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第1章
27 イラザのプレゼント
しおりを挟むラオスが訪ねてきた次の日、イラザが大きな箱を持って家に現れた。
シャウはラオスとも和解できたので、イラザの気持ちもちゃんと聞こうと思って部屋に招いた。
イラザは箱を自分の横に置くと、深く頭を下げた。
「シャウ、城での言葉は間違いでした。傷つけてしまってすみませんでした」
イラザの言葉に、シャウはもういいかなと思った。
もとから、イラザがどう思っているかを盗み見てしまったから、城での言葉にはそんなに怒ってはいなかった。
ただあの時言われた言葉で傷ついた心だけが納得していなかっただけだった。
「ううん、もういいよ。僕も意地張ってただけだから」
「いいえ、まだ駄目です。シャウを傷つけたなど自分であっても許せません」
「えっ?」
「どうか、俺に罰を与えてください」
「は?」
「何がいいですか? 毎朝起こしに来ますか? シャウの為にお弁当を毎日作りましょうか? それとも─」
「いやいやいや、イラザ、何言ってるの?」
変な罰候補をあげていくイラザを慌てて止める。
「どのような罰がいいのかを言っていたのですが」
途中で遮られたことに不満そうにしているイラザに、僕の方が困った。
「そんなことしなくていいから」
「それでは納得できません」
「僕がいいって言ってるのに、どうして納得できないのさ」
「ですから、シャウを傷つけた自分が許せないからです」
「だから、それはもう大丈夫って言ったじゃないか」
「それでは納得できません。罰をください」
話が堂々めぐりしてきた。
決着がつかなくてどうしようか悩んでいると、ひとつ聞きたいことを思い出した。
「ねえ、イラザは僕が城で着てたドレスみたいな服、嫌いなの?」
「いえ、嫌いなわけではありません。ただシャウには別のドレスの方が似合うと思っただけです」
「そうなんだ。それならそうとあの時言ってくれれば良かったのに」
「すみません。あの時は俺もちょっと驚いて冷静じゃなくなってました」
確かにあの時はいつものイラザじゃなかったなと思い出していた。だから、次に続いた言葉がうまく聞き取れなかった。
「ああいう服は俺の前だけで──いえ、ああいう服を着なければいけないときは俺も一緒に行きます」
「えっ? もう一回言って」
聞き返した僕にイラザは首を振ると、横に置いてあった箱をシャウの前に置いた。
「お詫びというわけではないのですが、シャウに似合うと思ったワンピースを買ってきました」
「なんで?」
「これはシャウのことを考えていたら買いたくなってしまって、だから、もらって下さい」
戸惑う僕にイラザは苦笑すると、また話を戻してきた。
「それでは、俺に罰をください」
「だからそんなことしなくていいから」
「そう言わずに罰をください」
「いや、だから……」
さすがにイラザも堂々めぐりになるのがわかったようで、少し考え込むと何か思いついたように目を開いた。
「では、これからシャウに沢山のスカートをプレゼントしますね」
「へっ?」
「罰がいやなのでしょう? だから服をプレゼントさせて下さい」
「えっと、どういうこと?」
「シャウの心を傷つけてしまったのです。その償いとして服をプレゼントさせて下さい」
「…………」
「これからは毎月シャウのために服をプレゼントしますね」
「はっ?」
「罰はいやなのでしょう? だから償わせて下さい」
「いや…あの」
「シャウを傷つけてしまったのです。これでも全然足りないくらいです」
「でも…」
「シャウは受け取ってくれないのですか? やはりまだ許せないんですね…」
「そうじゃないよ!」
「では、是非受け取って下さい」
「わかったよ…」
シャウはイラザの粘り強さに根負けした。
それから、イラザが持ってきた服を着てみせることになり、ワンピースに着替えてイラザに見せるととても嬉しそうな顔で「とても似合っています。可愛いですね」と言われてしまった。
イラザに初めて正面から褒められて、恥ずかしくて顔が紅くなってしまった。
紅くなってしまった顔が恥ずかしくて、すぐに部屋に駆け込みいつもの服に着替えた。
走り去った後ろから、イラザが楽しそうに笑う声が聞こえてきて、シャウはやっといつもの関係に戻れたのだと安心した。
その後、毎月服をプレゼントされた日には必ずその服を着て出かけることになるとはシャウには思いもよらなかったのである。
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