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第七話 氷の公爵の嫉妬と、眠れぬ夜の拘束
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「公爵夫人にお会いできるとは光栄です! 俺、ずっとお噂を伺っていました!」
目の前に立つ、太陽のように明るい笑顔を浮かべた青年。 金の髪が汗で額に張り付き、鍛え上げられた肉体を騎士服に包んだ彼は、人懐っこい瞳で私を見つめていた。
王城の騎士団演習場。 土埃と汗の匂いが漂う男たちの職場で、私は場違いなほど優雅な日傘を差して立っていた。 アレクシス様に連れられて見学に来たのだが、彼が部下たちへの指示出しに行っている間に、一人の若い騎士が話しかけてきたのだ。
「えっと……私の噂、ですか?」
私は少し戸惑いながら尋ねた。 どうせ「金で買われた没落令嬢」とか「氷の公爵の飾り妻」といったろくでもない噂だろう。
しかし、青年騎士――レオナルドと名乗った彼は、目を輝かせて言った。
「はい! あの『氷の公爵』閣下が、片時も離さずに溺愛している奥様だと! 先日の舞踏会でも、悪い虫がつかないようにマントで隠して連れ去ったとか、屋敷では膝の上に乗せて仕事をしているとか、騎士団内でも持ちきりなんですよ!」
「ぶっ!!」
私は思わず吹き出しそうになった。 な、何その恥ずかしい噂!? 膝の上での仕事なんて、つい昨日の出来事だ。 なぜ情報が漏れているの? まさか屋敷の使用人の中にスパイが?
「あ、あの、それは少し誤解が……」
「いやぁ、閣下が人間らしい感情をお持ちだと知って、俺たち部下も安心しているんです。以前の閣下は、本当に氷像みたいに冷たくて、近づくだけで凍傷になりそうでしたから」
レオナルド様は屈託なく笑うと、私の手を取った。 騎士の礼儀として、手の甲に口付けをしようとする仕草だ。
「閣下を変えてくださった女神様に、感謝の口付けを――」
彼が身を屈め、私の手に唇を寄せようとした、その瞬間だった。
ピキキッ……!
空気が、鳴いた。 いや、物理的に何かが凍る音がした。
「……ッ!?」
レオナルド様が弾かれたように顔を上げ、周囲を見回す。 演習場の気温が、真夏のような日差しの中であるにもかかわらず、急激に低下していた。 吐く息が白い。 地面の土が、霜柱を立てて白く染まっていく。
「な、なんだ!? 急に寒気が……」
「……レオナルド」
地獄の底から響くような、低く、重く、そして絶対的に冷たい声。
私たちが恐る恐る振り返ると、そこには――。
「…………」
アレクシス様が立っていた。 いや、立っているという表現は生温かい。 彼はそこに「降臨」していた。 背後には目に見えない吹雪を背負い、アイスブルーの瞳は完全にハイライトを失い、深淵のような闇を湛えている。 その全身からは、禍々しいほどの魔力が陽炎のように立ち昇り、周囲の空間を歪ませていた。
「か、閣下……?」
レオナルド様が引きつった笑顔で敬礼しようとする。
しかし、アレクシス様は彼を一瞥もしなかった。 彼の視線は、一点に固定されている。 レオナルド様が触れていた、私の右手に。
「……汚らわしい」
ポツリと、吐き捨てるように呟かれた言葉。
「え?」
「その手を離せと言ったんだ。……聞こえなかったか?」
ザシュッ!!
