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第17章 アトリエ防衛戦と汚染源の特定
17-7:杭を打て、そして浄化
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二体のゴーレムが、瞬時接着剤で固着され、残る一体も、騎士たちの剣の猛攻に、動きを止めていた。ヴォルフラムは、催涙ガスに咳き込み、目を腫らし、もはや、指揮官としての機能を失っている。
「……ソフィア様! 今です! 汚染源の杭を!」
騎士隊長が、私に、叫んだ。
私は、彼の声を合図に、ヴォルフラムを無視し、プラントの中心、地下水脈の源流に打ち込まれた、あの「鉄の杭」へと、一直線に走った。
杭の周囲を流れる、あの『黒い汚泥(ブライト)』。それが、この森を、この国を、蝕んでいる、呪いの本体。
「……お断りだ、化学者!」
ヴォルフラムが、最後の力を振り絞り、叫んだ。
その灰色の瞳は、もはや私への「興味」ではなく、自らの「研究」を、自らの「理論」を、否定されたことへの、純粋な「憎悪」と「狂気」に、燃えていた。
「この杭は、私が、生涯をかけて、追い求めた『最高の触媒』だ! 私の、完璧な『錬金術(アルケミー)』の、結晶だ!」
彼は、操作盤(コンソール)の、一つの、赤いレバーに、手をかけた。
「私が得られないのなら……!」
「まずいわ、彼、プラントを暴走させる気よ!」
私が叫んだのと、彼がレバーを引き下げたのは、ほぼ、同時だった。
「この森ごと、消滅(汚染)させるまでだ!」
ヴォルフラムの、最後の「悪意」の行動だった。彼は、杭に流し込まれている『ブライト』の流入量を、最大値(マックス)まで、引き上げたのだ。
カチ…カチ…という、穏やかだった機械音が、一瞬で、
ガガガガガガガガガ!
という、耳をつんざくような、金属の悲鳴に変わった。
「キャアアアアアアッ!!」
リリアが、耳を塞いで、その場に、うずくまった。
杭の周囲を流れる『黒い汚泥』が、沸騰したかのように、その脈動を速めた。
レイラインの、青白い源流が、一瞬で、黒い毒に、侵食されていく。
地下空間全体が、激しく、振動し始めた。
「……リリア様!」
私は、杭の前に立ち止まり、最後のフラスコ――革バッグの奥底で、守り抜いてきた、私の「切り札」――を、握りしめた。
『万能浄化薬(エリクシルLv.2)』。
聖樹の樹液と、私のキレート剤を、この戦いのために、極限まで高純度合成した、私の科学の、最高傑作。
「あなたの『力(せいせい)』が必要よ! これ(エリクシルLv.2)を、あの汚染源に、打ち込むわ!」
リリアは、咳き込み、聖樹の最後の悲鳴に、涙を流しながらも、私の、その決意の言葉に、顔を上げた。
その顔は、催涙ガスと、極度の疲労で、ぐしゃぐしゃだった。
だが、その瞳には、かつての「聖女」の、神々しい光が、宿っていた。
「……はい!」
彼女は、震える足で、立ち上がった。
「もう、泣いているだけなのは、嫌です……!」
「私の、この命(すべて)を、使って!」
彼女は、フラスコに、その手を触れた。
私の『万能浄化薬(エリクシルLv.2)』の、青く澄んだ液体が、リリアの聖属性の魔力に触れた瞬間、あの時と同じ、強烈な「黄金色の輝き」を放ち始めた。
「騎士隊長! ヴォルフラムを、拘束しろ!」
私は、背後の騎士たちに、最後の命令を飛ばした。
(ギルバートは、まだ来ない。でも、やるしかない)
私は、黄金色に輝くフラスコを、両手で、高く、掲げた。
(私の『化学(ケミストリー)』を、「原始的」と、笑ったわね)
(私の『スローライフ(けんきゅうしつ)』を、あなたの「実験場」にした)
(……後悔、させてあげるわよ!)
私は、渾身の力を込め、そのフラスコを、杭の、最も太い、地下水脈に直結した部分に、叩きつけた。
ガシャアァァァン!!
フラスコが砕け、黄金色の液体が、あの、沸騰する『黒い汚泥』に、一気に、流れ込んだ。
シュワアアアアアアアア……!!
