不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.74 二度目の召喚を目撃する

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 一部階層では外側に作用する魔法でも対処できた。あれも飛行する存在だったけど、同じように飛行するモンスターには通用するのかも。
 先へ進みながら遭遇した際に片っ端から試すことに。
 次々遭遇する円盤型や紡錘型に縄状の奴。これらがこの場に頻出するモンスターのようだ。

「効くね」
「そうみたいだ」
「デシリアの魔法が通じるなら楽ではあるが」
「なんか落とし穴がありそう」

 魔法で簡単に倒せるのだがその数は多く、制限のない魔法であってもデシリアの精神は削って行くようで、少し疲労の色が見える。

「少し休ませる」
「まだ大丈夫だけど」
「いや。いざという時に困る」

 モルテンの指示により攻撃の主体は、前衛の二人と銃火器を持つ俺とヴェイセルに。
 通用するのは分かったから、何もひとりに負担を掛けることはないわけで。
 ヘンリケも攻撃に参加できるが、聖法術は回数制限があるから、温存する方向になっている。代わりに俺の治療に専念するようで。

「イグナーツ君が一番怪我するからね」

 重い荷物を背負っていることで、どうしても動きが鈍る。咄嗟に躱すのが難しいことも多く、荷物に振り回されるから攻撃を食らう。背中が重すぎるからだけど。

「本来ならイグナーツ君は戦闘に参加しなくても」
「まあ、そうなんだがな」

 装弾数の多い重機関銃を扱える。しかも固定せず持ち歩いて撃てるから、その利便性を鑑みると任せたくなるとモルテンは言う。
 今は散発的に遭遇する程度だけど、集団で向かって来られると、掃射できる重機関銃は重宝するのだろう。弾幕を張れる武器だし。突進して来れば勝手に弾に当たる。

 適度に参加させることでヘンリケも已む無しと判断したようだ。
 俺を見るヘンリケだけど、無理はさせたくないのかも。基本は優しいお姉さんだと思う。エロいけどね、見た目は。

 アルヴィンが緊張した面持ちになり、全員に立ち止まるよう指示を出してきた。

「何か分からんが包囲されている気配がある」
「包囲って」
「囲まれている感じだ」

 全員に緊張が走り周囲を見回すも、何かが近付く様子はないし音もしない。

「何も居ないけど」
「いや、確かに囲まれている」
「何に?」
「分からんが危険かもしれん」

 この先、真っ直ぐ進めば開けた場所があるようで、そこに向かって走ることを提案するアルヴィンだ。
 とにかく囲まれたと感じる状況はまずいと。

「分かった。イグナーツは走れそうか?」
「遅いですけど走ることはできます」
「ならば俺が側に付く。できるだけ陣形を崩さず抜けるぞ」

 モルテンが俺と並走することに。何かが襲い掛かって来た際は全力で薙ぎ払うそうだ。
 全員が陣形を維持しつつ走るけど、足元は相変わらず滑りやすい。荷物の重さだけじゃなく滑るせいで走りづらい。でも、ここで足手纏いになると、みんなが危険に曝されることになる。
 死ぬ気で走れば何とかなるだろう。足の指先に力を籠め地面を蹴る。

「くっそ! まさか本当にそうだとは」
「何だ?」
「森に入った時に言ったことが現実になった」
「え」

 アルヴィンから木だと思っていたものが、実は全てモンスターだったと。急に気配が増加し取り囲まれたと思ったが、ここに来るまで隠蔽していたようで。
 そんな知能もあるのか、それとも捕食者としての本能なのか。

「抜ければ対処の仕様もある」
「ならば急げ! とにかく離れた方がいい」

 とは言え、俺の足は遅い。みんなが俺に合わせて走るから、どうしても移動に時間が掛かる。
 デシリアが何やら物騒なことを口にしてる。

「召喚」
「え」
「い、いや、あれは」
「でも、窮地を脱するなら」

 時間を稼いでくれれば一掃する存在を召喚する、とか言ってるし。
 危険極まりないけど、追い込まれた状況であるならば、召喚して全て無くせばいいと言う。
 走りながら暫し考えるモルテンが居る。
 だが、やはりと言うか、モンスターが牙を剥いて来た。ここに来た時の言葉は見事にフラグだったんだ。

