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第17章 アトリエ防衛戦と汚染源の特定
17-6:科学の反撃、ゴーレムの沈黙
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ゴウン……ゴウン……。
三体の錬金術ゴーレムが、その黒曜石の巨体を揺らし、私たちに向かって、重い足取りで、歩みを進めてくる。
一体、一体の歩みが、この古代の石造りの床を震わせ、天井からは、その振動で、古い石の粉が、パラパラと、私たちの肩に、降りかかった。
地下水脈(レイライン)の、青白い、幽霊のような光が、磨き上げられたゴーレムの黒い装甲に反射し、その無機質な「死」の威圧感を、際立たせる。
その瞳(センサー)は、赤く、熱を持たずに、ただ、私たち(標的)を、正確に、捉えていた。
「ひっ……!」
私の隣で、リリアが、息を飲む。彼女は、私の背中に、必死で、しがみついていた。
「動くな、ソフィア『化学者』よ。抵抗は、無意味だ」
一段高い、プラントの操作盤(コンソール)の前で、ヴォルフラムが、腕を組んだまま、冷たく、言い放った。
彼の灰色の瞳は、もはや、私ではなく、私の背後で震える、リリアを、見つめていた。
「その『アンテナ(リリア)』は、この高濃度の『ブライト』の瘴気に、耐えられまい。……あと、数分もすれば、その、か細い精神(マインド)は、聖樹(・・)の、断末魔の『悲鳴』に、焼き切られる」
(……この男)
(リリアの『同調』能力も、聖樹の『暴走』も、すべて、計算ずく……!)
「君の友(ギルバート)の、あの程度の『まじない』は、このゴーレムの、魔力防御(バリア)の前では、粉塵(ふんじん)だ」
ヴォルフラムは、続ける。
「君の、その、原始的な『草遊び(ハーブ)』など、言うまでもない」
(魔力防御だと? ――上等よ)
(私の武器は、魔法じゃないわ)
私は、抵抗しなかった。
私が、この地下空間に、足を踏み入れた、瞬間から、私の、前世(カオリ)の、化学者としての『脳』は、この戦場の、すべての『変数』を、計算し尽くしていた。
(ヴォルフラム(指揮官)は、高所。ゴーレム(兵士)は、低所)
(光源は、中央の、レイラインのみ)
(空気の流れは、入り口(私たち)から、プラント(ヴォルフラム)の、換気口へと、一方的に、流れている)
(そして、敵(ヴォルフラム)は、私(ソフィア)の『化学(ケミストリー)』を、『原始的』と、侮蔑(ぶべつ)している)
(……勝てる)
「リリア様!」
私は、背後の、震える少女に、この状況下で、最も、強く、鋭い「命令」を、発した。
「耳を塞いで! 目を、閉じて! 私が、いい、と言うまで、絶対に、開けないで!」
「……っ! は、はい!」
リリアは、私の、その、有無を言わさぬ気迫に、ビクッと、肩を震わせ、反射的に、両手で、強く、耳を塞ぎ、目を、固く、閉じた。
私は、革バッグから、二つの、フラスコを、取り出した。
一つは、白い粉末(マグネシウム)と、乾燥ヨモギ(発火性ハーブ)を、完璧な比率で、配合したもの。
もう一つは、着火用の、アルコールランプ。
「化学は、時に、魔法よりも、派手なのよ」
私は、そのアルコールランプに、魔術ではなく、物理的な火打石で、火を灯すと、それを、先頭を歩く、一体目の、ゴーレムの、足元へと、力任せに、投げつけた。
ガシャン! と、ガラスが割れ、アルコールが、石の床に、青い炎を、広げる。
「……愚かな」
ヴォルフラムが、私の、その、無意味に見える「抵抗」を、鼻で、笑った。
「そんな、小さな火で、私の、黒曜石のゴーレムが、止められるとでも……」
彼の、その、傲慢(ごうまん)な、言葉の、最後までを、私は、聞かなかった。
「……今よ」
私は、白い粉末(マグネシウム)のフラスコを、その、青い炎(アルコール)の、中心へと、正確に、投げつけた。
次の瞬間。
バァァァァァァァァァァン!!