凄まじい「中和反応」の音が、地下空間全体に響き渡った。
「黒」と「黄金色」。
「科学」と「聖性」。
それらが、ヴォルフラムの「錬金術」と、激しく、激しく、衝突する。
黒い汚泥が、黄金色の光に包まれ、まるで腐った肉が焼かれるかのように、激しく、蒸発していく。
ガガガガ、と、悲鳴を上げていた、汚染源の杭が、激しく、振動する。
「……リリア!」
「今です!」
リリアは、私の制止を振り切り、その、暴走する「杭」そのものに、自らの、小さな、両手を、叩きつけた。
「あああああああああっ!!」
リリアの全身が、黄金色の、光の柱となった。
彼女の、最後の「聖性」が、私の「薬液」を、触媒として、その浄化能力を、数百倍、数千倍に、増幅させていく。
「な……!?」
高台の上で、騎士に拘束されかけていた、ヴォルフラムが、その、信じがたい光景に、目を見開いた。
「ばかな……! 私の『理(ルール)』が……! 科学(ケミストリー)と、聖性(オカルト)の、融合(ハイブリッド)に……負けるだと……!?」
ガキン!
杭の、内部構造が、浄化のエネルギーに、耐えきれず、砕け散る音がした。
「カチ…カチ…」という、あの、忌まわしい機械音(心臓の鼓動)が、ついに、止まった。
ヴォルフラムは、崩れ落ちた。
それは、騎士に拘束されたからではない。
自らの、完璧だったはずの「錬金術(アルケミー)」が、目の前で、「敗北」した、という、絶対的な「事実」に、打ちのめされたのだ。
汚染源の杭は、浄化の光に包まれ、その機能を、完全に、停止した。
地下水脈(レイライン)の、青白い光から、「黒」が、消え失せていく。
地下水脈の「呪い」は、断たれた。
その瞬間。
リリアの体から、最後の聖属性の魔力が、光の波紋となって、地下空間全体に広がり、杭の周囲にいる、私たち(ソフィア、リリア、騎士隊)を、優しく、包み込んだ。
「……リリア様!」
私は、光の中で、力が抜け、ぐったりと、崩れ落ちるリリアの体を、抱きしめた。
彼女の体は、高熱で燃えるように熱かったが、その表情は、安らかだった。
聖樹は、この瞬間、完全に、浄化されたのだ。
「……ソフィア様! 今です! 汚染源の杭を!」
騎士隊長が、私に、叫んだ。
私は、彼の声を合図に、ヴォルフラムを無視し、プラントの中心、地下水脈の源流に打ち込まれた、あの「鉄の杭」へと、一直線に走った。
杭の周囲を流れる、あの『黒い汚泥(ブライト)』。それが、この森を、この国を、蝕んでいる、呪いの本体。
「……お断りだ、化学者!」
ヴォルフラムが、最後の力を振り絞り、叫んだ。
その灰色の瞳は、もはや私への「興味」ではなく、自らの「研究」を、自らの「理論」を、否定されたことへの、純粋な「憎悪」と「狂気」に、燃えていた。
「この杭は、私が、生涯をかけて、追い求めた『最高の触媒』だ! 私の、完璧な『錬金術(アルケミー)』の、結晶だ!」
彼は、操作盤(コンソール)の、一つの、赤いレバーに、手をかけた。
「私が得られないのなら……!」
「まずいわ、彼、プラントを暴走させる気よ!」
私が叫んだのと、彼がレバーを引き下げたのは、ほぼ、同時だった。
「この森ごと、消滅(汚染)させるまでだ!」
ヴォルフラムの、最後の「悪意」の行動だった。彼は、杭に流し込まれている『ブライト』の流入量を、最大値(マックス)まで、引き上げたのだ。
カチ…カチ…という、穏やかだった機械音が、一瞬で、
ガガガガガガガガガ!
