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第10章 氷と炎の舞踏会 ~私の技術(あかり)がこの国を照らすまで~
10-4 バルコニーの誓い
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舞踏会の熱狂は、夜が更けるにつれて収まるどころか、天井知らずの最高潮へと達していた。
楽団が奏でるワルツのテンポは早まり、人々は新しい時代の到来を祝して、踊り、笑い、杯を交わしている。広間に充満する熱気は、物理的な温度以上に、人々の心から発せられる希望のエネルギーそのものだった。数百人の貴族たちのドレスが擦れ合う音、歓談のさざめき、そしてグラスが触れ合う澄んだ音が、巨大な奔流となって空間を支配している。
だが、その主役であるはずの私たちは、熱狂の渦からそっと抜け出し、城の最上階にあるバルコニーへと避難していた。
重厚なガラス戸を閉めると、広間のざわめきが波が引くように遠ざかり、代わりに凛とした静寂が舞い降りてくる。
肌を刺すような冷たい夜風が、舞踏会の興奮とシャンパンで火照った頬を撫で、心地よい。私はバルコニーの石の手すりに歩み寄った。そこにはうっすらと新雪が積もっていたが、私が事前に設置しておいた『融雪結界』の微弱な魔力が作用し、足元のタイルだけは乾いた状態が保たれている。
「……いい夜だ」
隣に並んだジークハルトが、手すりに両手をつき、眼下に広がる帝都の夜景を見下ろして呟いた。
その横顔は、広間で見せていた皇子としての張り詰めた表情ではなく、一人の青年の素顔に戻っていた。月明かりと、遠くで散った花火の余韻が、彼の銀髪を淡く照らし出し、幻想的な輪郭を描いている。
「ええ。本当に……」
私も彼と同じ景色を見下ろした。
黒曜石を砕いたような夜空の下、帝都の街並みが広がっている。
かつて私が初めてこの地を訪れた時、そこは寒さと暗闇に支配された、死のように静かな街だった。家々は分厚い雨戸を閉ざし、道行く人はなく、ただ風雪の音だけが響いていた場所。灰色と白だけの、凍りついた世界。
けれど、今は違う。
街の至る所から、暖かなオレンジ色の明かりが漏れ出し、まるで星空を地上に映したかのように輝いている。無数に立ち並ぶ煙突からは、白い煙が真っ直ぐに立ち上り、夜空へと吸い込まれていく。
それは、私が設計し、工房の職人たちが設置して回った『魔導循環式給湯システム』や『高効率暖炉』が、確かに人々の生活を温めている証拠だった。窓の向こうには、家族の団欒があり、温かいスープがあり、笑顔があるのだろう。
「見て、ジーク。あそこの広場、まだ屋台が出てるわ」
「ああ。以前なら、日没と共に店じまいしていた場所だ。これほど夜遅くまで人が出歩けるようになったのは、街灯と暖かさのおかげだな」
「ふふっ、私の計算通りね。エネルギー効率も想定の範囲内だわ」
私は胸いっぱいに冷気を吸い込んだ。
風の中には、雪の匂いに混じって、薪の燃える香ばしい匂いと、どこかの家で焼かれているパンの甘い香りが漂っている。
それは、平和の匂いだった。
私が夢見て、図面を引き、油にまみれて作り上げたかった景色が、今ここにある。私が追放され、居場所を失い、それでも手放さなかった技術が、この国で花開いたのだ。
「……寒くないか?」
不意に、肩に温かい重みが乗せられた。
ジークハルトが、自分の肩に掛けていた深紅のマントを外し、ふわりと私に掛けてくれたのだ。
厚手のビロード生地からは、彼の体温と、微かな香水の香り――白檀とムスクを混ぜたような、大人の男性の香り――が漂ってくる。
その香りに包まれた瞬間、ドキリと心臓が跳ねた。