アレクシス様が軽く手を振った瞬間、地面から鋭利な氷の棘(スパイク)が突き出し、レオナルド様と私の間を分断した。
「うわぁっ!!」
レオナルド様が尻餅をついて後退する。 氷の棘は、彼の鼻先数センチのところを掠めていた。 本気だ。 少しでも反応が遅れていたら、彼は串刺しになっていただろう。
「ア、アレクシス様!?」
私が悲鳴を上げると、彼はゆっくりと私の方を向き、その冷たい瞳を細めた。
「……リリアナ。こっちへ来い」
「は、はい!」
私は慌てて彼の元へ駆け寄る。 彼は無言で私の腕を引き寄せると、自分の背後に隠すように立たせた。 そして、腰を抜かしているレオナルド様を見下ろす。
「……私の妻の手は、誰にでも触らせる安物ではない」
「も、申し訳ありません! ただの挨拶のつもりで……!」
「挨拶? 妻の肌に触れることが挨拶だと? ……貴様の国では、不倫の勧誘を挨拶と呼ぶのか?」
「め、滅相もございません!!」
レオナルド様は青ざめて首を振った。 アレクシス様の論理は飛躍しているが、今の彼に正論は通じない。 嫉妬の炎が、氷の形をして燃え盛っているのだ。
「レオナルド。貴様、最近剣の腕が鈍っているようだな」
アレクシス様が、ゆらりと剣の柄に手をかけた。
「えっ? い、いえ、毎日鍛錬を……」
「口が動くうちは余裕がある証拠だ。……特別稽古をつけてやる」
「えっ? ちょ、閣下!? 俺、午後は非番で……!」
「構わん。貴様が二度と、他人の妻に手を出そうという気が起きなくなるまで、徹底的に叩き直してやる」
アレクシス様は、木剣――ではなく、なぜか氷で生成した巨大なハンマーのようなものを作り出した。
「死なない程度に加減はしてやる。……感謝しろ」
「いやぁぁぁぁぁッ!! 奥様、お助けをぉぉぉッ!!」
レオナルド様の悲痛な叫びが、演習場の空に吸い込まれていった。
その後、一時間にわたり、一方的な「指導」が行われた。 私は観客席で、目を覆いながらその惨劇を見守るしかなかった。 ドガァァン! バキィッ! という派手な音と共に、レオナルド様が空を舞い、地面に埋まり、氷漬けにされていく。
アレクシス様は、汗ひとつかかずに彼を圧倒していた。 その表情は、終始無表情だったが、一撃一撃に込められた重さは、明らかに私怨の塊だった。
(ごめんなさい、レオナルド様……私のせいで……)
私は心の中で合掌した。
***
帰りの馬車の中。 空気は重く沈んでいた。
アレクシス様は、行きとは打って変わって不機嫌の塊になっていた。 腕を組み、足を組み、窓の外を睨みつけている。 その周囲温度は明らかに氷点下で、窓ガラスには薄っすらと霜が降りていた。
(ど、どうしよう……怒ってる)
私は膝の上で手を握りしめ、小さくなっていた。 レオナルド様をボコボコにしてスッキリしたかと思いきや、怒りの矛先はまだ収まっていないようだ。 あるいは、私に対して怒っているのだろうか。 「隙を見せるな」と言われていたのに、また男性と親しげに話してしまったから。
「……あの、アレクシス様」
おそるおそる声をかけると、彼はピクリと眉を動かしたが、こちらを見ようとはしなかった。
「……なんだ」
「その、レオナルド様は……大丈夫でしょうか?」
「知らん。医務室に放り込んでおいた。全治三日くらいだろう」
「三日……」
「手加減したつもりだったが、少々力が入りすぎたかもしれん」
彼はふん、と鼻を鳴らした。 あれで手加減? 公爵様基準の「手加減」は恐ろしい。
「……それより、お前だ」
急に話を振られ、私はビクッと体を震わせた。 ついに来た。お説教タイムだ。
