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レツゴーハンティング
しおりを挟むオニギリ達とは話し合って、スキヤキが住んでいた沼地で落ち合う事になった。
こちらが馬車なので、二人がずっと走って付いて回るのは無理って言うか、走るのが面倒くさい、との事で、馬車を作って追いかけてくるそうだ。
俺達はここから海へ向かって南下して、森の中に有る沼地で待ち合わせ。
沼地の場所は、シルジットとカクムンドさんの二人がスキヤキに聞いてくれている。
その間俺はアンズと戯れ…鍛練していた。
ほら、場所聞いても分かんないし、馬車を走らせるのはカクムンドさんだし。
残念なのが、南下するのにオニギリ兄弟が居たら、野原で野宿が、屋根付きの野宿になるとこだったのに。
まあ合流までの我慢だね。
*****
「じゃあまたな、コウ!」
「よろしくお願いしますねー」
二人と別れて馬車は行く。
目指すは海、マーマンに逢いに。
期待はしない。
この世界だと人魚姫なんて絶対居ない。
だって基本的に女性が居ないのだから。
そんでもって、きっとまたイケメンなんだ。
水泳選手の様なマッソーボデーなイケメンなんだ。
それかもし純血種の女性の人魚が居ても、きっとまたカクムンドさんの彼女とかなんだ。
ふふん、もう分かってるさ、あの残念女神の考える事なんて。
野原で野宿二回目。
夕食の獲物の狩に付いて行ってみた。
弓を持ったアスリムと、薪を拾うと言うカクムンドさんの後を付いていく。
シルジットはキノコや木の実を探しに別行動。
スケエリアは馬車の番。
そして知った現実…
先頭を歩いて居たアスリムがピタリと止まり、右手を止まれと言うように挙げる。
視線の先を見ると茂みの向こうに茶色の兎の耳が見えた。
「流石アスリム、目が良いな。なかなかの大物だ」
カクムンドさんが小声で褒める。
子供は褒めて伸ばすタイプの様だ。
でも大物って?
「兎ですよね?」
「あの耳は兎じゃなくてサナンだな」
「サナン?」
小声で話して居る間にも、アスリムは矢をつがえて狙いを定める。
そして一射…
惜しい、外れた。
外れた矢に驚いたサナンが姿を現わす……豚だ。
猪の様に見えるけど、ゴワゴワしてそうな毛も生えてないし、牙もないし、ピンク色の身体を薄っすらと白い毛が覆ってるのは豚だよね?
それにぴょこんとウサミミが…。
サナンは、見た目に反した動きで茂みを飛び出し走って逃げる。
そこにアスリムの二射目。
惜しい、掠った!
と思ったら、サナンのウサミミがポロリと落ちた?!
「み…耳!耳ーー!!」
「サナンは驚くと耳を落として逃げる習性か有る」
カクムンドさんが冷静に説明してくれる。
トカゲの尻尾みたいなもの?
そして三射目…と思ったら、アスリムは両手を地面についてうずくまって居た。
「え?アスリム?どうしたの?」
弓でもかすった?
ビックリして近づいてアスリムの顔を覗き込んでみる。
呼吸が荒くて汗が流れてる。
「え?本当大丈夫?どこか痛いの?」
肩で息をして居たアスリムが、緩く首を振る。
アスリムに替わり答えたのはカクムンドさんだ。
「コウイチ様、大丈夫です。アスリムは疲れただけです」
………ファーッツ?!
え?ちょっと歩いて矢を二本放っただけだよね?
地面に座って水筒から水を飲んだアスリムは、小さく息を吐く。
その前にカクムンドさんがしゃがむ。
「ほら、アスリム、よく頑張ったな。
背負ってやるから戻ろう」
って父親かよ!
過保護過ぎるだろ!
いや、もう本当突っ込むのも疲れたよ。
矢を二本放って歩けなくなるとは、初日の獲物無しも同じ感じだったんだな。
ってか何で付いてきたんだ、この子供。
ダメだ、性格が悪くなりそう。
そしてアスリムを背負って戻ったカクムンドさんは、勿論疲労で途中で倒れた……
なんだろう…
独り旅で良くない?
応援ありがとうございます!
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