森の廃屋で、小さな仔虎だった彼を抱きしめて寝ていた頃の、ミルクの匂いとは違う。
今の彼は、私を守り、導いてくれる、頼もしい一人の男性なのだと、改めて認識させられる。
「大丈……夫よ。あなたのマントがあるもの。それに、ここも暖かいし」
私は自分の胸元に手を当てた。
ドレスの下、鎖骨のあたりで、赤い魔石のペンダントが微かに熱を帯びて揺れている。
あの仔虎だった頃、彼が「お揃いだ」と言って喜んでくれた首輪の飾り石。それと同じ原石から切り出されたものを、彼が人間に戻ってから贈ってくれたのだ。
この石がある限り、どんな寒さの中でも、彼と繋がっているような気がした。
ジークハルトは手すりに背を預け、私に向き直った。
その蒼氷の瞳が、私を真っ直ぐに射抜く。
先ほどまでの穏やかな光は消え、そこには逃げ場のない、真剣な熱が宿っていた。
その瞳に吸い込まれそうで、私は思わず息を呑み、背筋を伸ばした。
「リディア。……改めて、言わせてくれ」
彼の声色が一段低くなり、空気が変わった。
舞踏会の音楽も、街の喧騒も、今の私たちには届かない。世界には二人きりしかいないような錯覚に陥る。
「君には、感謝してもしきれない。俺の命を救い、心を救い、そしてこの国まで救ってくれた。君がいなければ、俺は今頃、獣の本能に呑まれて雪原を彷徨っていたか、あるいは冷たい王城で心を凍らせたままだっただろう」
「そんな、大袈裟よ。私はただ、自分が作りたいものを作っただけで……」
「謙遜しないでくれ。君のその『作りたい』という情熱が、俺たちに未来を見せてくれたんだ」
彼は一歩近づき、私の両手を取った。
大きな掌。かつては小さな肉球だったその手が、今は私の手をすっぽりと包み込み、守るように握りしめている。
剣ダコのある硬い指先から、彼の緊張と、そして決意が伝わってくる。
「俺は、君と共に歩みたい。帝国の技術顧問として、この国の発展のために力を貸してほしいというのは、為政者としての本音だ。だが、それ以上に……」
彼は言葉を切り、一度深く息を吸った。
そして、私の瞳を覗き込み、震える声で紡いだ。
「一人の男として、君を愛している。君がいない世界など、もう考えられない。……俺と、結婚してくれないか」
二度目のプロポーズ。
一度目は、森の廃屋で、シチューを食べながらの曖昧なものだった。あの時は、まだ彼が人間に戻ったばかりの混乱の中での、勢い任せの言葉だと思っていた。
でも今度は違う。
王宮のバルコニーで、正装し、私の目を見て告げられた、正式な求婚。
誤魔化しようがない。冗談や、吊り橋効果だと言い逃れる余地もない。
そして何より、私自身が、逃げたくなどなかった。
胸の奥が熱くなり、視界が滲む。
喉が詰まって、言葉が出ない。
私はただの技術オタクで、色気もないし、空気も読めない変人だ。王国では「異端」と罵られ、居場所を奪われた。そんな私が、一国の皇子である彼に愛される資格があるのだろうか。
でも、彼の手の温もりが、そんな不安を溶かしてくれる。
彼は私を、ありのまま受け入れてくれた。工房で油まみれになる私も、ドレスを着て澄ましている私も、全てを含めて「愛している」と言ってくれた。
ならば、答えは一つしかない。
私は大きく息を吸い込み、溢れそうになる涙をこらえて、満面の笑みで答えた。
「……はい! 喜んで! 私でよければ、一生もらってください!」
「リディア!」
私の言葉を聞いた瞬間、ジークハルトの顔がパッと輝いた。
彼は感極まったように私を引き寄せ、強く、強く抱きしめた。
冷たい夜風の中で、お互いの体温だけが熱く、確かなものとしてそこにあった。
彼の心臓の鼓動が、私の鼓動と重なり合う。