地下空間、そのものが、爆発した。
閃光。
音。
熱。
地下水脈(レイライン)の、青白い光が、一瞬で、消し飛ぶほどの、強烈な「白」。
数千度の、白い炎が、空間の、すべての「影」を、焼き尽くした。
鼓膜が、破れそうになるほどの、轟音。
そして、マグネシウムと、ハーブが、瞬時に、燃焼する、独特の、金属が焼ける匂いが、空間、全体に、充満した。
「ぐっ……!!」
高所(プラットフォーム)で、余裕を、かましていた、ヴォルフラムが、思わず、その灰色の瞳を、両手で、覆った。
彼は、魔術師(ギルバート)の、魔力的な「光」は、警戒していたかもしれない。
だが、彼にとって「原始的」なはずの、私の『化学(ケミストリー)』が、これほど、単純で、暴力的で、そして、効果的な「物理現象(せんこう)」を、引き起こすとは、計算していなかった。
ゴ……ゴ……
ゴーレムたちが、ピタリ、と、その、重い足を、止めた。
彼らの、黒曜石の、赤い「目(センサー)」が、激しく、明滅している。
強すぎる光量が、彼らの、精密な、錬金術(アルケミー)の、視覚センサーを、物理的に、焼き切ったのだ。
(よし! 視覚(センサー)は、焼いた!)
だが、私は、止まらない。
この、一瞬の「隙」こそが、私の、計算の、本命だった。
「リリア様! あなたは、動かないで!」
私は、ゴーレムたちが、視覚を失い、動きを止めた、その、一瞬の隙を、逃さなかった。
私は、第二のフラスコを、取り出した。
今度の、フラスコの中身は、赤黒い、おぞましい、液滴だった。
「喰らいなさい! 鉄血の錬金術師!」
私は、そのフラスコを、盲目(ブラインド)になった、ゴーレムたちに、投げつけたりは、しなかった。
私は、それを、ヴォルフラムが、立っている、プラントの中央、あの、忌まわしい「杭」の、真下、この地下空間の、空気が、流れ着く、換気口(かんきこう)のような、場所へと、正確に、投げつけた。
ガシャアァァン!
フラスコが割れ、濃縮された、刺激性の、赤黒い液体(唐辛子+ハーブ濃縮液)が、一気に、地下空間に、拡散する。
「ゴフッ……ゲホッ、ゲホッ!」
閃光から、ようやく、回復しようとしていた、ヴォルフラムが、その、濃縮された「化学兵器(ガス)」を、肺、いっぱいに、吸い込んだ。
彼が、初めて、人間的な、感情を、露わにした。
彼は、信じられない、という顔で、自分の、喉を、かきむしり、激しく、咳き込んだ。
その、灰色の、冷徹な瞳から、生理的な、涙が、溢れ出す。
「ばか、な……! 呼吸器系を……直接、攻撃……!? げほっ……! 原始的、すぎる……!」
(そうよ。原始的よ。あなたの『錬金術(アルケミー)』が、魔術師(ギルバート)の『まじない』を笑ったように、私の『化学(ケミストリー)』は、あなたの『高尚な理論(アルケミー)』を、物理(これ)で、殴るのよ)
ゴーレムたちが、視覚と、指揮官の指示を失い、その場で、無意味に、腕を、振り回している。
「今よ! 騎士隊長(キャプテン)!」
私は、地下への入り口、私たちが通ってきた、暗い通路に向かって、叫んだ。
「はっ! 全員、突入!」
ヴォルフラムが、私たち(別動隊)の戦力が、たったの「二人」だと、誤認(・・・)していた、その、油断。
通路の闇に潜み、待機していた、四名の、精鋭騎士たちが、一気に、なだれ込んできた。
「ゴーレムの関節を、叩け!」
騎士たちは、魔法ではなく、剣と、盾という、『物理攻撃』で、盲目(ブラインド)の、ゴーレムたちの、関節(駆動部)を、容赦なく、叩き潰していく。
ガキン! ギギギッ!