アレクシス様がゆっくりと顔を向け、私を射抜くように見つめた。 その瞳の奥には、怒りとも、焦燥ともつかない複雑な光が揺らめいている。
「なぜ、あんな男に笑顔を見せた?」
「え?」
「ヘラヘラと笑って、手を握らせて……お前は、自分が誰の妻か忘れたのか?」
「わ、忘れてなどいません! ただ、私の噂を知っていると仰ったので、つい嬉しくて……」
「噂だと?」
「はい。公爵様が私を溺愛しているという噂だそうです」
私が正直に答えると、アレクシス様は一瞬で顔を真っ赤にして口を噤んだ。 「溺愛」という単語の破壊力は抜群だったらしい。
「……ふん。くだらん噂だ」
彼は顔を背け、咳払いをした。
「だいたい、私はお前を愛することはないと言っているだろう。それは契約事項だ」
「はい、存じております」
「なら、そんな噂を真に受けて喜ぶな。……それに」
彼は再び私を睨んだ。 今度の視線は、先ほどよりも粘度が高く、熱っぽい。
「お前の笑顔は……安売りするものではない」
「え?」
「私以外の男に、あんな無防備な顔を見せるな。……不愉快だ」
彼はそう言い捨てると、再び窓の外へと視線を戻してしまった。 不愉快。 その言葉が胸に刺さる。 でも、なぜだろう。 彼の言う「不愉快」が、単なる嫌悪感ではなく、もっと別の感情――独占欲のようなものに聞こえてしまうのは、私の自惚れだろうか。
屋敷に到着しても、彼の不機嫌は治らなかった。 夕食の席でも一言も発さず、ただ黙々と肉を切り、私の皿に盛る(餌付けは忘れないらしい)。 使用人たちも、主人の発する冷気におののき、スープを運ぶ手が震えている。
そして、夜。 寝室に入った瞬間、事態は急展開を迎えた。
「……着替えろ」
アレクシス様が、ネクタイを緩めながら言った。
「はい、ただいま」
私がパジャマを持ってバスルームへ行こうとすると。
「待て」
呼び止められた。
「……今日は、バスルームを使うな」
「え? お風呂に入らないのですか?」
「違う。……ここで着替えろ」
「はぁっ!?」
私は飛び上がった。 ここで? 寝室で? 彼の目の前で?
「む、無理です! 恥ずかしすぎます!」
「夫婦だろう。減るものでもない」
「減ります! 私の羞恥心がすり減って消滅します!」
「……チッ」
彼は舌打ちをすると、大股で私に近づいてきた。 そして、私の手首を掴み、ベッドへと引き寄せる。
「なら、風呂は後でいい。……今は、ここにいろ」
彼は私をベッドに座らせると、自分もその隣にドカリと腰を下ろした。 そして、無言で私の腰に腕を回し、引き寄せた。
「ア、アレクシス様……?」
密着する体。 彼の体温が高い。 怒っているのか、興奮しているのか、心臓の音が速い。
「……今日は、離さない」
耳元で、低い声が囁かれた。
「え?」
「あの男の匂いがついている気がして、気に入らん。……私のもので上書きする」
「う、上書き……?」
彼は私の髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。 まるで、私の存在を確かめるように。
「……お前は、私の妻だ。契約だろうとなんだろうと、私のものだ」
彼の言葉には、子供のような駄々っ子さと、男としての支配欲が入り混じっていた。 愛さないと言ったくせに。 私の心なんてどうでもいいと言ったくせに。 今の彼は、まるで私がいなくなることを何よりも恐れているように見える。
「……寝るぞ」
彼は私を抱きかかえたまま、ベッドに倒れ込んだ。
「えっ、ちょ、まだ着替えてませんし、歯も磨いて……」
「うるさい。このままでいい」