「動いてる」
「てっきり木だと思っていたが」
「いや、そう思いたかっただけだな」

 太い幹を持つ木のようなモンスターに、剣が通じるかどうかは分からない。
 枝葉を揺すり薙いで来ようとするが、モルテンの魔法剣で薙ぐと、あっさり切り落とされるが矢継ぎ早に攻撃される。
 ヘンリケが聖法術を使いメンバーの周囲を焼き払う。

「召喚するから」
「已む無し」
「時間を稼いで」
「分かった」

 中心にデシリアを配置し、周囲で攻撃を防ぐメンバーだ。
 呪文らしき文言を唱えるデシリア。その間、猛攻を凌ぐメンバー。
 俺も重機関銃で対処するけど効果は限定的だ。木の幹らしき部分は硬く、貫通しないし表面に銃弾が食い込む程度。近接ですら食い込む程度だ。銃は役に立たない。
 召喚されるまでの時間、デシリア以外は傷を負い苦戦する。

「くそ。無茶苦茶だ」
「失敗した」
「これが全部とは普通考えない」

 現時点で最も効果があるのはモルテンの魔法剣。しかし、やはり折れてしまう。

「イグナーツ!」
「はい!」

 予備の剣を渡すけど、その間は俺自身もモルテンも無防備。
 でも渡さないとモンスターの攻撃は防げない。重機関銃を足元に落とし、背中の荷物を落とし剣を抜いて渡す。
 当然だけど枝による薙ぎ払いがあり、顔面をぶん殴られ意識が飛びそうになった。

「イグナーツ、大丈夫か?」
「な、なんとか、耐えて、ます」

 あとはデシリアだけが頼りだ。みんな怪我をして苦しそうだし。

「エキディロシ、ファーテ!」

 どうやら呪文を唱え終え召喚できたようで。
 その瞬間、周囲の温度が一気に冷えたような。実際に冷えたわけじゃない。肝が冷えたの冷えただ。
 モンスターの攻撃が瞬時に止み、何やら悲鳴のような叫びのような。

 空間に魔法陣が展開され、そこから現れた存在。
 見るも恐ろしい異形。円形と言えば円形で、サイズは五メートルくらいだろうか。真っ黒な姿で二枚貝のような感じだけど、全部が牙の生えた口とも言えそうな。
 そして口から生える触手のようなもの。口の周囲を明滅する光。宙を漂い触手が伸びると木々に次々触れる。何本でも出てきて伸びて、無限に発生するのかと思う。

 まともに立っていられない。全員がデシリアに縋るように集まり、固唾を飲んで見守るしかない状態。

 ほんの一瞬。
 瞬きする間に取り囲んでいた木々の姿をしたモンスターが霧散した。

 全部だ。
 あとには何ひとつ残っていない。
 やたら広大な空間が広がるだけで、空間に存在していたものが全て消えた。

「ディアタゾ。エピストレ・ストン・コズモ・アポトン・オピオ・イルハテ」

 デシリアが唱えると異形の存在は消え去った。
 思わずデシリアを見るとサムズアップで笑顔を見せる。いや、笑顔って。

「あの、あれは?」
「あれはね、ファーテ。食らい尽くす者」

 全部消えた。

「広いね」

 そう言って寄り掛かるデシリアが居る。
 天井が見える。ぐるり見回すと下りてきた階段と、下層階へ向かう入り口も見える。
 薄暗かった森は消え去り何も無い。

「あの、全部?」
「ファーテはその名前通り、そこに存在するもの全てを食らうの」

 あり得ない。きれいさっぱり痕跡すら残さず消えてしまった。
 少々凹凸のある地面、そして切り立つ壁。地下空間であろうことが見て取れる状態。

「済んだか」
「全く。限度が無い」
「やり過ぎ」
「魔石まで消滅してるぞ」

 あとに何も残さない。それがファーテなのだそうで。
 この広い空間はドーム球場の倍はありそうだ。観客席まで含めて。

「やることが無くなったが」
「みんな怪我してるでしょ。治療するから」

 召喚されるまでの間、奮闘し怪我をしてるわけで。
 やっとひと息吐いてヘンリケに治療されることに。

「ついでだ。少し休憩しよう」

 この場所って、今後モンスターって発生するのか?
 疑問に思って聞くと「帰る頃には湧いてるだろう」だそうだ。
 ただし、完全に元の状態になるには少々時間が掛かるだろうとも。
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