「騎士隊! 私の『薬液』だ!」
私は、最後の、化学兵器。
瞬時接着剤(松ヤニ+聖樹の樹液ベース)の入った、フラスコを、騎士たちに、投げつけた。
「それを、ゴーレムの、叩き潰した関節に、叩き込め!」
騎士たちは、私の、その、非人道的な(のかもしれない)指示に、一切の迷いなく、従った。
彼らは、この森が、自分たちの「日常」が、この「機械(ゴーレム)」に、奪われようとしていることを、知っている。
ガシャ!
フラスコが、ゴーレムの、破壊された、肩の、関節に、叩きつけられる。
粘つく、松ヤニの液体が、熱を持った、内部の、歯車(ギア)に、流れ込む。
それは、魔力で固まるのではない。
化学反応(ケミストリー)で、瞬時に、強固に、固まる。
ギチギチ……ドサッ。
一体のゴーレムが、関節が固着し、動けなくなり、石の床に、崩れ落ちた。
騎士たちは、容赦なく、残り二体の、ゴーレムの、動きも、同じ方法で、止めていく。
「ばかな……! 魔法防御(バリア)を、無視、して……! 物理的、な、破壊……だと!?」
ヴォルフラムは、咳き込みながら、涙を流しながら、信じられないものを見る目で、その光景を、見ていた。
「私の、完璧な、錬金術(アルケミー)が……! こんな、原始的な……!」
「化学(ケミストリー)は、原始的ではないわ」
私は、その、無力な「天才」に、冷たく、言い放った。
「錬金術(アルケミー)とは違い、再現性と、効果(こうか)の、確実性(かくじつせい)を、約束された、『知性』の力よ!」
私は、最後に残った、万能浄化薬(エリクシルLv.2)の、黄金色に輝くフラスコを、強く、握りしめた。
「汚染源は、いただくわよ、錬金術師!」
三体の錬金術ゴーレムが、その黒曜石の巨体を揺らし、私たちに向かって、重い足取りで、歩みを進めてくる。
一体、一体の歩みが、この古代の石造りの床を震わせ、天井からは、その振動で、古い石の粉が、パラパラと、私たちの肩に、降りかかった。
地下水脈(レイライン)の、青白い、幽霊のような光が、磨き上げられたゴーレムの黒い装甲に反射し、その無機質な「死」の威圧感を、際立たせる。
その瞳(センサー)は、赤く、熱を持たずに、ただ、私たち(標的)を、正確に、捉えていた。
「ひっ……!」
私の隣で、リリアが、息を飲む。彼女は、私の背中に、必死で、しがみついていた。
「動くな、ソフィア『化学者』よ。抵抗は、無意味だ」
一段高い、プラントの操作盤(コンソール)の前で、ヴォルフラムが、腕を組んだまま、冷たく、言い放った。
彼の灰色の瞳は、もはや、私ではなく、私の背後で震える、リリアを、見つめていた。
「その『アンテナ(リリア)』は、この高濃度の『ブライト』の瘴気に、耐えられまい。……あと、数分もすれば、その、か細い精神(マインド)は、聖樹(・・)の、断末魔の『悲鳴』に、焼き切られる」
(……この男)
(リリアの『同調』能力も、聖樹の『暴走』も、すべて、計算ずく……!)