ドクン、ドクンという力強いリズムが、これからの未来を共に刻んでいく誓いのように聞こえた。
「ありがとう……! 愛している。誰よりも、何よりも」
「私もよ、ジーク。大好き」
ひとしきり抱き合い、喜びを分かち合った後、彼は名残惜しそうに私を放した。
そして、少し照れくさそうに視線を逸らし、ポケットからごそごそと何かを取り出した。
革の感触。金属の輝き。
月明かりに照らされたそれは、あの深紅の『翻訳首輪』だった。
「……えっ? これ、まだ持ってたの?」
私が目を丸くすると、彼は悪戯っぽく、少年のような笑みを浮かべた。
「ああ。記念にとっておいたんだ。君との出会いの証であり、俺の黒歴史の象徴だからな」
彼は首輪を愛おしそうに撫でた。
元々は仔虎サイズだったはずだが、どうやら革ベルトを調整し、人間の首にも巻けるように密かに改造してあったらしい。
「それに、言葉だけじゃ伝えきれない想いもあるだろう? ……久しぶりに、俺の本音(これ)を聞かせてやろうと思ってな」
彼は躊躇なく、自らその首輪を自分の首に巻いた。
パチン、と留め具が鳴る。
純白の礼服の襟元に、深紅の革ベルトが巻かれている様は、どこか背徳的で、それでいて妙に似合っていた。
彼は咳払いをし、真剣な顔で私に向かって言った。
「リディア、愛しているよ。世界で一番」
甘い、甘い言葉。
そして次の瞬間、首輪の中央にある魔石が激しく赤く明滅し、あの懐かしい、少しノイズ混じりの合成音声が高らかに響き渡った。
『「うわぁぁぁん! 好きだぁぁぁ! 今日も君は宇宙一可愛い! 存在が奇跡! 生まれてきてくれてありがとう!! 一生離さないから覚悟してね!! 大好き大好き大好き!! もう食べちゃいたい!!」』
バルコニーの静寂をぶち壊す、大音量の愛の絶叫。
私は思わず吹き出してしまった。
……うん、相変わらずだ。
フィルター全開の、理性の欠片もない、暑苦しいほどの本音。
皇子としての威厳も、大人の余裕もかなぐり捨てた、魂の叫びそのものだ。
でも、不思議と嫌ではなかった。
むしろ、その過剰なまでの愛情表現が、今の私には何よりも心地よい。
彼の心の奥底にある、純粋で、少し子供っぽくて、独占欲の塊のような情熱。それを知っているのは、世界で私だけなのだという優越感。
「ふふっ、覚悟しておくわ。……私の甘えん坊な皇子様」
私は背伸びをして、彼の首輪をくいっと引き寄せた。
ジークハルトが驚いて目を見開く。
私はその唇に、自分から口づけを落とした。
触れ合う唇は温かく、甘かった。
彼がすぐに反応し、優しく、そして深く応えてくれる。
雪の舞うバルコニーで、私たちは二度目のキスをした。
それは、契約でも義理でもない。心からの愛の誓いだった。
これから先、この国には様々な困難が待ち受けているだろう。
旧体制派の反発、隣国との関係、そして未解明の遺跡に眠る謎。
でも、怖くはない。
二人なら、きっと乗り越えられる。
科学と魔法、そしてこの暑苦しいほどの愛があれば、どんな冬の嵐も怖くはないのだから。
こうして、追放された元聖女と、呪われた元仔虎の皇子の物語は、一つのハッピーエンドを迎えた。
――だが、これは終わりではない。
帝国の技術革命、未解明の古代遺跡の探索、そして来るべき『獣神』との最終決戦への、新たな始まりに過ぎないのだ。
私たちは唇を離し、互いに微笑み合った。
その時、ふと視線の端に、夜空を横切る流れ星が見えた気がした。
それはまるで、私たちの未来を祝福する煌めきのように、長く尾を引いて消えていった。
エピローグ 忍び寄る泥濘と傲慢な巡礼者たち
物語は、ここで終わらない。
愛を誓い合った二人が見下ろす、光に満ちた帝都から遠く離れた場所。
