光を失ったある女性の物語 25才の恋

蔵屋

文字の大きさ
2 / 3

第二章

しおりを挟む
愛菜はいつものように振る舞っている。
誰にも気づかれないように。
「ただいま(笑い)」
「あら。お帰りなさい(笑い)」
祖母の松(70才)が愛菜に声をかけた。
「おばあちゃん、お腹すいたわ」
「そうかい。冷蔵庫の中に松前漬けがあるよ。ご飯もあるよ」
「ありがとう。先に食べるね」
「そうしなよ。お母さんもお父さんも今夜は遅いらしいよ」
「ありがとう。私疲れたから先にお風呂も入って休むね」
「ああ。分かったよ。疲れた時は休みなよ」
愛菜はおばあちゃんにそう言うと先にご飯を食べて、お風呂に入った。
ゆっくり湯船に浸かり一日の疲れを癒した。
しかし、自分の目のことが気がかりであった。
愛菜は風呂から上がり自分の部屋に入り、三好医師に言われた病名をネットで検索して調べ始めた。
病名の検索名は網膜色素変性症もうまくしきそへんせいしょうである。
検索結果をコピーしてiPhoneのメモ機能に貼り付けてた。
この病気は網膜という目の中の光を感じる細胞に異常がみられる病気で「緑内障」・「糖尿病性網膜症」に次いで現在日本での失明原因の第3位だということが理解出来た。
しかも難病指定にもされている病気で、日本国内では4000~8000人に1人がこの病気で苦しんでいると言われているということも理解出来た。
そして網膜色素変性症もうまくしきそへんせいしょうに罹患した約半数の原因としては「遺伝子異常」であるということも理解できた。
ただ親が「網膜色素変性症」だからといって、その子どもが必ず発病するわけでもない。自分が結婚して子供が出来たとしても、遺伝はしないだろうと思った。
そして愛菜が最も心配しているのはその病気の症状であった。
夜間、暗いところでものが見えにくくなる夜盲という症状である。
そして見たいものがはっきり見えないという視力低下である。
また、視野が狭まるという視野狭がある。
網膜の中の光を感じる細胞としては、
錐体すいたい細胞がある。
視力や色覚に必要な細胞である。
杆体かんたい細胞は視野や暗い中で光を感じる働きがある。
この二つの細胞がある。
つまり、この2つの細胞が年齢よりも早く老化し機能しなくなってしまうため、視細胞が働かなくなった部分は光を感じとれなくなり失明に至るのだ。
特に視野や暗い中で光を感じる
杆体かんたい細胞から障害が出る為、症状としては「夜盲」からおこる事が多いのだ。
愛菜の目はすでに左眼がぼやけるようになり夜盲という視野の暗さや視野狭窄が気になるようになっていたのだ。
しかし、三宅医師には怖くて話すことが出来なかったのだ。
もし話していれば、さらなるとんでもない一言『失明になりますよ。手遅れです』そんな話を聞きたくなかったのであった。
しかも愛菜はすでに視界が暗いので歩くのが怖く感じるようになっていたのだ。
愛菜は明日は仕事を休んで大阪大学医学部附属病院の眼科を受診することを決めたのであった。
愛菜は父親にも、母親にも祖母にも相談出来ない。
ましてや恋人の流星にも相談することが出来なかったのであった。
それは病気に対する怖さなのか。それとも『失明』という受け入れ難い光を失うことの怖さなのか、いずれにしてもひとり静かに考えてみたいと思っていたのだ。
次回、愛菜の目の病気の大学病院での
診察結果についてを、お楽しみ下さい。



to be continued

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

処理中です...