彼は私を完全に抱き枕状態にして、布団を頭まで被った。 私の顔は彼の胸に埋まり、背中には彼の手がしっかりと回されている。 これでは、逃げるどころか、寝返りさえ打てない。
「……動くなよ。動いたら、今度こそ氷漬けにするぞ」
脅し文句が物騒すぎる。 でも、その声は震えていた。
「……レオナルドの奴、お前の手に触れやがって……」
小さな呟きが聞こえた。
「……切り落としてやればよかった」
「ひぃっ……」
嫉妬が重い。 重すぎて物理的な質量を感じるレベルだ。 でも、それほどまでに私に執着してくれていることが、どうしようもなく嬉しいと思ってしまう私は、きっと毒されているのだろう。
「アレクシス様」
私は暗闇の中で、そっと彼に呼びかけた。
「……なんだ」
「私は、どこにも行きませんよ」
「当たり前だ。行かせん」
「他の誰かに惹かれることもありません。私にとっての旦那様は、アレクシス様だけですから」
私が素直な気持ちを伝えると、彼が一瞬息を呑む気配がした。 そして、腕の力がさらに強くなる。 痛いほどに、強く。
「……口だけなら、なんとでも言える」
彼は憎まれ口を叩いたが、その声色は先ほどまでの棘が消え、甘く溶けていた。
「……証明しろ」
「え?」
「言葉だけでなく、態度で示せ。……明日の朝まで、私から離れるな」
「はい。……喜んで」
私は彼の胸に頬を擦り寄せた。 彼の心臓の音が、ドクン、ドクンと大きく響いている。 それは、彼が言葉にはしない「本音」を雄弁に語っていた。
この夜、私たちは一晩中、互いの体温を分け合いながら眠った。 「白い結婚」という名の契約はまだ有効だが、その境界線は限りなく曖昧になりつつあった。 少なくとも、今の私たちを「仮面夫婦」と呼ぶ者はいないだろう。
***
翌朝。 私は全身の節々の痛みと共に目を覚ました。 アレクシス様の拘束力(ハグの強さ)が強すぎて、体がバキバキだ。 人間抱き枕の代償は大きい。
「……ん」
隣を見ると、アレクシス様はまだ眠っていた。 昨日の不機嫌さが嘘のように、穏やかな寝顔だ。 無防備なその顔を見ていると、昨日の彼の嫉妬すら愛おしく思えてくる。
(……もう少し、このままでいようかな)
私がそっと彼に寄り添い直そうとした時だった。
コンコンコン!!
激しいノックの音が、静寂を破った。
「旦那様! 奥様! 大変でございます!」
セバスチャンの焦った声だ。 ただ事ではない。
アレクシス様がガバッと跳ね起きた。 瞬時に「氷の公爵」の顔に戻る。
「……なんだ、騒々しい」
「申し訳ございません! ですが、緊急事態です!」
扉越しに、セバスチャンが叫んだ。
「クレイトン男爵夫人と、そのご令嬢が……! 屋敷の門前に押しかけてきております!」
「……なに?」
私の背筋が凍りついた。 クレイトン男爵夫人。継母だ。 そして、義妹のマリア。 私の人生を地獄に変えた、あの二人が?
「『リリアナを出せ!』『金をよこせ!』と喚き散らしておりまして……衛兵が止めておりますが、門の前で座り込みを始めております!」
「…………」
私の血の気が引いていくのが分かった。 トラウマが蘇る。 罵声。暴力。冷たい床。 あの恐怖の日々が、この幸せな空間に土足で踏み込んでこようとしている。
ガタガタと震え出した私を見て、アレクシス様の顔色が変わった。
「……リリアナ」
彼は私の肩を強く掴んだ。
「落ち着け。大丈夫だ」
「で、でも……お義母さまたちが……私を連れ戻しに……」
「させない」
彼は断言した。 その瞳には、昨日のレオナルド様に向けたものとは比べ物にならない、冷徹で残忍な光が宿っていた。
「私の妻を侮辱し、あまつさえ私の領地に土足で踏み込むとは……いい度胸だ」