サンクレール王国とガルディア帝国を隔てる国境の峠道で、もう一つの物語が――あるいは、破滅への序曲が、静かに、しかし確実に動き出していた。
そこは、世界の色が失われたかのような、極寒の吹雪の中だった。
過酷な雪道を、一台の馬車が進んでいた。王国の紋章である「黄金の天秤」が描かれた豪奢な馬車だが、今は見る影もなく泥に汚れ、寒さに塗装がひび割れている。
「きゃっ! ……痛い! もう、なんですのこの道は! 御者は何をしているのよ!」
馬車の中で、ヒステリックな叫び声が響いた。
声の主は、豪奢なドレスを着崩した一人の少女――サンクレール王国の新聖女、マリアだ。
厚化粧の下の肌は荒れ、目の下には隠しきれない隈が浮かんでいる。南国仕様の薄手のドレスに毛皮を巻き付けてはいるが、帝国の冷気の前では無力に等しい。
「寒い……寒いですわ……。どうして選ばれた聖女であるわたくしが、こんな目にあわなければなりませんの? これもすべて、あの泥棒猫のせいですわ!」
マリアはガチガチと歯を鳴らしながら、憎悪のこもった言葉を吐き捨てた。
リディアがいなくなってから、神殿の機能は完全に麻痺していた。空調は止まり、水は濁り、自動扉は開かない。彼らは自分たちの無能さを棚に上げ、すべての不便を「リディアが道具を盗んだせい」だと結論づけたのだ。
「落ち着かれよ、マリア様。怒りは美容の大敵ですぞ」
向かいの席から、粘着質な声がかけられた。同乗しているのは王国の神官長だ。彼もまた寒さに震え、何枚も重ね着した法衣からは不快な体臭が漂っている。
「ですが、国境の砦はもうすぐそこ。帝国に入れば、まずは暖炉のある宿で休息を取りましょう」
「当たり前ですわ! わたくしを誰だと思っていて? 王国の至宝、聖女マリアですのよ? 帝国のような野蛮な国でも、最上級の待遇で迎え入れさせますわ」
マリアは扇子を神経質に開閉しながら、鼻息を荒くした。
彼女たちは本気で信じているのだ。自分たちが被害者であり、リディアこそが加害者であると。そして、大国であるサンクレールの使者が赴けば、帝国ごときは平伏して言うことを聞くに違いないと。
「ええ。あの子は、わたくしの靴を舐めて詫びるべきなのです。泥棒の分際で、のうのうと逃げ回るなんて許せません」
マリアは窓の外、吹雪の向こうに目を凝らした。
視界の先、闇の中にうっすらと、巨大な影が浮かび上がっている。ガルディア帝国の国境を守る、堅牢な砦だ。
「見えましたわ……。あそこに、リディアがいるのね」
マリアの口元が、三日月形に歪んだ。
彼女は想像していた。寒くて貧しい北の国で、リディアが惨めに暮らしている姿を。そこに煌びやかなドレスを着たわたくしが現れ、慈悲深く声をかけてやるのだ。『罪を償うなら、命だけは助けてあげますわ』と。
「行きましょう、神官長。……断罪の時間ですわ」
「ええ。必ずや身柄を拘束し、王国の法で裁きを下してやりましょう」
二人は顔を見合わせ、醜悪な笑みを浮かべた。
彼らは知らない。
自分たちが向かっている先が、かつて彼らが追放した少女によって、劇的な進化を遂げた「要塞」であることを。
そこでリディアが、彼らの想像を遥かに超える権力と、圧倒的な技術力、そして皇子の溺愛という最強の盾を手に入れていることを。
そして何より、彼らが踏み込もうとしている場所が、彼らにとっての「狩り場」ではなく、虎の尾を踏む「処刑台」になるかもしれないということを。
ゴトッ、と車輪が大きな石に乗り上げ、馬車が大きく傾いた。
マリアが悲鳴を上げ、神官長が窓枠に頭をぶつける。
それはまるで、これから彼らに降りかかる苦難を予兆するような、不吉な揺れだった。
吹雪はさらに激しさを増し、視界を白く閉ざしていく。
