不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.24 迷宮の存在を問われる

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 汽車に揺られ十分程度。外は日が傾き西の空が茜色に染まり始めている。
 車窓に流れる景色は日本とは違うな。高層建築物なんて存在しないし、町から離れると長閑な風景が延々続く感じだし。
 でも、ガチャガチャした感じの日本の風景と違って、建物の色や形状に統一感はあると思う。
 あ、そうか。電柱が存在しないんだよ。電気は普及してないから。

「ねえ、イグナーツ」

 車窓を眺めていたら声を掛けられ視線を向けると目が合う。せっかく一緒に居るのに外を見てるだけって、よくよく考えたら失礼かもしれない。
 礼も言ってなかったし。

「なんか、今日はありがとうございます。凄く楽しかったし嬉しかった」
「え、あ、うん。それはいいんだけど」

 ひと呼吸置いたと思ったら口を開くデシリアだ。

「ラビリントってなんであると思う?」
「え」
「世界中にあるんだよ。中にはモンスターなんてのが居て」

 ラビリント内に居る存在は外に居る生物とは異なり、極めて異質な存在ばかり。
 外に出てくることは無いが、中に入れば問答無用で襲い掛かってくる。倒せば魔石を入手できてそれが資源になる。しかしモンスターは魔石が無くなると、存在そのものが消滅してしまう。
 階層主は倒すと宝石を落とす。

「不思議だと思わない?」

 確かに。
 元の世界ではせいぜいフィクションの中のことでしかなかった。

「あれって違う世界の入り口なのかも」

 異世界の中に異世界へ通じる洞窟?
 俺の場合は日本から、どこをどう通って来たのか、異質な世界に来てるわけだけど。

「しかも商売になるんだよ」
「そうですね」
「危険ではあるけど戦う術もあるし」

 戦う術ってのは魔法だったり召喚術だったり、ってことか。銃火器は元の世界では当たり前に存在してたし。剣や槍も普通に存在してる。
 一番の違いは魔法だ。物の理を無視してると思う。

「階段あるでしょ」
「ありますね」
「誰が作ったのかな」

 かなり前から探索者って職業があるらしい。最初に入った人が下層階へ行くために、階段を作ったなんてのは考えづらいか。
 むしろ元々あった、そう思える感じだし。モンスターがうろうろする中で、階段なんて呑気に作っていられそうにないし。
 初期の頃だとよく分からない中で、攻略していくしか無かったと思う。

「あの、急にどうしてそんな風に思ったんです?」
「前から思ってたよ」

 探索者を目指す前から不思議だと思っていて、その疑問を解消したくて探索者になったそうだ。
 しかし、ラビリントに入って実際に見ても、疑問は解消されず日々攻略するだけ。
 薄暗く狭いだけの洞窟内を一日中うろうろ。何かしらヒントになるものも得られない。

「ラビリントから一歩外に出れば、そこは日常になるんだよ」

 異質さを感じさせるのは中に居る存在のせいで、もし何も存在しなければ単なる洞窟でしかない。
 モンスターはどこから湧いてきたのか。なぜ外には居ないのか。

「それを考えるとね、もやもやするんだよね」

 言われれば確かにそう思うけど、今までは考えることもなかったな。考えるだけの余裕すらなかったから。
 今日一日を生きるだけで精一杯。明日どうなるかなんて分からなかったし。

