不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.62 重機関銃完成で攻略再開

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 博覧会にデシリアと行った翌日、ヴェイセルも交えて会場に行くと、本当に即決で軽機関銃を四丁買ってしまった。ブースの人が満面の笑みで話をしていたな。相当な値引きを要求されてたのに、射撃の名手ってことで腰まで低くなってた。
 それといつも行く銃砲店に弾薬を卸すそうだ。そうすればいつでも買いに行ける。

「使用後にいつも通り」
「ああ、報告する」
「お願いします」

 銃火器販売や卸の人でヴェイセルを知らない人は居ないそうで。
 ヴェイセルが上げた報告はみんなで共有し商売に繋げるらしい。

「ね、ヴェイセルが使えば宣伝になるから」
「凄いなあ」

 デシリアまで自慢げだし。
 でも、宣伝だけじゃなく使用感とか大切だよな。実戦でどこまで通用するかなんて、下手な俺が使っても意味が無いけど、ヴェイセルなら貴重なデータになる。
 ブースの人が言っていたけど、威力はこれまでのライフルを上回るそうだ。
 俺も欲しいからデシリアに立て替えて、なんて思っていたらヴェイセルに止められた。

「イグナーツには重機関銃があるだろ」
「重いですし取り回しが」
「心配要らない。改造が済んで使ってみて、無理があるなら考える」

 残念。
 でも確かに俺は重機関銃を持って移動も攻撃もできる。負担は大きいけど持って走れないわけでもない。
 まだ初心者レベルだから、今あるもので対処しろってことだ。

 購入が済むと引き渡されるけど、さすがに軽機関銃と言えど四丁ともなると、それなりの重量になる。軽機関銃とは言え初期型だから、軽量化には限界があり銃本体の重さは一丁で凡そ八キロ。でも重機関銃の約半分程度。反動はさらに少ない。
 ほくほく笑顔のヴェイセルが居る。俺はと言えば少し気落ち気味だけど。
 俺が居ることで帰りは銃本体や弾倉含め背負って帰ることに。
 一丁はヴェイセル本人が手にしてる。

「これなら一丁は自分で持っていける」
「ですね。軽機関銃は携帯性も考えてるので」
「そこでだ、予備も一丁持って行ってくれるとな」
「任せてください」

 ここでデシリアがヴェイセルになんか言ってる。

「買わせればいいのに」
「考えがある」
「あたしが立て替えるよ」
「そうじゃない」

 ヴェイセルが買わせない理由。何かしら考えがあると思う。
 初心者レベルの俺が使っても軽機関銃ならもっと扱いやすい。でもそれをさせない理由ってのが。
 射撃の名手だからこそ、俺に必要なことが分かってるんだろう。

 ホームに帰るとヘンリケが居て、ヴェイセルが手にする銃を見て「子どもみたいに嬉しそう」なんて言って呆れてた。

 因みに今回入手した軽機関銃は全長千百ミリで口径七・九二ミリ。四十発の箱型弾倉も四十個一緒に購入。発射速度は七・五発秒で初速八百六十メートル秒。有効射程は五百メートルらしい。
 ラビリント内では射程は短くても問題無い。入り組んだ構造だからものを言うのは速度。実際、五百メートル先の目標を狙う、なんてことは一度も無いから。
 せいぜい二十から三十メートル程度だし、普段はかなり接近しての銃撃になる。

 軽機関銃を入手した翌日、ラビリントに潜るのかと思ったら、俺の重機関銃のカスタマイズが完了する日ってことで。

「受け取りに行くぞ」
「あ、はい」
「軽機関銃が欲しいんだろ?」
「あ、はい。でも俺にはまだ」

 考えがあるから今は重機関銃に慣れろ、だそうで。
 ヴェイセルとデシリアも一緒に来て、いつもの銃砲店に。
 行くと店主がヴェイセルに「博覧会で機関銃を買ったんだって?」なんて言ってる。もう情報が伝わってるのか。