彼はベッドを降り、ガウンを羽織った。 その背中から立ち昇るオーラは、まさに魔王のそれだった。
「リリアナ、お前は部屋にいろ。……いや」
彼は振り返り、私に手を差し伸べた。
「来るか?」
「え?」
「過去の亡霊など、恐れるに足らないものだと教えてやる。……私の後ろで見ていろ」
彼の力強い言葉。 そして、差し出された手。
私は震える手を伸ばし、彼の手を取った。 温かい。 この手がある限り、私はもう一人ではない。
「……はい、行きます」
私は覚悟を決めた。 アレクシス様と共に、過去の悪夢と対峙するために。
第8話へ続く。
目の前に立つ、太陽のように明るい笑顔を浮かべた青年。 金の髪が汗で額に張り付き、鍛え上げられた肉体を騎士服に包んだ彼は、人懐っこい瞳で私を見つめていた。
王城の騎士団演習場。 土埃と汗の匂いが漂う男たちの職場で、私は場違いなほど優雅な日傘を差して立っていた。 アレクシス様に連れられて見学に来たのだが、彼が部下たちへの指示出しに行っている間に、一人の若い騎士が話しかけてきたのだ。
「えっと……私の噂、ですか?」
私は少し戸惑いながら尋ねた。 どうせ「金で買われた没落令嬢」とか「氷の公爵の飾り妻」といったろくでもない噂だろう。
しかし、青年騎士――レオナルドと名乗った彼は、目を輝かせて言った。
「はい! あの『氷の公爵』閣下が、片時も離さずに溺愛している奥様だと! 先日の舞踏会でも、悪い虫がつかないようにマントで隠して連れ去ったとか、屋敷では膝の上に乗せて仕事をしているとか、騎士団内でも持ちきりなんですよ!」
「ぶっ!!」
私は思わず吹き出しそうになった。 な、何その恥ずかしい噂!? 膝の上での仕事なんて、つい昨日の出来事だ。 なぜ情報が漏れているの? まさか屋敷の使用人の中にスパイが?
「あ、あの、それは少し誤解が……」
「いやぁ、閣下が人間らしい感情をお持ちだと知って、俺たち部下も安心しているんです。以前の閣下は、本当に氷像みたいに冷たくて、近づくだけで凍傷になりそうでしたから」
レオナルド様は屈託なく笑うと、私の手を取った。 騎士の礼儀として、手の甲に口付けをしようとする仕草だ。
「閣下を変えてくださった女神様に、感謝の口付けを――」
彼が身を屈め、私の手に唇を寄せようとした、その瞬間だった。
ピキキッ……!
空気が、鳴いた。 いや、物理的に何かが凍る音がした。
「……ッ!?」
レオナルド様が弾かれたように顔を上げ、周囲を見回す。 演習場の気温が、真夏のような日差しの中であるにもかかわらず、急激に低下していた。 吐く息が白い。 地面の土が、霜柱を立てて白く染まっていく。
「な、なんだ!? 急に寒気が……」
「……レオナルド」
地獄の底から響くような、低く、重く、そして絶対的に冷たい声。
私たちが恐る恐る振り返ると、そこには――。
「…………」
アレクシス様が立っていた。 いや、立っているという表現は生温かい。 彼はそこに「降臨」していた。 背後には目に見えない吹雪を背負い、アイスブルーの瞳は完全にハイライトを失い、深淵のような闇を湛えている。 その全身からは、禍々しいほどの魔力が陽炎のように立ち昇り、周囲の空間を歪ませていた。
「か、閣下……?」
レオナルド様が引きつった笑顔で敬礼しようとする。
しかし、アレクシス様は彼を一瞥もしなかった。 彼の視線は、一点に固定されている。 レオナルド様が触れていた、私の右手に。
「……汚らわしい」
ポツリと、吐き捨てるように呟かれた言葉。
「え?」
「その手を離せと言ったんだ。……聞こえなかったか?」
ザシュッ!!
