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第1章
29 王子の実力 Ⅰ
しおりを挟む「……なんでこんなことになってるの?」
ハンカチを手に訓練場に戻ってくると、訓練場の真ん中でラオスとイラザがルティスを相手に訓練用の剣を構えていた。
「ねえ、ウルガ、どういうこと?」
側で観戦していたウルガなら事情を知っているだろうと思い、近寄って話しかける。
ちらりとシャウを見たウルガは、またラオス達を見ながら口を開いた。
「ユリベルティス殿下がシャウが戻るまで時間があるから手合わせをと、ラオスとイラザに声をかけたんだよ」
「ルティスが?」
「ああ」
「それでなんで2対1なの?」
「時間がないから、2人同時でどうぞって煽っちまって」
「…それでああなったと……」
「ああ」
(僕だってそんなこと言われたら挑発に乗ってたかも、獅子族は戦闘能力には自負があるから)
シャウも3人を眺めると、ちょうど睨み合っていたラオスが動き始めるところだった。
ラオスが踏み込み斬りかかる。それをルティスは少し身体をずらすだけで躱し、イラザがラオスの後ろから一撃を振り下ろすのを、持っていた訓練用の剣で受ける。
そこにすかさずラオスが斬りかえしたが、また重心移動だけで躱した。
しばらく見ているとルティスはラオスとイラザに防戦一方に見えたのだけれど、どうやら違ったらしい。
ある瞬間から訓練用の剣を2人に繰り出し始めた。
それがなんとも嫌なタイミングで2人の連携が崩れ始めた。
ラオスとイラザは小さい頃から共に居るので、連携がそこらの大人達にも真似できないくらい息を吸うように滑らかにできる。
それなのに、そんな2人の連携をものともせず対応出来ていることに驚いた。
それからは、互いに攻撃したり躱したりと一進一退で決着が着かなそうだった。
それにしてもラオス、イラザを相手に立ち回れる剣術の腕にシャウは感心していた。
ラオスとイラザが獅子族の力を使わずに剣術だけで戦っているとしてもルティスは凄いと思った。
これなら、すぐに前線に出ても大丈夫なほどの実力を持っていた。
続く組み手を観戦していると、ふっとルティスと目があった。
すると、大きく飛び退いてラオスとイラザと距離をとる。
「シャウが帰ってきましたのでここまでにしましょう」
ルティスが訓練用の剣を下げると、ラオスとイラザも僕を見てなんとも言えない顔をした後、同じように訓練用の剣を下げる。
どうやら終わったようだった。
シャウはハンカチを返すためにルティスに近づく。
「はい、ハンカチ」
額に汗を滲ませたルティスに持っていたハンカチを渡す。
「ああ、ありがとうございます」
いつもとは違う爽やかな笑顔を浮かべ、額の汗を拭っていく。
「剣術も出来るん、のですね」
シャウの変な言葉遣いに気づいたのか、ふふっと笑う。
「シャウ、いつも話している話し方で大丈夫ですよ。シャウにはシャウのままでいて欲しいですから」
「わかった。ありがとう」
見知った人達に囲まれていると、ルティス相手にも砕けた話し方になってしまいシャウはうまく切り替えられなくて困っていた。だから、ルティスの提案はとても有り難かった。
「それで、剣術でしたか? 昔から得意なことのひとつだっただけですよ。後はそれを磨いただけです」
「そうなんだ」
言い方は自慢話に聞こえるけれど、嫌な感じは全然しなかった。
さっき言っていたように、必要だから努力した。だから、必然的に強くなったということなのだろう。
ルティスの話を聞いてると僕も頑張らなきゃなという気持ちが強くなった。
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