不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

文字の大きさ
64 / 80

Sid.64 トゲトゲ粘体モンスター

しおりを挟む
 テストされた翌日の出発前、デシリアがモルテンに解答用紙を渡して、説明してるようだ。
 驚く面々だけど「下手すれば中等教育レベルだよ」と言うデシリアに、頷くしかないような感じだった。
 最初に接した時は自信が無く卑屈さを感じさせたらしい。それなのに知識は充分にあって、それを独学でとなれば秀才だとか言ってるし。元の世界でまじめに勉強したからだと思う。ブランクはあったけど、何もかも忘れてしまったわけじゃないし。
 なんかデシリアの俺を見る目が変わった気がした。

「イグナーツが優秀で嬉しい」
「え、そう?」
「銃での戦闘も凄いし、力もあるし、教養まであるんだよ」
「大袈裟だと思う」

 違うと。
 もっと誇って自信を持っていいと言う。モルテンやアルヴィンに、ここまで知識は無いと言ってるし。初等教育で終わってるらしい。いやでも、さすがに年の功ってのもあるでしょ。こっちは中途半端な教育で終わってるし。
 意外と知識豊富なのがヴェイセルらしい。中等教育を修了してるとか。
 ヘンリケは大学に三年間通っていたそうだ。一番高学歴のようで。でも、医療系の知識は高度になるから、やっぱ学校に行かないと無理だよね。

 話が済むとアヴスラグに向かうわけで、腕を絡めて体ごと寄せるデシリアが居る。
 密着し過ぎで少し歩きづらい。

「シルヴェバーリの次世代リーダーはイグナーツだね」
「無理だと思う」
「無理じゃない。知識があって能力もある」

 十九世紀の知識と二十一世紀の知識じゃ違うと思う。科学の発展もまだまだだし、原子だって未発見のものも多いだろうし。電子顕微鏡だって無いんだろうから。電気だって基礎中の基礎レベル。コンピューターだって無い。スマホなんて未知の領域だろうし。動力飛行もまだ無いみたいだし。
 それだけ違うんだから同列にはならないよね。

 あ、でも。電信技術はすでにあるみたい。電話も少しすれば普及してくるかも。

 アヴスラグに着くと早速突き進み捲る。
 五階層と十階層、それと十五階層で魔石を交換する。

「これが転移魔法陣?」
「そうだよ」
「救助要請をすると魔法陣の中に救助隊が現れる」

 直径三メートル程の魔法陣は複雑な文様になってる。電気回路は玩具みたいだったけど、魔法のある世界だけに魔法陣は高度なのかも。
 何がどうなって、どうして動作するのかさっぱりだ。デシリアは分かってそうだけど。

「デシリアは原理って分かるの?」
「少しは分かるよ」
「どうやって転移してるかも?」

 デシリア曰く、特定の空間と指定された空間を繋ぐためのものだと。入り口は探索者ギルド。出口は各階層。
 転移魔法により繋がれた空間を移動するとか。その転移魔法が分からない。
 なんで空間を繋げるのか。
 でもあれだ。俺も元の世界から、この世界に転移してきた。同じことかもしれない。
 フィクションでしか無かった事象を経験したんだよな。

 魔石をセットし十五階層から移動し、何度も通った階層を抜け一気に三十五階層まで下りた。
 途中で遭遇するモンスターの相手は、苦労することなく倒せるから足踏みすることもない。何度も相手をしてるから、攻撃パターンも分かってるし。どこが弱点か把握済み。
 最初に来た時に比べると何もかもが楽に感じる。
 とは言え、ここで油断すると下層階で苦戦して、下手すればまた大怪我をしかねない。ラビリントでの油断は禁物だ。

 三十六階層に足を踏み入れると、早々にヴェイセルが軽機関銃で、モンスターを排除し捲ってるし。
 俺も補助的に重機関銃を放つけど、少し慣れが必要なようだ。

「提げると照準がずれます」
「さすがにぶれるか」
「慣れれば振り回されないと思いますけど」
「まあ力で抑え込めるだろうしな」

 それにしても遠くで爆ぜるスライムみたいなモンスター。近付くと体液を浴びてしまうようで、しかも溶解液だから洒落にならない。
 銃や魔法で近付かれる前に対処する。でもデシリアの黒魔法は感情を失うし、聖法術は回数制限があるから安易には使えない。
 銃火器が必要な理由だ。