アレクシス様が軽く手を振った瞬間、地面から鋭利な氷の棘(スパイク)が突き出し、レオナルド様と私の間を分断した。
「うわぁっ!!」
レオナルド様が尻餅をついて後退する。 氷の棘は、彼の鼻先数センチのところを掠めていた。 本気だ。 少しでも反応が遅れていたら、彼は串刺しになっていただろう。
「ア、アレクシス様!?」
私が悲鳴を上げると、彼はゆっくりと私の方を向き、その冷たい瞳を細めた。
「……リリアナ。こっちへ来い」
「は、はい!」
私は慌てて彼の元へ駆け寄る。 彼は無言で私の腕を引き寄せると、自分の背後に隠すように立たせた。 そして、腰を抜かしているレオナルド様を見下ろす。
「……私の妻の手は、誰にでも触らせる安物ではない」
「も、申し訳ありません! ただの挨拶のつもりで……!」
「挨拶? 妻の肌に触れることが挨拶だと? ……貴様の国では、不倫の勧誘を挨拶と呼ぶのか?」
「め、滅相もございません!!」
レオナルド様は青ざめて首を振った。 アレクシス様の論理は飛躍しているが、今の彼に正論は通じない。 嫉妬の炎が、氷の形をして燃え盛っているのだ。
「レオナルド。貴様、最近剣の腕が鈍っているようだな」
アレクシス様が、ゆらりと剣の柄に手をかけた。
「えっ? い、いえ、毎日鍛錬を……」
「口が動くうちは余裕がある証拠だ。……特別稽古をつけてやる」
「えっ? ちょ、閣下!? 俺、午後は非番で……!」
「構わん。貴様が二度と、他人の妻に手を出そうという気が起きなくなるまで、徹底的に叩き直してやる」
アレクシス様は、木剣――ではなく、なぜか氷で生成した巨大なハンマーのようなものを作り出した。
「死なない程度に加減はしてやる。……感謝しろ」
「いやぁぁぁぁぁッ!! 奥様、お助けをぉぉぉッ!!」
レオナルド様の悲痛な叫びが、演習場の空に吸い込まれていった。
その後、一時間にわたり、一方的な「指導」が行われた。 私は観客席で、目を覆いながらその惨劇を見守るしかなかった。 ドガァァン! バキィッ! という派手な音と共に、レオナルド様が空を舞い、地面に埋まり、氷漬けにされていく。
アレクシス様は、汗ひとつかかずに彼を圧倒していた。 その表情は、終始無表情だったが、一撃一撃に込められた重さは、明らかに私怨の塊だった。
(ごめんなさい、レオナルド様……私のせいで……)
私は心の中で合掌した。
***
帰りの馬車の中。 空気は重く沈んでいた。
アレクシス様は、行きとは打って変わって不機嫌の塊になっていた。 腕を組み、足を組み、窓の外を睨みつけている。 その周囲温度は明らかに氷点下で、窓ガラスには薄っすらと霜が降りていた。
(ど、どうしよう……怒ってる)
私は膝の上で手を握りしめ、小さくなっていた。 レオナルド様をボコボコにしてスッキリしたかと思いきや、怒りの矛先はまだ収まっていないようだ。 あるいは、私に対して怒っているのだろうか。 「隙を見せるな」と言われていたのに、また男性と親しげに話してしまったから。
「……あの、アレクシス様」
おそるおそる声をかけると、彼はピクリと眉を動かしたが、こちらを見ようとはしなかった。
「……なんだ」
「その、レオナルド様は……大丈夫でしょうか?」
「知らん。医務室に放り込んでおいた。全治三日くらいだろう」
「三日……」
「手加減したつもりだったが、少々力が入りすぎたかもしれん」
彼はふん、と鼻を鳴らした。 あれで手加減? 公爵様基準の「手加減」は恐ろしい。
「……それより、お前だ」
急に話を振られ、私はビクッと体を震わせた。 ついに来た。お説教タイムだ。
アレクシス様がゆっくりと顔を向け、私を射抜くように見つめた。 その瞳の奥には、怒りとも、焦燥ともつかない複雑な光が揺らめいている。
「なぜ、あんな男に笑顔を見せた?」
「え?」
「ヘラヘラと笑って、手を握らせて……お前は、自分が誰の妻か忘れたのか?」
