不遇だった荷物持ちは国内最高峰探索者パーティーに拾われた

鎔ゆう

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Sid.75 同じ構造の階層が続く

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 治療のために暫く休憩し回復すると、四十二階層を目指し移動することに。
 荷物を背負い直すけど、バッグがすっかり傷だらけ。穴も開いてるし、俺の服もそうだけどボロボロだ。次来る時は着替えも用意した方が、なんて考える。何よりラビリント内で戦闘を繰り返すから、汗も掻くし汚れるし、デシリアが言っていた意味も理解した。臭い。
 水を余分に持参してるけど、盾があれば消費量は抑えられる。予備の盾と着替え。水より嵩張るにしても軽い。あとで提案してみよう。

「しっかし、見事に一切無くなったな」
「魔石の回収ができないのがな」
「でもあれは仕方ないよ」

 周囲を取り囲む無数のモンスター。木に擬態していたわけで。森林と思っていたら全部が全部モンスターだったのだから。デシリアのような召喚ができないと、殆どの探索者はここから先へ行けないような気もする。
 モルテンに聞いてみると。

「あの、ここに他のパーティーが来たら」
「全滅だな」
「デシリアさんみたいな能力って」
「ここ一番、と考えるなら聖霊士だな」

 五年以上の経験を積んだ聖霊士が居れば、ここを切り抜けることは容易かろうと。
 後続の探索者は事前に情報を得られる。自分たちより優位に攻略を進められるからだ。
 ただ、聖霊士の居ないパーティーでは、この場を切り抜けるのは困難、または不可能であろうと言う。

「他の召喚士とか」
「獣を召喚した程度じゃ無理だ」
「魔導士とか聖法術士は?」
「せいぜいが半径三十メートルしか効果を及ぼせない」

 一般的な魔導士や聖法術士が対処するには、この空間は広すぎるらしい。
 ここを切り抜けるには計十回は、魔法なり聖法術を行使する必要があるようだ。
 しかもデシリアやヘンリケクラス。上級パーティーでも二人に匹敵する魔導士や聖法術士は居ないそうで。

「じゃあ、ここ以降は」
「多くが断念せざるを得ないだろう」

 仮に進もうと考えるのであれば、探索者パーティー五組や六組で攻略することになるそうだ。

「うちのパーティーも深層に進む際には、他のパーティーと協力することになる」

 五十階層までならどこのラビリントも単独で進めるが、それ以降は五人や六人程度では攻略ができないらしい。
 それと荷物持ちの存在。何度も他のラビリントを攻略し、絶対に必要だと理解したそうだ。これまでに何度も苦戦し物資不足で悩まされてきた。替えの武装が無い。水や食料も途中から不足する。その度に引き返し攻略法を考え、要不要を極限まで見極める必要があったと。
 しかし。

「うちにはイグナーツが居る」
「そうだよ。イグナーツが居るから、前より楽に攻略できてる」
「負担を掛けるし甘えちゃうけどね。イグナーツ君には助けられてるから」
「みんなが同じように理解すればな」

 スカラリウスへの対応も変わるだろうと。パーティーの要になる存在だから、なんて言ってるけど背中がこそばゆい。

 四十二階層への階段を前に、軽く打ち合わせをすることに。

「みんな分かったと思うが、このラビリントは他とは異なり過ぎている」

 想定外の事態も多く少しも気を抜けない。まさか階層丸ごとモンスターだらけ、なんて今まで無かったそうで。

「四十二階層も同じ可能性がある」

 召喚は残り五回。五十階層までは七階層を抜ける必要がある。四十五階層と五十階層では階層主との戦闘もあることで、より一層の厳しさが想定されると。
 デシリアの黒魔法も強力ではあるが、リスクが大き過ぎて容易には使えない。
 聖法術も広範囲に使うのは無理がある。

「そこでだ、四十五階層の階層主を倒したら、そこで一泊することにする」

 ただし、状況次第。この階層と同じくモンスターで埋め尽くされていた場合。その場合は人に対処できる限界を超えている。理を超越した存在に頼る以外に手立てがない。
 各階層で召喚を使えば残り二回になってしまう。無理して先へ進まず回数の回復に努めるのだそうだ。

