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最初のダンジョン
初戦闘②
しおりを挟むまず、どういう構造で「スライム」が構成されているんだ?内部には液体が詰まっていて、さっき教科書を投げたときはあっさり中に入っていったから、表面が何かに覆われているわけではなさそうだな。
(なら、表面張力が異常に強いのか?)
コップに水を満たしたときに、溢れそうになってもなかなか水がこぼれないという現象がある。
これは水の分子が分子間力という分子同士が引き付けあって凝集しようとする力によって、できるだけ表面積が小さい状態になろうとするために起こり、それを表面張力という。
もしも、水の分子同士が凝縮しようとする力が異常に強くて、その力の方向が中心部分に集まっていれば、「スライム」みたいな形になるかもしれない。
あくまでも仮定の話であり、合っているかどうかわからないし、この目の前の生物に地球の常識が通じるかどうかわからないが。
(とりあえずやれることはやろう)
上のように仮定するならば、見えていないだけで中心部分に何かあるはずだ。
問題はどうそれを確認するかだ。
(ふんっ!)
シャーペンを思いっきり投げてみるが、中心部分までは届かない。
(考えろ。何かないか?)
スライムから距離を取りながら考える。今持っているものはハンカチとポケットティッシュ、筆箱のみ。
(筆箱の中には、シャーペンがあと一本、消しゴム、付箋、マーカーにハサミと保湿クリーム、ノリ…)
待った!保湿クリームがある。
確か保湿クリームは界面活性剤の作用があったはず!
「界面活性剤は、水と空気の境目のような界面に吸着するという性質があり、界面への吸着の結果、界面の性質の変化し、表面張力が低下します。」ってこの前の授業で科学の先生が言っていた!
高校の授業で習うことなんて将来、なんの役にも立たないと思っていたが、まさかこんなところで役に立つとは。
(頼むぞ)
保湿クリームを少し、スライムに向かって投げる。
「嘘だろ…」
何も起きなかった。
保湿クリームがただ溶かされていくだけだ。
だが諦めきれない。
量が足りなかっただけかもしれないと希望的なことを思いながらも保湿クリームを投げていく。
(ダメか…)
と諦めかけたそのとき、変化は訪れた。
スライムは上から何かに押さえつけられたかのように潰れていく。
「よし!」
これは戦闘と呼べるのだろうか。
互いに武器と呼べる武器を持っておらず、一滴も血を流していない。
だがこれだけははっきり言える。
―――命の奪い合いをした―――
ということだ。
たかが「スライム」と思うかもしれないが、よく考えてみて欲しい。普通の高校生がなんの刃物も持っていない状態で、硫酸の塊と戦えと言っているようなものだ。
そもそも物理攻撃ができない時点で武器なしでは人間に倒すことは難しいだろう。
疲れがこみ上げてくる。思っていた以上に精神をすり減らした。
(せめて水だけでも確保しなければ)
そんな時どうしても目に入るものがある。
自分でもわかっている。
それは飲めるものではないということが。だが気になって仕方ない。
そう。倒したばかりのスライムだった液体が。
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