「君の友(ギルバート)の、あの程度の『まじない』は、このゴーレムの、魔力防御(バリア)の前では、粉塵(ふんじん)だ」
ヴォルフラムは、続ける。
「君の、その、原始的な『草遊び(ハーブ)』など、言うまでもない」
(魔力防御だと? ――上等よ)
(私の武器は、魔法じゃないわ)
私は、抵抗しなかった。
私が、この地下空間に、足を踏み入れた、瞬間から、私の、前世(カオリ)の、化学者としての『脳』は、この戦場の、すべての『変数』を、計算し尽くしていた。
(ヴォルフラム(指揮官)は、高所。ゴーレム(兵士)は、低所)
(光源は、中央の、レイラインのみ)
(空気の流れは、入り口(私たち)から、プラント(ヴォルフラム)の、換気口へと、一方的に、流れている)
(そして、敵(ヴォルフラム)は、私(ソフィア)の『化学(ケミストリー)』を、『原始的』と、侮蔑(ぶべつ)している)
(……勝てる)
「リリア様!」
私は、背後の、震える少女に、この状況下で、最も、強く、鋭い「命令」を、発した。
「耳を塞いで! 目を、閉じて! 私が、いい、と言うまで、絶対に、開けないで!」
「……っ! は、はい!」
リリアは、私の、その、有無を言わさぬ気迫に、ビクッと、肩を震わせ、反射的に、両手で、強く、耳を塞ぎ、目を、固く、閉じた。
私は、革バッグから、二つの、フラスコを、取り出した。
一つは、白い粉末(マグネシウム)と、乾燥ヨモギ(発火性ハーブ)を、完璧な比率で、配合したもの。
もう一つは、着火用の、アルコールランプ。
「化学は、時に、魔法よりも、派手なのよ」
私は、そのアルコールランプに、魔術ではなく、物理的な火打石で、火を灯すと、それを、先頭を歩く、一体目の、ゴーレムの、足元へと、力任せに、投げつけた。
ガシャン! と、ガラスが割れ、アルコールが、石の床に、青い炎を、広げる。
「……愚かな」
ヴォルフラムが、私の、その、無意味に見える「抵抗」を、鼻で、笑った。
「そんな、小さな火で、私の、黒曜石のゴーレムが、止められるとでも……」
彼の、その、傲慢(ごうまん)な、言葉の、最後までを、私は、聞かなかった。
「……今よ」
私は、白い粉末(マグネシウム)のフラスコを、その、青い炎(アルコール)の、中心へと、正確に、投げつけた。
次の瞬間。
バァァァァァァァァァァン!!
地下空間、そのものが、爆発した。
閃光。
音。
熱。
地下水脈(レイライン)の、青白い光が、一瞬で、消し飛ぶほどの、強烈な「白」。
数千度の、白い炎が、空間の、すべての「影」を、焼き尽くした。
鼓膜が、破れそうになるほどの、轟音。
そして、マグネシウムと、ハーブが、瞬時に、燃焼する、独特の、金属が焼ける匂いが、空間、全体に、充満した。
「ぐっ……!!」
高所(プラットフォーム)で、余裕を、かましていた、ヴォルフラムが、思わず、その灰色の瞳を、両手で、覆った。
彼は、魔術師(ギルバート)の、魔力的な「光」は、警戒していたかもしれない。
だが、彼にとって「原始的」なはずの、私の『化学(ケミストリー)』が、これほど、単純で、暴力的で、そして、効果的な「物理現象(せんこう)」を、引き起こすとは、計算していなかった。
ゴ……ゴ……
ゴーレムたちが、ピタリ、と、その、重い足を、止めた。
彼らの、黒曜石の、赤い「目(センサー)」が、激しく、明滅している。
強すぎる光量が、彼らの、精密な、錬金術(アルケミー)の、視覚センサーを、物理的に、焼き切ったのだ。
(よし! 視覚(センサー)は、焼いた!)
だが、私は、止まらない。
この、一瞬の「隙」こそが、私の、計算の、本命だった。
「リリア様! あなたは、動かないで!」
私は、ゴーレムたちが、視覚を失い、動きを止めた、その、一瞬の隙を、逃さなかった。
私は、第二のフラスコを、取り出した。
今度の、フラスコの中身は、赤黒い、おぞましい、液滴だった。
「喰らいなさい! 鉄血の錬金術師!」
私は、そのフラスコを、盲目(ブラインド)になった、ゴーレムたちに、投げつけたりは、しなかった。
私は、それを、ヴォルフラムが、立っている、プラントの中央、あの、忌まわしい「杭」の、真下、この地下空間の、空気が、流れ着く、換気口(かんきこう)のような、場所へと、正確に、投げつけた。
ガシャアァァン!
