不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.13 元のパーティーは解散

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 シルヴェバーリの人に拾われて一週間は経過しただろうか。
 体力も回復し怪我の状態も良くなり、ベッドから出て久しぶりに体を動かす。
 一週間もほぼ寝たきり状態だったことで、足腰に上手く力が入らない。左腕もまだきちんと動くわけではない。少しずつリハビリが必要だろう。
 着替えをするのだが、上から下まで、下着も全て用意してくれている。親切過ぎてどうお礼をすればいいのか。クリストフのパーティーを抜けないと、シルヴェバーリの荷物持ちもできないし。金なんて払えるわけもない。
 稼ぎなんてたかが知れているからだ。

 ちょっと気が緩んでいたのか、久しぶりってこともあり、まだ服を着ていない状態だったと気付いた。

「あ、ごめん」

 デシリアがドアを開けたことで目が合った。その際にデシリアの視線が股間に向かったからな。すぐドアを閉じたけど着替えた、と言うとドアを開け「すっかり元気になったね」と言う。元気ってのは体のことで、あれのことじゃない。
 でも、また見られてしまった。

「じゃあ、朝食が済んだらリーダーから話があるからね」

 朝飯はシルヴェバーリの人たちと一緒に、となってる。

「肩貸そうか?」
「大丈夫です」
「ふらふらしてるよ」

 強引に密着され肩に腕を回される。
 デシリアってお節介なくらい親切だよな。俺より華奢な感じなのに、俺なんか担いだら疲れると思う。
 それでも「はい、足動かして」なんて言って、大した距離じゃないのに食堂まで付き添われた。
 食堂に入ると複数の人に「デシリアのお気に入りだな」なんて揶揄われてる。

「違うから」
「泣きそうなほど心配してたじゃないか」
「だって、死にそうだったんだよ」
「良かったじゃないか。元気になって」

 照れて否定してるけど、周りの人たちが揃ってにやにやしてる。
 あ、そうだ。

「みなさん。この度は大変お世話になりました。ありがとうございました」

 何のお返しもできない状況だけど、いつか必ずお礼をすると言うと。

「気にすんな」
「別に礼を期待して助けたわけじゃない」
「うちもスカラリウスを探していたしな」
「その件で話があるんだが」

 なんだろう。

「君の所属していたパーティーだけどな」

 シルヴェバーリのリーダーから、朝食の最中に話をすることに。
 まずは飯を食えと言われ席に着き、しっかり朝食を済ませる。俺の隣に腰掛けるデシリアだけど「銃、役に立った?」なんて聞いてきた。

「無かったら十六階層で死んでたと思います」
「じゃあ役立ったんだね」
「助かりました」
「でもあの銃。ガタきてるから」

 メンテナンスも無くラビリント内で撃ち捲った。ハンドガードに傷があり修理が必要な状態らしい。
 やっぱり買い取らないと駄目だよな。預かったわけで壊れた状態で返却なんて、常識が無いにも程があるし。

「あの、代金は必ず支払います」
「要らないよ」
「でも」
「あれはイグナーツの銃だから」

 ごほん、なんて咳払いがある。
 そうだった。リーダーから話があるんだよ。ついデシリアと話をしてしまったが。

「えっとだな。君の所属していたパーティーだけどな」

 解散したと。
 え。解散?

「ラビリント内でタンクと戦士が死亡した」

 前衛が二人欠けて活動が困難になったのもある。またリーダーだったクリストフも重傷で現時点でも活動が不可能。魔導士や加療士も大怪我を負い、無事なのは聖霊士だけらしい。聖霊士が無傷なのは神の権能があるからだそうで。モンスターの攻撃を防ぐ神域の防壁もあるとか。ゆえに怪我を負うことがない。とんだチートだ。
 結果、探索者を続けること自体が無理となり、一時的ではあれ解散となった。

「つまり、君はフリーになったんだよ」

 契約の解除が成され探索者ギルドで受理されている。

「ここまで話せば分かるよな?」

 シルヴェバーリと契約することになった。

「あ、あの。クリストフの仲間は」
「十五階層に向かう寸前で、モンスターに襲われ死亡したのが戦士とタンク」

 まともに動けない剣士とタンクと後衛を守るために、ひとり奮戦した戦士だったが、モンスターに殺され十六階層の階段前で、魔導士と加療士も襲われたらしい。
 それでも聖霊士の神域の防壁による盾の効果で、辛うじて逃げ延びたそうだ。
 十五階層に辿り着け、あとは救助隊が助け出し無事に、ラビリントから脱出できたそうで。