リディアの平穏を脅かす足音は、すぐそこまで迫っていた。
だが同時に、その足音は、自らの破滅へと向かう行進曲でもあったのだ。
(第一部・完)
楽団が奏でるワルツのテンポは早まり、人々は新しい時代の到来を祝して、踊り、笑い、杯を交わしている。広間に充満する熱気は、物理的な温度以上に、人々の心から発せられる希望のエネルギーそのものだった。数百人の貴族たちのドレスが擦れ合う音、歓談のさざめき、そしてグラスが触れ合う澄んだ音が、巨大な奔流となって空間を支配している。
だが、その主役であるはずの私たちは、熱狂の渦からそっと抜け出し、城の最上階にあるバルコニーへと避難していた。
重厚なガラス戸を閉めると、広間のざわめきが波が引くように遠ざかり、代わりに凛とした静寂が舞い降りてくる。
肌を刺すような冷たい夜風が、舞踏会の興奮とシャンパンで火照った頬を撫で、心地よい。私はバルコニーの石の手すりに歩み寄った。そこにはうっすらと新雪が積もっていたが、私が事前に設置しておいた『融雪結界』の微弱な魔力が作用し、足元のタイルだけは乾いた状態が保たれている。
「……いい夜だ」
隣に並んだジークハルトが、手すりに両手をつき、眼下に広がる帝都の夜景を見下ろして呟いた。
その横顔は、広間で見せていた皇子としての張り詰めた表情ではなく、一人の青年の素顔に戻っていた。月明かりと、遠くで散った花火の余韻が、彼の銀髪を淡く照らし出し、幻想的な輪郭を描いている。
「ええ。本当に……」
私も彼と同じ景色を見下ろした。
黒曜石を砕いたような夜空の下、帝都の街並みが広がっている。
かつて私が初めてこの地を訪れた時、そこは寒さと暗闇に支配された、死のように静かな街だった。家々は分厚い雨戸を閉ざし、道行く人はなく、ただ風雪の音だけが響いていた場所。灰色と白だけの、凍りついた世界。
けれど、今は違う。
街の至る所から、暖かなオレンジ色の明かりが漏れ出し、まるで星空を地上に映したかのように輝いている。無数に立ち並ぶ煙突からは、白い煙が真っ直ぐに立ち上り、夜空へと吸い込まれていく。
それは、私が設計し、工房の職人たちが設置して回った『魔導循環式給湯システム』や『高効率暖炉』が、確かに人々の生活を温めている証拠だった。窓の向こうには、家族の団欒があり、温かいスープがあり、笑顔があるのだろう。
「見て、ジーク。あそこの広場、まだ屋台が出てるわ」
「ああ。以前なら、日没と共に店じまいしていた場所だ。これほど夜遅くまで人が出歩けるようになったのは、街灯と暖かさのおかげだな」
「ふふっ、私の計算通りね。エネルギー効率も想定の範囲内だわ」
私は胸いっぱいに冷気を吸い込んだ。
風の中には、雪の匂いに混じって、薪の燃える香ばしい匂いと、どこかの家で焼かれているパンの甘い香りが漂っている。
それは、平和の匂いだった。
私が夢見て、図面を引き、油にまみれて作り上げたかった景色が、今ここにある。私が追放され、居場所を失い、それでも手放さなかった技術が、この国で花開いたのだ。
「……寒くないか?」
不意に、肩に温かい重みが乗せられた。
ジークハルトが、自分の肩に掛けていた深紅のマントを外し、ふわりと私に掛けてくれたのだ。
厚手のビロード生地からは、彼の体温と、微かな香水の香り――白檀とムスクを混ぜたような、大人の男性の香り――が漂ってくる。
その香りに包まれた瞬間、ドキリと心臓が跳ねた。
森の廃屋で、小さな仔虎だった彼を抱きしめて寝ていた頃の、ミルクの匂いとは違う。
今の彼は、私を守り、導いてくれる、頼もしい一人の男性なのだと、改めて認識させられる。
「大丈……夫よ。あなたのマントがあるもの。それに、ここも暖かいし」