「わ、忘れてなどいません! ただ、私の噂を知っていると仰ったので、つい嬉しくて……」
「噂だと?」
「はい。公爵様が私を溺愛しているという噂だそうです」
私が正直に答えると、アレクシス様は一瞬で顔を真っ赤にして口を噤んだ。 「溺愛」という単語の破壊力は抜群だったらしい。
「……ふん。くだらん噂だ」
彼は顔を背け、咳払いをした。
「だいたい、私はお前を愛することはないと言っているだろう。それは契約事項だ」
「はい、存じております」
「なら、そんな噂を真に受けて喜ぶな。……それに」
彼は再び私を睨んだ。 今度の視線は、先ほどよりも粘度が高く、熱っぽい。
「お前の笑顔は……安売りするものではない」
「え?」
「私以外の男に、あんな無防備な顔を見せるな。……不愉快だ」
彼はそう言い捨てると、再び窓の外へと視線を戻してしまった。 不愉快。 その言葉が胸に刺さる。 でも、なぜだろう。 彼の言う「不愉快」が、単なる嫌悪感ではなく、もっと別の感情――独占欲のようなものに聞こえてしまうのは、私の自惚れだろうか。
屋敷に到着しても、彼の不機嫌は治らなかった。 夕食の席でも一言も発さず、ただ黙々と肉を切り、私の皿に盛る(餌付けは忘れないらしい)。 使用人たちも、主人の発する冷気におののき、スープを運ぶ手が震えている。
そして、夜。 寝室に入った瞬間、事態は急展開を迎えた。
「……着替えろ」
アレクシス様が、ネクタイを緩めながら言った。
「はい、ただいま」
私がパジャマを持ってバスルームへ行こうとすると。
「待て」
呼び止められた。
「……今日は、バスルームを使うな」
「え? お風呂に入らないのですか?」
「違う。……ここで着替えろ」
「はぁっ!?」
私は飛び上がった。 ここで? 寝室で? 彼の目の前で?
「む、無理です! 恥ずかしすぎます!」
「夫婦だろう。減るものでもない」
「減ります! 私の羞恥心がすり減って消滅します!」
「……チッ」
彼は舌打ちをすると、大股で私に近づいてきた。 そして、私の手首を掴み、ベッドへと引き寄せる。
「なら、風呂は後でいい。……今は、ここにいろ」
彼は私をベッドに座らせると、自分もその隣にドカリと腰を下ろした。 そして、無言で私の腰に腕を回し、引き寄せた。
「ア、アレクシス様……?」
密着する体。 彼の体温が高い。 怒っているのか、興奮しているのか、心臓の音が速い。
「……今日は、離さない」
耳元で、低い声が囁かれた。
「え?」
「あの男の匂いがついている気がして、気に入らん。……私のもので上書きする」
「う、上書き……?」
彼は私の髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。 まるで、私の存在を確かめるように。
「……お前は、私の妻だ。契約だろうとなんだろうと、私のものだ」
彼の言葉には、子供のような駄々っ子さと、男としての支配欲が入り混じっていた。 愛さないと言ったくせに。 私の心なんてどうでもいいと言ったくせに。 今の彼は、まるで私がいなくなることを何よりも恐れているように見える。
「……寝るぞ」
彼は私を抱きかかえたまま、ベッドに倒れ込んだ。
「えっ、ちょ、まだ着替えてませんし、歯も磨いて……」
「うるさい。このままでいい」
彼は私を完全に抱き枕状態にして、布団を頭まで被った。 私の顔は彼の胸に埋まり、背中には彼の手がしっかりと回されている。 これでは、逃げるどころか、寝返りさえ打てない。
「……動くなよ。動いたら、今度こそ氷漬けにするぞ」
脅し文句が物騒すぎる。 でも、その声は震えていた。
「……レオナルドの奴、お前の手に触れやがって……」
小さな呟きが聞こえた。
「……切り落としてやればよかった」
「ひぃっ……」
嫉妬が重い。 重すぎて物理的な質量を感じるレベルだ。 でも、それほどまでに私に執着してくれていることが、どうしようもなく嬉しいと思ってしまう私は、きっと毒されているのだろう。
