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草原の(未来の)マオウ

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ご飯を食べて四人で少し話をしてから、少し体を動かして寝る事にした。

…寝る事にしたんだけど、眠れない。
スケエリアとアスリムは馬車の荷台で寝ている。
まあ、女子供だからな。
シルジットさんとカクムンドさんと僕は外、正しく野宿だ。

でもアスリムが子供枠なら、俺も子供枠で馬車でよく無い?
いや、緊張して余計に眠れないか。

遮る物が何もないだだっ広い草原の真ん中で、地面にマントを敷いて寝る事に。

シルジットさんとカクムンドさんが、夜中は交代で見張りをしてくれる様だ。
僕は何かあれば起こすので、しっかり寝てくれと言われた。

…寝てくれと言われても眠れない。

仰向けに寝てると満天の星、遠くに森は見えるけど他には何もない。
頭の中に『山もなく谷もなく何も見えはしない』と浮かんできたけど、森は見える。

余程アウトドア好きでキャンプは得意、とか言う人じゃない限り、フカフカベッドに慣れた一般人にはこれはキツイ。
グランドを走った後、寝転ぶのは極楽だけど、ガチ寝は辛い。

マントの下は硬い地面だけど、マントを通してジメッとした湿気が。
枕代わりの服を丸めた物も、スッゴイ違和感。

ゴロゴロ寝返りを打ってると、散策に行ってたアンズが戻って来た。

『主、ただいま。
ちょっと狼とバトルして来たぜ。
やっぱ体動かさないと眠れないからな』

スライムも眠るんだ、とか思ったけど口に出さない俺は、空気読める子だよね。

『主は眠れないのか?』
「うん、野宿慣れてなくてね。
地面も枕も硬くてなかなか眠れないんだ」
『仕方ねえなぁ、俺に任せな』

プヨプヨと近づいて来たと思ったら、頭の下の枕にワンパン。

「うおっ!」

勿論だるま崩しの如く、頭が地面に激突する。

「何するんだよ!」
『へい兄ちゃん、俺に乗んな。
俺のボディはサイコーだぜ』

なんと、アンズが枕代わりになってくれると。
遠慮無く頭を乗せると…
ああ、何だろう…プニプニと柔らかボディは頭の形に沿って自然に沈み、でも程良い弾力で沈みきりもせず、今までに無い心地よさ。

『暑かったら冷たくも出来るし、寒かったら暖かくも出来るぜ』
「あー、アンズ、サイコー。
何だかんだ眠れそう。
でも重く無い?」
『へっ、主の頭くらい軽いもんさ。
その代わり起きたら一戦してくれよ』

ああ、脳筋への報酬はバトルか。
まあ自分も体動かしておかないと、いざって時困るから、鍛練に丁度いいかな。

「じゃあおやすみ。
ありがとね、アンズ」

余り言うなよ、照れるだろ、とかアンズの言葉を子守唄代わりに眠りについた。


*****


次の日、朝食前にアンズと一戦交えて朝ご飯。
夕食の残りのスープと、昨日シルジットさんが焼いたパン。
ばあちゃんの味噌汁が飲みたい。


最初の目的地は、シルジットさんの知り合いの純血種の住処だ。

遠くに見える森の入り口近くに住んでいて、人族と多少の交流があるらしいので、野営の後片付けをして出発。

初めての純血種さん、ドキドキするのと、ちょっとワクワクもする。



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