 何度か交戦すると提げて撃つのにも慣れてきた。
 体から腕が離れると反動でぶれる。体にぴったり腕を付ければ、最小限のぶれで収まると気付いたから。
 あとは力ずくで抑え込むだけ。

 三十六階層を無事に攻略すると、いよいよシルヴェバーリも未経験の階層へ。

「気を引き締めろ。何が起こるか分からないからな」

 全員が首肯し慎重に歩みを進める。
 先頭を進むモルテンとアルヴィンが居て、しんがりは俺。アルヴィンの後方にヴェイセルが控える。その後ろにヘンリケとデシリア。
 ゆっくり進むと前方と後方から、スライムの如きモンスターが複数接近してくる。

「イグナーツは後方、俺は前方で牽制。アルヴィンはイグナーツを」

 モルテンが指示を出し射線を遮らないよう、前方でヴェイセルを守るモルテン。
 後方にはアルヴィンが俺を守るべく、射線を遮らない形で防御態勢を取る。防御と言っても盾を持ってるわけじゃない。近付けば拳銃で牽制するわけだ。

「撃ちます」

 重機関銃をぶっ放すと弾け飛ぶモンスターが多数。次々液状化して床に流れ出す。
 簡単に倒せるけど、これは銃があってこそだ。剣で対応していたら行き詰まったと思う。
 六十四発放って向かってくるスライムを排除できた。
 ヴェイセルは四十発丁度で排除していたようだ。魔石を回収して気付いたけど前後で同数だった。

「あの、ヴェイセルさんは四十発で倒しきってます」
「奴らの体は簡単に銃弾が通る。二匹三匹纏めて倒せば弾薬は節約できる」

 確かに簡単に銃弾が通る。派手に飛び散るから、その後方に居る奴らを視認しきれてない。ちゃんと見て撃っていれば纏めて倒せるのか。

「できるだけ引き付ければ、の話だけどな」

 飛沫を浴びない程度の距離を掴み、ギリギリまで待てば一発の銃弾で、二匹や三匹倒せるのだそうだ。
 やっぱりヴェイセルは凄い。

「この軽機関銃だが扱いやすいな」
「こっちは重いです」
「イグナーツの腕力があってこそだな」

 じゃなくて、俺もそれが欲しかった。
 さらに先へ進むとスライムはスライムだけど、全身がトゲトゲになる粘体モンスターが向かってきた。
 射撃態勢を取るヴェイセルが居て、トリガーを引くと同時にモンスターもまたトゲを飛ばしてきた。

「避けろ!」

 みんな避けてるけど、俺は避け切れず棘を肩に食らった。

「あっ、痛ぅ」
「刺さったのか?」
「いえ、刺さったって言うか」
「すぐ水で洗い流せ」

 トゲ状にして溶解液を飛ばすようだ。肩の服をずらして見ると、トゲの刺さったような痕があり周囲が焼け爛れた感じになってる。
 やっぱり重機関銃を持ってると咄嗟の動きが鈍るんだ。
 荷物を下ろし水を取り出し傷を洗い、ヘンリケによる治療で事なきを得たけど。

「少し動きが鈍るな」
「はい」

 何かしら防具でもあれば、と思ったけど金属製のものは意味が無い。溶けるから。金属は金属でも耐腐食性に優れたものなら。でもあるのか分からないし。
 木やガラスなら防げそうだから、木製のラウンドシールドがあればいいのか。ガラスじゃ衝撃で破損するし。木製なら少々の衝撃は吸収してくれる。

「次回からは木製のラウンドシールドを装備だな」

 モルテンと同じ結論に至ったようだ。肩に装備しておけば咄嗟の際に、少し体をずらせば防御できると思う。
 また荷物が増えるけど已む無しだな。

「イグナーツには悪いが、ここは最優先で治療するから耐えてくれ」
「あ、はい」

 デシリアが「イグナーツばっかり怪我する」と文句を言ってる。

「次回はもっと万全な状態にする」

 それと手当てを出すそうだ。怪我をする回数が増えるからってことで。
 体を張って幾ら得られるのか。でも、ここまで来たから仕方ない。

「あたしが守ろうか?」
「デシリアは無理しないで」
「魔法を使えばいいんだよ」
「だから無理しないで欲しい」

 この程度の怪我なら我慢。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...