私は自分の胸元に手を当てた。
ドレスの下、鎖骨のあたりで、赤い魔石のペンダントが微かに熱を帯びて揺れている。
あの仔虎だった頃、彼が「お揃いだ」と言って喜んでくれた首輪の飾り石。それと同じ原石から切り出されたものを、彼が人間に戻ってから贈ってくれたのだ。
この石がある限り、どんな寒さの中でも、彼と繋がっているような気がした。
ジークハルトは手すりに背を預け、私に向き直った。
その蒼氷の瞳が、私を真っ直ぐに射抜く。
先ほどまでの穏やかな光は消え、そこには逃げ場のない、真剣な熱が宿っていた。
その瞳に吸い込まれそうで、私は思わず息を呑み、背筋を伸ばした。
「リディア。……改めて、言わせてくれ」
彼の声色が一段低くなり、空気が変わった。
舞踏会の音楽も、街の喧騒も、今の私たちには届かない。世界には二人きりしかいないような錯覚に陥る。
「君には、感謝してもしきれない。俺の命を救い、心を救い、そしてこの国まで救ってくれた。君がいなければ、俺は今頃、獣の本能に呑まれて雪原を彷徨っていたか、あるいは冷たい王城で心を凍らせたままだっただろう」
「そんな、大袈裟よ。私はただ、自分が作りたいものを作っただけで……」
「謙遜しないでくれ。君のその『作りたい』という情熱が、俺たちに未来を見せてくれたんだ」
彼は一歩近づき、私の両手を取った。
大きな掌。かつては小さな肉球だったその手が、今は私の手をすっぽりと包み込み、守るように握りしめている。
剣ダコのある硬い指先から、彼の緊張と、そして決意が伝わってくる。
「俺は、君と共に歩みたい。帝国の技術顧問として、この国の発展のために力を貸してほしいというのは、為政者としての本音だ。だが、それ以上に……」
彼は言葉を切り、一度深く息を吸った。
そして、私の瞳を覗き込み、震える声で紡いだ。
「一人の男として、君を愛している。君がいない世界など、もう考えられない。……俺と、結婚してくれないか」
二度目のプロポーズ。
一度目は、森の廃屋で、シチューを食べながらの曖昧なものだった。あの時は、まだ彼が人間に戻ったばかりの混乱の中での、勢い任せの言葉だと思っていた。
でも今度は違う。
王宮のバルコニーで、正装し、私の目を見て告げられた、正式な求婚。
誤魔化しようがない。冗談や、吊り橋効果だと言い逃れる余地もない。
そして何より、私自身が、逃げたくなどなかった。
胸の奥が熱くなり、視界が滲む。
喉が詰まって、言葉が出ない。
私はただの技術オタクで、色気もないし、空気も読めない変人だ。王国では「異端」と罵られ、居場所を奪われた。そんな私が、一国の皇子である彼に愛される資格があるのだろうか。
でも、彼の手の温もりが、そんな不安を溶かしてくれる。
彼は私を、ありのまま受け入れてくれた。工房で油まみれになる私も、ドレスを着て澄ましている私も、全てを含めて「愛している」と言ってくれた。
ならば、答えは一つしかない。
私は大きく息を吸い込み、溢れそうになる涙をこらえて、満面の笑みで答えた。
「……はい! 喜んで! 私でよければ、一生もらってください!」
「リディア!」
私の言葉を聞いた瞬間、ジークハルトの顔がパッと輝いた。
彼は感極まったように私を引き寄せ、強く、強く抱きしめた。
冷たい夜風の中で、お互いの体温だけが熱く、確かなものとしてそこにあった。
彼の心臓の鼓動が、私の鼓動と重なり合う。
ドクン、ドクンという力強いリズムが、これからの未来を共に刻んでいく誓いのように聞こえた。
「ありがとう……! 愛している。誰よりも、何よりも」
「私もよ、ジーク。大好き」
ひとしきり抱き合い、喜びを分かち合った後、彼は名残惜しそうに私を放した。