「アレクシス様」
私は暗闇の中で、そっと彼に呼びかけた。
「……なんだ」
「私は、どこにも行きませんよ」
「当たり前だ。行かせん」
「他の誰かに惹かれることもありません。私にとっての旦那様は、アレクシス様だけですから」
私が素直な気持ちを伝えると、彼が一瞬息を呑む気配がした。 そして、腕の力がさらに強くなる。 痛いほどに、強く。
「……口だけなら、なんとでも言える」
彼は憎まれ口を叩いたが、その声色は先ほどまでの棘が消え、甘く溶けていた。
「……証明しろ」
「え?」
「言葉だけでなく、態度で示せ。……明日の朝まで、私から離れるな」
「はい。……喜んで」
私は彼の胸に頬を擦り寄せた。 彼の心臓の音が、ドクン、ドクンと大きく響いている。 それは、彼が言葉にはしない「本音」を雄弁に語っていた。
この夜、私たちは一晩中、互いの体温を分け合いながら眠った。 「白い結婚」という名の契約はまだ有効だが、その境界線は限りなく曖昧になりつつあった。 少なくとも、今の私たちを「仮面夫婦」と呼ぶ者はいないだろう。
***
翌朝。 私は全身の節々の痛みと共に目を覚ました。 アレクシス様の拘束力(ハグの強さ)が強すぎて、体がバキバキだ。 人間抱き枕の代償は大きい。
「……ん」
隣を見ると、アレクシス様はまだ眠っていた。 昨日の不機嫌さが嘘のように、穏やかな寝顔だ。 無防備なその顔を見ていると、昨日の彼の嫉妬すら愛おしく思えてくる。
(……もう少し、このままでいようかな)
私がそっと彼に寄り添い直そうとした時だった。
コンコンコン!!
激しいノックの音が、静寂を破った。
「旦那様! 奥様! 大変でございます!」
セバスチャンの焦った声だ。 ただ事ではない。
アレクシス様がガバッと跳ね起きた。 瞬時に「氷の公爵」の顔に戻る。
「……なんだ、騒々しい」
「申し訳ございません! ですが、緊急事態です!」
扉越しに、セバスチャンが叫んだ。
「クレイトン男爵夫人と、そのご令嬢が……! 屋敷の門前に押しかけてきております!」
「……なに?」
私の背筋が凍りついた。 クレイトン男爵夫人。継母だ。 そして、義妹のマリア。 私の人生を地獄に変えた、あの二人が?
「『リリアナを出せ!』『金をよこせ!』と喚き散らしておりまして……衛兵が止めておりますが、門の前で座り込みを始めております!」
「…………」
私の血の気が引いていくのが分かった。 トラウマが蘇る。 罵声。暴力。冷たい床。 あの恐怖の日々が、この幸せな空間に土足で踏み込んでこようとしている。
ガタガタと震え出した私を見て、アレクシス様の顔色が変わった。
「……リリアナ」
彼は私の肩を強く掴んだ。
「落ち着け。大丈夫だ」
「で、でも……お義母さまたちが……私を連れ戻しに……」
「させない」
彼は断言した。 その瞳には、昨日のレオナルド様に向けたものとは比べ物にならない、冷徹で残忍な光が宿っていた。
「私の妻を侮辱し、あまつさえ私の領地に土足で踏み込むとは……いい度胸だ」
彼はベッドを降り、ガウンを羽織った。 その背中から立ち昇るオーラは、まさに魔王のそれだった。
「リリアナ、お前は部屋にいろ。……いや」
彼は振り返り、私に手を差し伸べた。
「来るか?」
「え?」
「過去の亡霊など、恐れるに足らないものだと教えてやる。……私の後ろで見ていろ」
彼の力強い言葉。 そして、差し出された手。
私は震える手を伸ばし、彼の手を取った。 温かい。 この手がある限り、私はもう一人ではない。
「……はい、行きます」
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第8話へ続く。
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