シャウには抗えない

神栖 蒼華

文字の大きさ
28 / 67
第1章

28 再び現る

しおりを挟む

久しぶりにラオスとイラザと共に警備隊に顔を出すことにした。
シャウは全然訓練をしていなかったので、今日は思いっきり身体を動かそうと張り切っていた。
2人とも仲直り出来たので、シャウは心のつかえがなくなってやる気に満ちていた。

「「「おはようございます」」」

3人で訓練場に足を踏み入れると、どこかで見たことあるような後ろ姿があった。
僕たちの声に振り返った人物は、ユリベルティス殿下だった。

「おはようございます、シャウ」

シャウに気づいたルティスは蠱惑的な笑顔を浮かべ挨拶してきた。

「あ、おはよう──」

返事を返そうとしたシャウの視界を遮るようにラオスとイラザが間に立ち塞がった。

「これは、これは、ルティスじゃないか。ここには何用で来たんだ?」
「ルティス王子様は余程お暇なのでしょうね?」

ルティスを前に突然不機嫌になった2人にシャウは戸惑った。

(なんで?)

「君達にルティス呼びを許した覚えはないですよ」

ルティスの声が寒気を伴って聞こえてきた。
いやいや、寒気なんて気のせい、だよね。

「それはそれは失礼いたしました。ユリベルティス殿下」
「それで何しにいらしたのですか? ユリベルティス殿下?」

2人のあまりにも慇懃無礼な物言いに、不敬罪になるのではとハラハラした。

「はあー、お前達、いい加減にしろ」

大きなため息とともに現れたのは、ウルガだった。

「ユリベルティス殿下、失礼いたしました。こちらの者達を紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ構いません。ただ、シャウとはもう挨拶は交わしてますので結構ですよ」
「さようですか。では、右側にいるのが獅子族のラオス。左側にいるのが獅子族のイラザです。2人とも基本はシャウの護衛をしています。あとは、警備隊の仕事も人手が足りないときにしています」
「そうですか。では、今後はいろいろと関わりが増えるかもしれませんね。ラオス、イラザ、宜しくお願いします」

ルティスの丁寧な口調に毒気を抜かれたのか2人の不機嫌オーラが弱まった。

「こちらこそ宜しくお願いします、ユリベルティス殿下」
「宜しくお願いします」

何とか穏便にいきそうな空気を感じてシャウはホッと息を吐いた。
さすがウルガ、助かったー。

「それで何しに来たの、ですか?」

シャウは2人の間から顔を出して、ルティスに尋ねた。
ルティスはシャウをみとめると、また蠱惑的な笑みを浮かべて教えてくれた。

「この前、城で言っていたでしょう。治療士を派遣して欲しいと、だから来たのです」
「…えっ? ……ああ、治療士の人達を連れてきてくれたんですね。ありがとうございます」

シャウが頭を下げてお礼を言っていると、ふふっと笑う声が聞こえた。

「いいえ、確かに治療士たちを連れても来ましたが、私自身も治療士として派遣されて来ました」
「ええっ!?」

驚いてルティスを凝視していると、またふふっと笑った。

「そんなにおかしいでしょうか。自分で言うのも烏滸おこがましいですが、結構治療士としての能力はあるのですよ?」
「それは知ってます」

お城での一瞬で治した実力は疑いようもなかった。

「ただ、王子様なのに大丈夫なのかなとびっくりしただけです」
「ああ、そんなことですか。肩書きなど関係ありません。必要なところに必要な者を配置する。ただそれだけですから」
「そうなんだ。すごいね。ルティスは」

そんな風に言い切れる権力者は少ないと思う。
獅子族以外の人達は、権力を持つと威張り散らす人が多かったから。

「凄くなどありません。当たり前のことをしているだけです」

(それを言い切って実行する人は少ないんだよ、ルティス)

「そうだね、あ、そういえば、ハンカチ! すぐに持ってくるね」

ハンカチを返す機会がなくて持ったままだったのを思い出した。
シャウはルティスに言い終えると走り出した。

「シャウ、待って下さい」

後を追ってこようとしたラオスとイラザを止める。

「大丈夫! すぐそこだから」

走りながら声を張り上げる。

シャウが走り去ると、ウルガが合図して警備隊の1人が追いかけた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...