「同じではなかった場合は、当初の予定通り五十階層を目指す」

 異論があれば聞くと言うモルテンだ。物事は慎重に進めたい。だから無理だと思う場合は遠慮なく意見をと言う。
 俺には分からないから、みんなの様子を窺うけど、誰も意見を出さないか。

「イグナーツはどうだ? 一番負担になってる」

 聞かれても四十五階層で一泊なら、デシリアも回復してるだろうし。ただ、余分に飲料や食料を消費する。五十階層に到達した時点で引き返しても、三泊分しか食料は用意してない。多少の余裕はあるにしても。水だけは余分に持ってきてる。最悪は水だけでも数日は生きられる。
 だったら反対する理由は無いのか。

「いえ。最悪を想定しても水だけはあるので」
「そうか。ならば二つの案を元に行動する」

 誰も反対しないことで四十五階層で一泊か、そのまま突き進むか状況次第となった。
 そして四十二階層へ向かう。
 ぽっかりと口を開ける洞窟。その先に階段があり薄暗い中を移動する。

「やはりか」
「先が見えにくい」
「おそらくは同じ構造なのだろう」
「と言うことは」

 四十五階層で一泊するしかない、となった。
 階層の全てがモンスターで埋め尽くされてる、となるとデシリアだけが頼りになるのか。
 デシリアの背中を見る。こんな華奢な女性がパーティーの命運を握るなんて。
 ふいに振り向くデシリアだ。

「イグナーツの視線が突き刺さるんだけど」
「え」
「冗談だよ。気にしてくれてるんだよね」
「あ、うん」

 問題無いと。自分に期待される部分は、存分に応え貢献するのだそうで。僅か六回しか召喚できないが、それで乗り切れるならお安い御用だと。

「ここに来るまでイグナーツの方が負担が大きかったでしょ」
「そうでも」
「怪我もたくさんした。攻撃までしてる」

 荷物持ちが攻撃を担い、みんなが助けられてる。だから気にせず頼って欲しいそうだ。

「そうだな。イグナーツ抜きでは、ここまで来られなかった」
「まあ、デシリアは帰ったら、イグナーツに抱かれるといい」
「そうね。擦り切れるまで相手してあげなさい」
「違うでしょ。そう言うのは別だから」

 しないのか、とか抱かせないのか、なんて話になってしまう。

「だから違うってば」
「なんだ。期待させるだけさせてお預けか」
「や、約束は守るから」
「じゃあいいだろ。好きにさせてやれ」

 人の体を何だと思ってる、なんて言って怒ってるよ。そりゃそうだよね。俺だって、なんか知らないけど擦り切れるまで、なんてしないし。
 互いに初めてなら、ああ、すぐに終わりそうだ。
 なんか緊張感がないなあ。

 階段の先に薄明かりが見えてくると、やはりと言うか想定通りと言うか。

「広大な空間だな」
「しかも今度は湖の如しだ」
「どうやって移動する?」

 階段を下りた先の踊り場のような場所。面積は四十一階層と同様で、派手に動けば落下する程度の広さしかない。

「なあ、もしあの水のように見えるのが」
「言わないで」
「水がモンスターか」
「だから、なんで口にするの?」

 フラグが立ったと思う。きっと水に見えるのが全部モンスター。
 つまり召喚で消滅させる以外に、先へは進めないってことで。

「あの、同じ存在って当日中に何度も召喚できるの?」

 意味が分からない、って表情のデシリアだ。

「えっと、さっき召喚したものって」
「できない」
「あ、そうなんだ」
「心配要らないから」

 笑顔を見せると「エクサレイプシを召喚するからね」とか言ってる。また分からないけど、きっと危険極まりない存在なんだろう。
 最初に会った時はスコタディとかフォヴォス、なんて言ってたけど、それは召喚しないのかな。
 疑問に思い聞いて見ると。

「適材適所だから」
「あの、何種類召喚できるの?」
「分かんない」
「え」

 全部召喚したことが無いと言う。今回いろいろ試せるから、逆に楽しみなのだそうだ。
 名前が効果を示すそうで、試したいものが多数あるとか。
 じゃあエクサなんたらの効果って。
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