 なんら結論を得ることなくミッティフォンに到着した。
 下車して並んで歩くが手は繋いでない。行きはしっかり握られていたけど。ちょっと残念だなんて。

 ホームに着きリビングに顔を出すと、メンバーが揃って寛いでる。
 入ると、やっぱり揶揄われる感じ。

「デート楽しめた?」
「買い物だから」
「もっとゆっくりしてくるかと思ったぞ」
「買い物してただけだから」

 否定するデシリアが居て面白がる面々だな。
 俺は荷物があるってことで自室へ向かうことに。あ、そうだ。デシリアに何もしてあげられてない。

「あの、デシリアさん」
「何?」
「今度、お礼に何か奢ります」
「そんなの気にしなくていいのに」

 お姉さんからの好意だから貸し借りだなんて思うな、だそうで。
 そうなると周りが騒ぐが、頬を赤らめて否定するデシリアだった。なんか可愛い。

「いいじゃないの。人を好きになるのは当たり前のことなんだから」
「だから違うから」
「イグナーツだって好かれたら嬉しいだろ」
「あ、はい。そうですね」

 そう言ってからデシリアを見ると、照れた感じで「好意と好きって感情は違うんだからね」だって。
 好意ってのは親切心と言えるけど、意味合いとして恋愛感情を含むことも。好きってのは心が惹かれることだから多少は違うとは思う。
 恋愛感情までは抱いてもらえないよな。もっと振り向いてもらえるよう頑張らないと。

 照れるデシリアに、気に掛けてくれてありがとうございます、と言ってリビングをあとにした。
 今は好意でも気にされる存在ってことだし。いずれは、なんて思うけど。でも、お姉さんって立ち位置だと、恋愛感情にまで発展しないかも。でも、そんなものだよね。

 そして翌日の朝になり、今日は三十階層まで一気に進む予定だ。
 弾薬は前日に用意しておいた。重機関銃用の弾倉は十個持参する。二千五百発分あれば二十階層以下で使用する分には、何とかなるだろうと思う。重量増し増しだけど仕方ない。
 二十階層から上はライフル銃で対処することにした。

 リビングに集合しブリーフィングがあるようだ。
 リーダーのモルテンから説明される。

「今日は事前に言った通り三十階層まで潜る」

 三十六階層以降に進むため階層主は全て俺が相手をすることに。
 当然だがひとりで対処しろ、とは言われない。

「俺とアルヴィンで撹乱しつつ、イグナーツが銃で倒すことになる」

 他は一切手出し無用だそうで。それは二十五階層でも三十階層でも同様。その程度の場所で躓くようだと先へは進めないからだ。

「とは言え、イグナーツはまだまだひよっこだからな」

 状況次第では助けも必要になるだろうと。特に二十五階層より下は、モンスターがさらに強力になり手を焼くことになるだろうと。弱点となる部分を自力で探し、的確に集中して攻撃する必要がある。
 どこが弱いか自力で探せないと、先へ進むごとに戦闘が辛くなる。深い階層では足手纏いになるだろうと。

「イグナーツを鍛えるためだから、みんなは最低限の行動に留めて欲しい」

 そして俺を見ると「負担は大きいが乗り越えることで、シルヴェバーリの真の仲間になれる」と言って肩を叩かれた。

「充分やれるだろ」
「危ない時はサポートする」
「怪我したら任せてね」
「いざとなったらあたしの召喚術で」

 デシリアが召喚術と口にした途端、全員から「やめてくれ。命が幾つあっても足りない」と言われ「加減するから大丈夫だってば」と膨れながら反論してた。
 どんな凄いものを召喚するのか、さすがに気になるな。深い階層に行けば召喚せざるを得なくなるんだろうけど。
 でも一日六回とか制限もあるんだよな。使いどころは慎重になるのだろう。

 ブリーフィングが済むとラビリントに向け出発する。
 徒歩で向かい隣にデシリアが並んで歩く。今日はさすがに手を繋ぐことはないな。

「今日は重そうだね」
「弾倉だけで十個入れたんです」
「動きに影響出ない?」
「問題無いです」

 五個が十個になった程度なら楽勝、とは言わないまでも支障はないし。
 むしろ予備の武装が重い。金属の塊だから重さが半端無いんだよ。でも必要だから持参するわけで。そしてスカラリウスはそれが仕事。
 頼られている以上は応える義務があると思う。

「きつくなったら助けを求めてね」
「あ、はい。その時はよろしくお願いします」

 いつも思ってる、と言ってたラビリントの存在。元はただの洞窟だったのか、それともモンスターも同時に発生したものなのか。
 確かに、考えると不思議なことだらけだ。

「探索者って、何かを調べたりしないんですか?」
「え、調べる?」
「そうです。探索の意味は知ること、探し求めることです」

 探検家、とも違うよな。調査が無いから。
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