「買ったぞ」
「どうだ? うちの店でも扱う予定だけどな」
「弾薬はすぐ入荷するのか?」
「もちろんだ。明後日には入荷する」

 で、本題。

「できてるか?」
「当然だ」

 店主が重そうに抱えて持ってきた俺専用重機関銃。
 バレル上部に把手が付いてる。

「どうやって撃つ気だ」
「提げて撃つらしい」
「できんのか? 反動を押さえられるとは思えんが」
「そこは問題無いだろ」

 モンスターの数が多くなる下層階では掃射で対処する。今後は俺の重機関銃とヴェイセルの軽機関銃で倒すことになるだろう。
 俺も軽機関銃で軽やかに、なんて思うけど時期尚早なんだろうな。

「大したタマだな」
「俺の後継者だからな」
「そうか。そんなに凄いのか」

 凄くないんですが。素人と大差無いし。
 ヴェイセルのせいで無駄に評価が上がってる気がする。

 カスタマイズが済んだ重機関銃を受け取り、二百五十発入り弾倉も二十個ほど購入し、またも背負ってホームに帰る。
 帰ると自室に全部置いてリビングに行く。
 明日から再開するということでミーティングがあるから。

 リビングに行くと全員集合していて、モルテンから簡単な説明が始まった。
 デシリアが隣に座るようソファの座面をぽんぽん。指定してるようだ。腰掛けると話を切り出してくる。

「明日から三十六階層以降を攻略する」

 ラビリント内で三泊の予定で、初日に四十階層まで進み、そこで一泊。翌日からは進める階層まで進み一泊。六十階層までは目指したいらしい。六十階層で一泊し地上に戻る予定だそうだ。

「それとだ」

 四十階層に転移魔法陣を敷設するそうだ。以降五階層ごとに、つまりは階層主を倒す度に魔法陣を設置していく。転移魔法陣の動力源はモンスターの魔石。魔法陣ひとつにつき六個必要になるとか。しかも定期的に交換が必要らしい。
 今回潜る際には五階層と十階層の魔法陣の魔石交換もあるそうで。

「一応、十五階層の魔法陣も交換する必要があるかもしれん」

 クリストフたちのために使ったから、消耗している可能性があるらしい。
 これらは探索者ギルドからの依頼で行うそうで。その分の報酬も出るとか。依頼されるパーティーは常に先行するベテラン組。探索者ギルドの連中がやるわけじゃない。
 現時点で最も頼れるのがシルヴェバーリ。だから高額で発注依頼が来るとか。

「イグナーツには魔石を持って行ってもらう。それと」

 転移魔法陣を転写する装置があるそうで、それも持って行ってもらうことになると。

「あの、大きいんですか?」
「いや、手のひらサイズだ」

 金属製の箱の中に魔石が入っていて、魔法陣を投射するレンズが嵌った外観。レンズの奥に転写用魔法陣が入っているらしい。敷設したい地面に対して水平に持ち、銃のような撃鉄があり引き起こし、トリガーを引けば投射され、魔法陣が地面に刻まれるのだとか。
 よく分からないけど作動すれば分かるんだろう。
 刻まれた円形の魔法陣内に六芒星のような紋様があるから、その六芒星の各頂点に魔石をセットすれば緊急通報用タグで作動するそうだ。

「それって向こうから来て、こっちからも他の階層へ行けるんですか?」
「ギルドには何階層からの救援要請か分かるようになってる」

 通報のあった階層まで一気に飛び、帰還は必ず一階層になるそうで。ラビリント内の魔法陣は他の階層には行けない。
 ギルドから向かう際のみ階層指定ができると。

「普段から使えれば往復が楽になりませんか?」
「楽にはなるが、自在に行き来となるとな」
「魔法陣の設計で躓いてるから無理だよ」

 現状では行きだけ指定できて帰りは一か所のみ。魔法陣の設計をするのは魔導士らしい。それも戦闘職ではない研究職の魔導士だそうで。
 魔導専科大学なるものがあるそうだ。そこで研究しているらしい。

 科学技術で追い付かない分野や、利便性を極限まで追求する際には、魔法が極めて有効なのだとか。
 その研究開発をするのが魔導専科大学。そこに居るのは主に魔導士の技能持ちらしい。技能持ちと先天的に魔法が使える人では、技能持ちの方が論理的に理解しているそうだ。

「デシリアさんは?」
「あたしは召喚技能で魔法は先天的」

 それでも中等教育課程で学んでいるから、そこらの魔導士より論理的だと言ってる。
 確かにそうかも。黒魔法の本当の使い方を知ってるから他とは違う。
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