という、耳をつんざくような、金属の悲鳴に変わった。
「キャアアアアアアッ!!」
リリアが、耳を塞いで、その場に、うずくまった。
杭の周囲を流れる『黒い汚泥』が、沸騰したかのように、その脈動を速めた。
レイラインの、青白い源流が、一瞬で、黒い毒に、侵食されていく。
地下空間全体が、激しく、振動し始めた。
「……リリア様!」
私は、杭の前に立ち止まり、最後のフラスコ――革バッグの奥底で、守り抜いてきた、私の「切り札」――を、握りしめた。
『万能浄化薬(エリクシルLv.2)』。
聖樹の樹液と、私のキレート剤を、この戦いのために、極限まで高純度合成した、私の科学の、最高傑作。
「あなたの『力(せいせい)』が必要よ! これ(エリクシルLv.2)を、あの汚染源に、打ち込むわ!」
リリアは、咳き込み、聖樹の最後の悲鳴に、涙を流しながらも、私の、その決意の言葉に、顔を上げた。
その顔は、催涙ガスと、極度の疲労で、ぐしゃぐしゃだった。
だが、その瞳には、かつての「聖女」の、神々しい光が、宿っていた。
「……はい!」
彼女は、震える足で、立ち上がった。
「もう、泣いているだけなのは、嫌です……!」
「私の、この命(すべて)を、使って!」
彼女は、フラスコに、その手を触れた。
私の『万能浄化薬(エリクシルLv.2)』の、青く澄んだ液体が、リリアの聖属性の魔力に触れた瞬間、あの時と同じ、強烈な「黄金色の輝き」を放ち始めた。
「騎士隊長! ヴォルフラムを、拘束しろ!」
私は、背後の騎士たちに、最後の命令を飛ばした。
(ギルバートは、まだ来ない。でも、やるしかない)
私は、黄金色に輝くフラスコを、両手で、高く、掲げた。
(私の『化学(ケミストリー)』を、「原始的」と、笑ったわね)
(私の『スローライフ(けんきゅうしつ)』を、あなたの「実験場」にした)
(……後悔、させてあげるわよ!)
私は、渾身の力を込め、そのフラスコを、杭の、最も太い、地下水脈に直結した部分に、叩きつけた。
ガシャアァァァン!!
フラスコが砕け、黄金色の液体が、あの、沸騰する『黒い汚泥』に、一気に、流れ込んだ。
シュワアアアアアアアア……!!
凄まじい「中和反応」の音が、地下空間全体に響き渡った。
「黒」と「黄金色」。
「科学」と「聖性」。
それらが、ヴォルフラムの「錬金術」と、激しく、激しく、衝突する。
黒い汚泥が、黄金色の光に包まれ、まるで腐った肉が焼かれるかのように、激しく、蒸発していく。
ガガガガ、と、悲鳴を上げていた、汚染源の杭が、激しく、振動する。
「……リリア!」
「今です!」
リリアは、私の制止を振り切り、その、暴走する「杭」そのものに、自らの、小さな、両手を、叩きつけた。
「あああああああああっ!!」
リリアの全身が、黄金色の、光の柱となった。
彼女の、最後の「聖性」が、私の「薬液」を、触媒として、その浄化能力を、数百倍、数千倍に、増幅させていく。
「な……!?」
高台の上で、騎士に拘束されかけていた、ヴォルフラムが、その、信じがたい光景に、目を見開いた。
「ばかな……! 私の『理(ルール)』が……! 科学(ケミストリー)と、聖性(オカルト)の、融合(ハイブリッド)に……負けるだと……!?」
ガキン!
杭の、内部構造が、浄化のエネルギーに、耐えきれず、砕け散る音がした。
「カチ…カチ…」という、あの、忌まわしい機械音(心臓の鼓動)が、ついに、止まった。
ヴォルフラムは、崩れ落ちた。
それは、騎士に拘束されたからではない。
自らの、完璧だったはずの「錬金術(アルケミー)」が、目の前で、「敗北」した、という、絶対的な「事実」に、打ちのめされたのだ。
汚染源の杭は、浄化の光に包まれ、その機能を、完全に、停止した。
地下水脈(レイライン)の、青白い光から、「黒」が、消え失せていく。
地下水脈の「呪い」は、断たれた。
その瞬間。
リリアの体から、最後の聖属性の魔力が、光の波紋となって、地下空間全体に広がり、杭の周囲にいる、私たち(ソフィア、リリア、騎士隊)を、優しく、包み込んだ。
「……リリア様!」
私は、光の中で、力が抜け、ぐったりと、崩れ落ちるリリアの体を、抱きしめた。
彼女の体は、高熱で燃えるように熱かったが、その表情は、安らかだった。
聖樹は、この瞬間、完全に、浄化されたのだ。
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