そして、少し照れくさそうに視線を逸らし、ポケットからごそごそと何かを取り出した。
革の感触。金属の輝き。
月明かりに照らされたそれは、あの深紅の『翻訳首輪』だった。
「……えっ? これ、まだ持ってたの?」
私が目を丸くすると、彼は悪戯っぽく、少年のような笑みを浮かべた。
「ああ。記念にとっておいたんだ。君との出会いの証であり、俺の黒歴史の象徴だからな」
彼は首輪を愛おしそうに撫でた。
元々は仔虎サイズだったはずだが、どうやら革ベルトを調整し、人間の首にも巻けるように密かに改造してあったらしい。
「それに、言葉だけじゃ伝えきれない想いもあるだろう? ……久しぶりに、俺の本音(これ)を聞かせてやろうと思ってな」
彼は躊躇なく、自らその首輪を自分の首に巻いた。
パチン、と留め具が鳴る。
純白の礼服の襟元に、深紅の革ベルトが巻かれている様は、どこか背徳的で、それでいて妙に似合っていた。
彼は咳払いをし、真剣な顔で私に向かって言った。
「リディア、愛しているよ。世界で一番」
甘い、甘い言葉。
そして次の瞬間、首輪の中央にある魔石が激しく赤く明滅し、あの懐かしい、少しノイズ混じりの合成音声が高らかに響き渡った。
『「うわぁぁぁん! 好きだぁぁぁ! 今日も君は宇宙一可愛い! 存在が奇跡! 生まれてきてくれてありがとう!! 一生離さないから覚悟してね!! 大好き大好き大好き!! もう食べちゃいたい!!」』
バルコニーの静寂をぶち壊す、大音量の愛の絶叫。
私は思わず吹き出してしまった。
……うん、相変わらずだ。
フィルター全開の、理性の欠片もない、暑苦しいほどの本音。
皇子としての威厳も、大人の余裕もかなぐり捨てた、魂の叫びそのものだ。
でも、不思議と嫌ではなかった。
むしろ、その過剰なまでの愛情表現が、今の私には何よりも心地よい。
彼の心の奥底にある、純粋で、少し子供っぽくて、独占欲の塊のような情熱。それを知っているのは、世界で私だけなのだという優越感。
「ふふっ、覚悟しておくわ。……私の甘えん坊な皇子様」
私は背伸びをして、彼の首輪をくいっと引き寄せた。
ジークハルトが驚いて目を見開く。
私はその唇に、自分から口づけを落とした。
触れ合う唇は温かく、甘かった。
彼がすぐに反応し、優しく、そして深く応えてくれる。
雪の舞うバルコニーで、私たちは二度目のキスをした。
それは、契約でも義理でもない。心からの愛の誓いだった。
これから先、この国には様々な困難が待ち受けているだろう。
旧体制派の反発、隣国との関係、そして未解明の遺跡に眠る謎。
でも、怖くはない。
二人なら、きっと乗り越えられる。
科学と魔法、そしてこの暑苦しいほどの愛があれば、どんな冬の嵐も怖くはないのだから。
こうして、追放された元聖女と、呪われた元仔虎の皇子の物語は、一つのハッピーエンドを迎えた。
――だが、これは終わりではない。
帝国の技術革命、未解明の古代遺跡の探索、そして来るべき『獣神』との最終決戦への、新たな始まりに過ぎないのだ。
私たちは唇を離し、互いに微笑み合った。
その時、ふと視線の端に、夜空を横切る流れ星が見えた気がした。
それはまるで、私たちの未来を祝福する煌めきのように、長く尾を引いて消えていった。
エピローグ 忍び寄る泥濘と傲慢な巡礼者たち
物語は、ここで終わらない。
愛を誓い合った二人が見下ろす、光に満ちた帝都から遠く離れた場所。
サンクレール王国とガルディア帝国を隔てる国境の峠道で、もう一つの物語が――あるいは、破滅への序曲が、静かに、しかし確実に動き出していた。
そこは、世界の色が失われたかのような、極寒の吹雪の中だった。