「だから言ったのに聞かないんだもん」
「増長した結果だ。我々もまた戒めるべきだろう」

 他山の石ってことか。
 それにしても悪運が強い奴だな。クリストフは。それもこれも聖霊士が居たからか。チートで助かるなんて都合の良い話だ。俺には何も無いのに。
 それでも銃があるお陰で脱出できた。シルヴェバーリの人たちには感謝しかない。

「それでだ、正式に契約を交わしたい」
「あ、え。あの、俺でいいんですか?」
「デシリアのお気に入りだ。それに生き延びた」
「だから、違うってば」

 たったひとりで地上まで戻った。幾ら銃があるとはいえ、ほぼ奇跡的なことだと。しかも渡した銃は旧式で扱いが面倒で、装弾数も少なく不便だっただろうって。
 運の強さ、そして圧倒的な胆力。絶望的な状況下でも諦めず、地上を目指し行動し続けた。
 まさに探索者に必要なものを持っているそうだ。

「満身創痍でもいい。とにかく帰還できた」

 それくらい力量のあるスカラリウスであれば、シルヴェバーリにとっても必ず役に立つと言い切ってる。

「イグナーツ。君を歓迎するよ」
「あたしも歓迎する」
「リーダーが認めたんだからな。誰も反対しないぞ」
「ようこそ、シルヴェバーリへ」

 急に言われても実感はない。でも必要とされ評価されている。クリストフとは違う。
 もう足蹴にされ暴言を浴びせられ暴行されずに済むのか。
 目頭が熱くなってくる。

「泣いてるの?」
「これまでの境遇がそうさせるんだろ」
「安心していい」
「報酬も働きに応じて払うからな」

 まずは契約内容の説明をされた。
 報酬は一日潜って八千ルンド。日本円で一万二千円だ。今までの倍になった。
 それとアヴスラグ完全攻略までは、この家で一緒に過ごすことに。部屋は療養していた部屋をそのまま使う。

「あとは新しい銃を渡す」
「銃?」
「共に戦った銃は記念に持っていていいが、最新式の銃を渡すからな」

 ひとつはウィンチェスター銃と似たもので、装弾数が十四発ありスペンサーカービンより、遥かに威力を増した物だと。十六階層のモンスターを一発で葬れるとか。
 ただし正確に急所を狙えば、の話しらしい。シルヴェバーリの射撃手は、それを可能にしているそうで。

「それとサブで中折式の回転式拳銃を一丁」

 リボルバー式拳銃をサブで持たせてくれるそうだ。
 これはメンバー全員が持つ銃らしい。

「まあ、スカラリウスってことで予備を更に持たせてもいい」

 現在、射撃手が使う銃は三種類あるそうだ。射撃手が使う予備の銃と弾薬、それらを纏めて持参してくれれば言うことなしだそうで。
 ただの荷物持ちだけではなく、後方支援として期待するそうだ。

「普段は前衛が直接モンスターの相手をするが、三十六階層より下はな」

 敵の手強さも尋常ではない。戦力の強化と荷物持ちが必須になったそうで。
 そこに都合よくデシリアが俺を連れて来た。これも何かの縁だろうってことで。

「君の所属していたパーティーは、遅かれ早かれ自滅すると踏んでいた」

 予想通り自滅して解散。
 フリーになった俺を引き取れたと。

「それでな、重量級で嵩張る装備を持ち込みたいんだよ」

 三種類の銃、と言ったが二つは俺に装備させるものと同一。
 そしてもうひとつは。

「重機関銃だ」
「え」
「一発ずつ撃ってるとな、間に合わないケースが想定されるからだ」

 それを持って移動して欲しいと。
 相当な重量物だから、これまでラビリントに持ち込めなかったそうで。
 そんなもの俺に運べるのか?

「食料や水は分担して持つ」

 俺には主に武器弾薬を運んで欲しいと。
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