、苦しかった。


「さて、そろそろ寝よう」
俺は豪奢な寝台に横になった。

それにしても……兄上と遺跡探索をするなんて、想像したこともなかった……明日はどんな一日になるんだろうか……

寝入る直前、誰かの話し声がきこえた気がしたが、俺の意識はすぐに途切れた。



ノアばっかり……にいさまとたくさんお話して、ずるい……ノアなんか、いなくなればいいのに……


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