過酷な雪道を、一台の馬車が進んでいた。王国の紋章である「黄金の天秤」が描かれた豪奢な馬車だが、今は見る影もなく泥に汚れ、寒さに塗装がひび割れている。
「きゃっ! ……痛い! もう、なんですのこの道は! 御者は何をしているのよ!」
馬車の中で、ヒステリックな叫び声が響いた。
声の主は、豪奢なドレスを着崩した一人の少女――サンクレール王国の新聖女、マリアだ。
厚化粧の下の肌は荒れ、目の下には隠しきれない隈が浮かんでいる。南国仕様の薄手のドレスに毛皮を巻き付けてはいるが、帝国の冷気の前では無力に等しい。
「寒い……寒いですわ……。どうして選ばれた聖女であるわたくしが、こんな目にあわなければなりませんの? これもすべて、あの泥棒猫のせいですわ!」
マリアはガチガチと歯を鳴らしながら、憎悪のこもった言葉を吐き捨てた。
リディアがいなくなってから、神殿の機能は完全に麻痺していた。空調は止まり、水は濁り、自動扉は開かない。彼らは自分たちの無能さを棚に上げ、すべての不便を「リディアが道具を盗んだせい」だと結論づけたのだ。
「落ち着かれよ、マリア様。怒りは美容の大敵ですぞ」
向かいの席から、粘着質な声がかけられた。同乗しているのは王国の神官長だ。彼もまた寒さに震え、何枚も重ね着した法衣からは不快な体臭が漂っている。
「ですが、国境の砦はもうすぐそこ。帝国に入れば、まずは暖炉のある宿で休息を取りましょう」
「当たり前ですわ! わたくしを誰だと思っていて? 王国の至宝、聖女マリアですのよ? 帝国のような野蛮な国でも、最上級の待遇で迎え入れさせますわ」
マリアは扇子を神経質に開閉しながら、鼻息を荒くした。
彼女たちは本気で信じているのだ。自分たちが被害者であり、リディアこそが加害者であると。そして、大国であるサンクレールの使者が赴けば、帝国ごときは平伏して言うことを聞くに違いないと。
「ええ。あの子は、わたくしの靴を舐めて詫びるべきなのです。泥棒の分際で、のうのうと逃げ回るなんて許せません」
マリアは窓の外、吹雪の向こうに目を凝らした。
視界の先、闇の中にうっすらと、巨大な影が浮かび上がっている。ガルディア帝国の国境を守る、堅牢な砦だ。
「見えましたわ……。あそこに、リディアがいるのね」
マリアの口元が、三日月形に歪んだ。
彼女は想像していた。寒くて貧しい北の国で、リディアが惨めに暮らしている姿を。そこに煌びやかなドレスを着たわたくしが現れ、慈悲深く声をかけてやるのだ。『罪を償うなら、命だけは助けてあげますわ』と。
「行きましょう、神官長。……断罪の時間ですわ」
「ええ。必ずや身柄を拘束し、王国の法で裁きを下してやりましょう」
二人は顔を見合わせ、醜悪な笑みを浮かべた。
彼らは知らない。
自分たちが向かっている先が、かつて彼らが追放した少女によって、劇的な進化を遂げた「要塞」であることを。
そこでリディアが、彼らの想像を遥かに超える権力と、圧倒的な技術力、そして皇子の溺愛という最強の盾を手に入れていることを。
そして何より、彼らが踏み込もうとしている場所が、彼らにとっての「狩り場」ではなく、虎の尾を踏む「処刑台」になるかもしれないということを。
ゴトッ、と車輪が大きな石に乗り上げ、馬車が大きく傾いた。
マリアが悲鳴を上げ、神官長が窓枠に頭をぶつける。
それはまるで、これから彼らに降りかかる苦難を予兆するような、不吉な揺れだった。
吹雪はさらに激しさを増し、視界を白く閉ざしていく。
リディアの平穏を脅かす足音は、すぐそこまで迫っていた。
だが同時に、その足音は、自らの破滅へと向かう行進曲でもあったのだ。
(第一部・完)
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