フラスコが割れ、濃縮された、刺激性の、赤黒い液体(唐辛子+ハーブ濃縮液)が、一気に、地下空間に、拡散する。
「ゴフッ……ゲホッ、ゲホッ!」
閃光から、ようやく、回復しようとしていた、ヴォルフラムが、その、濃縮された「化学兵器(ガス)」を、肺、いっぱいに、吸い込んだ。
彼が、初めて、人間的な、感情を、露わにした。
彼は、信じられない、という顔で、自分の、喉を、かきむしり、激しく、咳き込んだ。
その、灰色の、冷徹な瞳から、生理的な、涙が、溢れ出す。
「ばか、な……! 呼吸器系を……直接、攻撃……!? げほっ……! 原始的、すぎる……!」
(そうよ。原始的よ。あなたの『錬金術(アルケミー)』が、魔術師(ギルバート)の『まじない』を笑ったように、私の『化学(ケミストリー)』は、あなたの『高尚な理論(アルケミー)』を、物理(これ)で、殴るのよ)
ゴーレムたちが、視覚と、指揮官の指示を失い、その場で、無意味に、腕を、振り回している。
「今よ! 騎士隊長(キャプテン)!」
私は、地下への入り口、私たちが通ってきた、暗い通路に向かって、叫んだ。
「はっ! 全員、突入!」
ヴォルフラムが、私たち(別動隊)の戦力が、たったの「二人」だと、誤認(・・・)していた、その、油断。
通路の闇に潜み、待機していた、四名の、精鋭騎士たちが、一気に、なだれ込んできた。
「ゴーレムの関節を、叩け!」
騎士たちは、魔法ではなく、剣と、盾という、『物理攻撃』で、盲目(ブラインド)の、ゴーレムたちの、関節(駆動部)を、容赦なく、叩き潰していく。
ガキン! ギギギッ!
「騎士隊! 私の『薬液』だ!」
私は、最後の、化学兵器。
瞬時接着剤(松ヤニ+聖樹の樹液ベース)の入った、フラスコを、騎士たちに、投げつけた。
「それを、ゴーレムの、叩き潰した関節に、叩き込め!」
騎士たちは、私の、その、非人道的な(のかもしれない)指示に、一切の迷いなく、従った。
彼らは、この森が、自分たちの「日常」が、この「機械(ゴーレム)」に、奪われようとしていることを、知っている。
ガシャ!
フラスコが、ゴーレムの、破壊された、肩の、関節に、叩きつけられる。
粘つく、松ヤニの液体が、熱を持った、内部の、歯車(ギア)に、流れ込む。
それは、魔力で固まるのではない。
化学反応(ケミストリー)で、瞬時に、強固に、固まる。
ギチギチ……ドサッ。
一体のゴーレムが、関節が固着し、動けなくなり、石の床に、崩れ落ちた。
騎士たちは、容赦なく、残り二体の、ゴーレムの、動きも、同じ方法で、止めていく。
「ばかな……! 魔法防御(バリア)を、無視、して……! 物理的、な、破壊……だと!?」
ヴォルフラムは、咳き込みながら、涙を流しながら、信じられないものを見る目で、その光景を、見ていた。
「私の、完璧な、錬金術(アルケミー)が……! こんな、原始的な……!」
「化学(ケミストリー)は、原始的ではないわ」
私は、その、無力な「天才」に、冷たく、言い放った。
「錬金術(アルケミー)とは違い、再現性と、効果(こうか)の、確実性(かくじつせい)を、約束された、『知性』の力よ!」
私は、最後に残った、万能浄化薬(エリクシルLv.2)の、黄金色に輝くフラスコを、強く、握りしめた。
「汚染源は、いただくわよ、錬金術師!」
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